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n番ルーム事件、「犯罪団体組織罪」の適用は可能か?

登録:2020-03-28 09:21 修正:2020-03-28 13:04
ソウル鍾路警察署前で25日、「博士」ことチョ・ジュビン容疑者らテレグラム性搾取者に対する厳しい処罰を要求する市民たちがプラカードを掲げている。カードには「ルームに入場したあなた達は全員殺人者だ」と書かれている=共同取材写真//ハンギョレ新聞社

 テレグラムの「n番ルーム」などを通じての性搾取犯罪に対する怒りの世論が沸き立っている。今月24日に回答が完了した「n番ルームの会員すべてを処罰してほしい」など5つの「n番ルーム」に関する大統領府の国民請願には、全国民の10分の1を超える約583万人が同意したほどだ。大統領は厳罰を求め、警察と検察はそれぞれ「デジタル性犯罪特別捜査本部」と「デジタル性犯罪特別捜査TF」を設置した。

 児童・青少年性搾取物犯罪は最近始まったものではない。昨年10月、警察庁は米法務省と協力して、児童性搾取物を共有する「ウェルカムトゥビデオ(W2V)」の捜査結果を発表した。当時、世界各国で310人の利用者が検挙されたが、このうち223人が韓国人であり、運営者も韓国人だった。彼らに対する処罰はどうであったか。運営者はわずか懲役1年6カ月の実刑を言い渡され、利用者はほとんどが罰金または執行猶予処罰を受けた。米国の裁判所がウェルカムトゥビデオを通じて児童性搾取物を所持した男性に懲役10年を言い渡したこととは対照的だ。

 捜査機関と裁判所の「甘い処罰」がデジタル性犯罪を拡大しているという指摘が出ている。実際、「n番ルーム」問題が浮上した後も、検察は「n番ルーム」で児童性搾取物を製作・流布した「ウォッチマン」ことJ被告に懲役3年6カ月を求刑したが、批判世論が高まって、ようやく弁論再開を申立てた。また別のn番ルーム運営者の「ケリー」に対し、裁判所は「真剣に反省しており、捜査に積極的に協力した点を考慮した」として懲役1年を言い渡した。児童・青少年の性保護に関する法律は、児童・青少年利用性搾取物を製作すれば無期または5年以上の懲役刑、営利目的で配布すれば10年以下の懲役に処すると定めているが、現実は法定刑の足先にも及ばない水準だ。

 政府はあたふたとデジタル性犯罪に対する処罰を強化すると発表した。法務部は「n番ルーム」運営者のみならず「会員」も処罰するために「犯罪団体組織罪」(刑法114条)を検討すると明らかにした。刑法114条は「死刑、無期または長期4年以上の懲役に相当する犯罪を目的とする団体または集団を組織、またはこれに加入またはその構成員として活動した者は、その目的である罪に定めた刑で処罰する」と規定している。犯罪団体組織罪が適用されれば、捜査機関は組織員全員に主犯と同じ容疑を適用できる。また、組織員が犯罪を実行しなかったとしても、組織に加入した事実だけで同じ処罰が可能となる。テレグラムの「博士ルーム」運営者の「博士」ことチョ・ジュビン容疑者は、児童・青少年性保護法違反、強制わいせつ、脅迫などの容疑で拘束されたが、「博士ルーム」の会員が映像物の製作に関与していないとしてもチョ容疑者と同じ容疑を適用できることを意味する。そうなれば従犯らの求刑や法定量刑が上がることになる。

 犯罪団体組織罪は、単に数人が集まって犯罪を犯したからといって適用可能になるのではない。最高裁(大法院)の判例によると、多数の構成員▽共同の目的▽時間的な継続性▽最小限の統率体系の、4つの要件を満たせば「犯罪団体」が成立する。核心となるのは「最小限の統率体系」の有無とみられる。ハンギョレの取材で明らかになった博士ルームの運営実態を見ると、博士ルームにはチョ容疑者に従う管理者や職員がいた。彼らはチョ容疑者の命令に従い女性の個人情報を入手し、「奴隷」となった被害女性を訪ねて脅し、会員が出した現金を回収した。法曹界では犯罪団体と見る余地があるという分析が出ている。

 しかし、「会員」を組織員と見なすことができるのかという部分については意見が交錯する。法学専門大学院のある教授は「犯罪団体加入は共同の犯罪を犯す目的でその団体の規約に従うという意味」とし、「映像を見ただけの人なら利用者に過ぎない」と述べた。一方、ある弁護士は「積極的な活動をしなくても、性搾取犯罪が行われているチャットルームであることを知っていた」とし「仮想通貨で決済しなければならないなど、偶然には入れないチャットルームだ。積極的にそのルームに加入した以上、組織員として見ることができる」と主張した。

 専門家らは、「n番ルーム」事件がデジタル性犯罪に対する認識を変える契機にならなければならないと口をそろえる。キム・ジェリョン弁護士(法務法人オンセサン)は「安易に考える人たちに厳しく処罰されるという警戒心を与えなければならない。自分で映像物を所持するだけでなく、自分が望む時に映像に接続できるならそれもやはり性搾取物を所持したと見られるよう、認識を転換するきっかけになれば」と述べた。

ファン・チュンファ法曹チームデスク (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/934575.html韓国語原文入力:2020-03-28 02:00
訳C.M

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