2020新韓銀行SOL・KBOリーグ開幕日の5日午前11時、地下鉄2号線の総合運動場駅のトイレはがらんと空いていた。ミネラルウォーターや食べ物を買うために並ぶコンビニ前の長い列もなかった。5番出口を出ると一番最初に目につく海苔巻きや餅などを売っていた露店も見えなかった。物寂しく小雨が降るばかりだった。
毎年子どもの日に対戦し、満員の観衆を動員して球界の「エル・クラシコ」と呼ばれたLGツインズ対斗山ベアーズの試合は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響による無観客試合という未曾有の状況で始まった。
取材陣も野球場に入場する前に発熱チェックをした。所属社、名前、電話番号、入場時間を書いた後、マスク着用を確認してから入ることができた。記者室の中でも一席ずつ席を外して座らされた。
試合に先立ち、KBOのチョン・ウンチャン総裁はリーグ開幕のメッセージを発表した。チョン総裁は「9・11テロの時も、ボストンマラソンテロの時も、日本大震災の時も、野球はいつもファンのそばにいて、悲しみを慰め希望と感動を与えた」とし、「世界がCOVID-19の恐怖と衝撃に陥っている2020年、野球はもう一度希望になるだろう」と思いを述べた。
これまでLGは子どもの日に斗山に対戦するたびに弱かった。“子どもの日マッチ”は全23回あったが、そのうち勝ったのは9回だけ。この2年間はすべて負けた。これを挽回するかのように、LG選手らは試合前、筋肉を柔軟にし、気を引き締めた。
遅れての開幕の感想を聞く質問に、LGのリュ・ジュンイル監督は「COVID-19でシーズン開始が少し遅れたが、良かったと思う。144試合をするには日程がぎりぎりになりそうだ。選手たちに負傷と体力管理に気をつけるように言った」と述べた。斗山のキム・テヒョン監督は「こういう経験は初めてだ。選手たちのコンディションが少し落ちる問題もある。しかし(他のシーズンと)同じようにすればいい」と述べた。
始球式も動画に差し替えられた。ホームチームのLGは、ファンの応援歌映像と子ども会員である「エルリニ」所属の子どもの始球式映像を競技場の画面に流した。観客はいなかったが、LGの応援団がマスクをつけてダンスをし選手たちを応援した。選手を紹介する場内アナウンスは、満員の観客がいるかのように興奮した声だった。このような風景を撮る米国や日本などからの外国メディアの取材陣の姿も慌ただしかった。
午後2時きっかりに試合が始まった。観客がいないからだろうか。緊張感が落ちるのはどうしようもなかった。運動場にはしんと静まる瞬間が多かった。ホームチームのLGが攻撃する際、「ファイト」と叫ぶ応援団の声は鳴り響いたが、満員の観客の興奮は感じられなかった。キャッチャーのミットにボールが打ち込まれる時の「バシッ」という音、ボールがバットに当たる時の「カーン」という音が、ひときわ大きく響いた。両チームのベンチからの激励の拍手は、さらに大きくなったようだった。KBOの勧告により、走塁コーチと審判はマスクを着用し、選手たちは唾を吐くなどの感染誘発行為をしなかった。
試合は8対2でLGの勝利。3回裏、斗山出身のLGキム・ヒョンスの左フェンス越えツーランホームランが勝負の決め手だった。今季第1号ホームランだ。LGの先発チャ・ウチャンは6イニングを1失点で抑え、勝投手となった。一方、斗山は4回表でキム・ジェファンのソロホームラン後、走者1塁の状況で併殺打が出たのが痛手となった。
緊張感は落ちたが、両チームの選手たちは2時間49分間、一所懸命打って、投げて、走った。
一方、ハンファ・イーグルスは仁川遠征で外国人としては初めて開幕戦完封勝ちを収めたサーポルトの投球で、SKワイバーンズに3対0で勝った。エース同士の対決で関心を集めた光州(クァンジュ)での試合では、KIAタイガースのヤン・ヒョンジョンが3イニング4失点で序盤に崩れ、パク・ビョンホらのホームランに始まった「大砲軍団」でキウム・ヒーローズが11対2で勝った。