先月28日、ニュージーランドの現地放送「ニュースハブ」が、韓国の外交官K氏が強制わいせつを行ったというニュースを報道した時、ちょっと驚いた。放送でニュージーランドの被害者に対し「女性代名詞(she)」ではなく「男性代名詞(he)」を使っていたからだ。
ところが韓国外交部の反応にはがっかりさせられた。現地メディアが加害者である外交官の実名を公開し、駐ニュージーランド韓国大使館の捜査への非協力性などを大々的に報道したにもかかわらず、一貫して生ぬるい態度だったからだ。そして先月28日、韓国-ニュージーランド首脳間の電話会談でこの問題が言及されると、今月3日になって慌てて事態収拾に出た。外交部のこの日の説明によると、2017年12月に強制わいせつが初めて発生した時、大使館は加害者とされたK副大使(当時)に「警告状」を出すにとどまった。明らかな「同性間強制わいせつ」事件を、大したことではないとみなしたのだ。
被害者の状況は違った。彼は2018年下半期に外交部監査官室から現地公館への監察に出向いた時、1年前に自分が受けた被害を忘れておらず、詳しく打ち明けた。そこで再調査を行ったが、外交部の最終結論は「減給1カ月」という軽い懲戒だった。
なぜ外交部はこのように軽い懲戒で対応したのか。記者室の壁に貼られている外交部本部の職制表が、この疑問に答えてくれる。局長級以上の幹部52人のうち、女性はカン・ギョンファ長官を含めて5人のみ。課長級に下がれば、男女比が7対3もしくは6対4程度になるが、組織内の重要事項を決めるポストにいる人たちはほとんどが男性であることが分かる。性認知感受性が落ちる蓋然性の高い男性が高位職に多いという点も、強制わいせつ事件をおろそかに扱った原因ではなかっただろうか。外交部は3日の説明の場でも、「被害者が(恐らく示談金をつり上げるために)自分の被害を誇張する方向に発言を変えた」という趣旨の言及を忘れなかった。明白な「2次加害」だ。
このような考えを平気で表に出す人もいる。国会外交統一委員会委員長を務める共に民主党のソン・ヨンギル議員は19日、文化放送(MBC)ラジオ『キム・ジョンベの視線集中』に出演し、今回の強制わいせつ事件被害者が「40代前半で背は180センチ、体格は自分くらいの男性職員」だとし「同じ男同士で一度軽くたたき、お尻も一度叩いたりしただけ」と話した。幸い、国家人権委員会が先月30日、被害者が提起した陳情に対して認容決定を下し、実質的な被害救済の道が開かれた。被害が発生してから2年8カ月がたっている。
被害者の性別は重要ではない。被害者はただ被害者にすぎない。「相手が異性であれ同性であれ、強制わいせつは文字通り強制わいせつ」であり、K元副大使の行為は明らかに「相手が望まない行為を一方的に行った暴力的行為」(チョ・ヘミン正義党報道担当)だった。
新しい人権の領域へと認識の地平を広げようと努力しない社会に未来はない。外交部幹部にも、ソン・ヨンギル議員にも、そしてこの記事を書く自分にも当てはまる言葉だ。
キル・ユンヒョン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )