新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大を防ぐための高いレベルの「社会的に距離を置くこと」(ソーシャル・ディスタンシング)を進める指針が今月5日を期限としている中、韓国政府は直ちにソーシャル・ディスタンシングを緩和するのは危険要因が多いとみている。これを受け、これまで実施してきたソーシャル・ディスタンシングを大きく緩和しないレベルで、“生活防疫”システムに転換する方向で協議を進めている。政府は週末前に、今後の防疫対策の方向性を発表する方針だ。
チョン・セギュン首相は2日、「当分の間、登校や始業が困難になった中、高いレベルのソーシャル・ディスタンシングをいつまで維持すべきかを悩んでいる」とし、「日常への復帰をいつまでも先送りするわけにもいかず、国民の疲労度も相当なものであることも分かっているが、世界的な拡散がかつてないほど激しく、海外からの流入と集団感染が続いている状況だ」と述べた。さらにチョン首相は「ソーシャル・ディスタンシングを緩和することは感染を再び拡大させる恐れがある」と強調した。同日0時現在、COVID-19の新規感染者が89人増え、累積感染者数が9976人に達した。3日には、累積で韓国国内のCOVID-19感染者が1万人を超えるものとみられる。キム・ガンリプ中央災難安全対策本部1総括調整官は同日の定例ブリーフィングで、「できれば週末になる前に、これからソーシャル・ディスタンシングをいかに進めていくかについて発表したいと思っている」と述べた。
具体的に防疫当局は、生活防疫システムに移行しても、高いレベルのソーシャル・ディスタンシング指針を並行する方針だ。クォン・ジュヌク中央防疫対策本部副本部長は同日の定例ブリーフィングで、「2週間程度の非常に高いレベルのソーシャル・ディスタンシングを続ければ、全体(COVID-19感染の)発生を88%近く減らせる」としたうえで、「生活防疫が施行されても、こうした高いレベルのソーシャル・ディスタンシングの実施はその中に含まれるものとして見るべきだ」と述べた。さらにクォン副本部長は「生活防疫は高いレベルのソーシャル・ディスタンシング以外にも、一般的なソーシャル・ディスタンシング、すなわち2メートルの距離を取って生活上での密接度を下げることや発熱など症状が現れた場合は外出を控えること、密集度の高い場所に集まる人々に対する発熱確認なども構成要素になる」と説明した。
これに先立ち、政府は3月22日から今月5日までの15日間、これまでよりも高いレベルのソーシャル・ディスタンシングを呼び掛けてきた。その後、日常生活と経済活動を続けながらも防疫対策を維持する生活防疫システムに移行するという計画だった。しかし、新規感染者が毎日100人前後増え続け、この期間の延長を検討してきた。当初6日に予定されていた始業式も、再びオンラインでの授業再開の形で先送りされた状況であり、直ちに高いレベルのソーシャル・ディスタンシング指針を緩和するのは適切ではないという専門家らの発言も相次いだ。教育当局は早ければ4月末からオンライン授業と登校授業を並行できると見ている。これと関連し、ソーシャル・ディスタンシングの一環だった始業延期の効果を分析した研究結果も同日出た。建国大学数学科のチョン・ウンオク教授とサムスンソウル病院感染内科のペク・ギョンラン教授チームが、始業式の延期の効果を定量的に分析した結果、少なくとも200人のCOVID-19感染者を減らせる効果があることが明らかになった。
生活防疫システムには、免疫力が低下した高危険群への対策も一緒に盛り込まれるものと見られる。クォン副本部長は「がん患者や臓器移植を受けた方、妊婦など免疫学的に防御力が非常に低いグループに対しては持続的な対策が必要だ」と述べた。手洗いなど衛生対策も生活防疫の一環として提示される。「いかなる場所でも消毒液や手を洗える施設が提供される案を考えている」という説明だ。
この他にも防疫当局は、室内で人が密集している環境の場所などを中心に、場所や状況別に適用できる細部対策をまとめている。例えば、学校の場合、具合の悪い生徒を登校させるかどうか、学校の入口から発熱などの症状の監視、学校内に消毒液の備え付けること、給食時間の生徒間の距離の維持などを細かく規定するということだ。
何より防疫当局は日常生活で「2メートル以内、15分以上」の緊密な接触を避けるべきだと強調する。互いに3歩、両腕を伸ばした間隔よりも広く十分な距離を取るべきだということだ。キム・ガンリプ1総括調整官は同日、「多くの人たちが集まることがやむを得ない場合、間隔を維持できる広い空間を優先的に確保するか、時間差を置いて集まらなければならない」とし、「握手やハグなどはしないことを勧める」と強調した。