韓国政府が宗教・スポーツ・遊興施設に対する運営中断を強く勧告し、15日間にわたり「社会的に距離を置くキャンペーン」の更なる強化に乗り出した。感染者数の増加傾向は比較的に緩やかであるものの、首都圏で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の“第3次流行”が始まれば、欧州のように収拾のつかない事態になるという判断によるものだ。
チョン・セギュン首相は22日、政府ソウル庁舎で開かれた中央災難安全対策本部(中対本)会議で、「今日は15日間進められる強力な『社会的に距離を置くキャンペーン』の実践初日で、宗教・スポーツ・遊興施設の運営中断を強く勧告し、やむを得ず運営する際に守るべき防疫指針を保健福祉部長官の行政命令として伝えた」とし、「政府の防疫を妨害し、人々を危険にさらす行為に対し、これ以上の寛容はありえない」と述べた。前日、チョン首相は「社会的に距離を置くキャンペーンを強化するための談話文」を発表し、集団感染のリスクの高い宗教施設や室内スポーツ施設(武道場やジムなど)、遊興施設(コーラテック(酒を提供しないダンスホール)やナイトクラブなど)の運営を15日間(3月22日~4月5日)中断するよう強く勧告した。また、地方自治体別の状況によって、インターネットカフェやカラオケ、塾などもこれに加えられるようにした。中央省庁が感染症予防法によって行政命令を下した初の事例だ。
当該施設の事業主がやむを得ず営業を続ける場合は、防疫当局が示した遵守事項に従わなければならない。有症者の立ち入り禁止や1~2メートルの距離維持、マスクの着用、出入した者のリスト作成、施設の随所に消毒液を置くなど、施設別に示された遵守事項を守らなければならない。これに従わない施設に対しては、行政命令を発動し、集合禁止措置を取ることになる。これも違反した際は、感染病予防法(300万ウォン以下の罰金)によって処罰される。政府は感染者が発生した場合、入院・治療費および防疫費損害賠償(求償権)も請求する方針だ。さらに、防疫規則を守らず「高リスク店」という表示が貼られた店を利用して感染した人にも、求償権を請求することを検討している。
今回の指針は、政府がこれまで市民の自主的な参加を引き出す方式で進めてきた「社会的に距離を置くキャンペーン」に一定の拘束力を持たせたものと言える。新たに感染が確認された人が一日100人前後に減ったものの、これで安心して「社会的距離置き」を疎かにし、大邱(テグ)・慶尚北道における大流行のように首都圏で“第3次流行”が起きれば、医療体系が対応できなくなるとみているからだ。このような事態を防ぐため、「社会的距離置き」を強化し、市中感染を現在の防疫体系が対応できる水準に減らすと共に、これを基に長期間流行に備えて状況と場所に応じた具体的な指針や法・財政支援などの体系を設けることで、日常や経済活動と調和する“生活防疫”体制に切り替えるという方針だ。
政府は、国民にも不要不急の集まりや行事、旅行などを15日間延期し、生活必需品の購入や医療機関への訪問、通勤以外は外出を控えるよう呼びかけた。中央事故収拾本部は「今回の指針は事業者に対する警告だが、これらの施設が営業を続けても、国民が行かないことが重要だ」と強調した。公職社会が先頭に立つという意味で、会議や報告を映像や書面で行い、国内外への出張を原則的に禁止するなどの「公務員服務管理特別指針」も施行される。国立がんセンターのキ・モラン教授(予防医学)は「遊興施設では出入り者のリストを作成したり、距離の維持などを守ること自体が難しいため、営業を続けることは難しいだろう」とし、今回の指針の効果があると期待感を示した。
しかし、嘉泉大学吉病院のオム・ジョンシク教授(感染内科)は「(実質的には似たような方法で)『社会的距離置き』を緩やかに続けてあまり効果を得られないよりは、閉鎖命令や移動制限レベルのより強力な措置が必要だ」と話した。政府は同日、「公共交通機関に『最高レベル』の防疫システムを稼動することにした」と発表したが、実際の内容はKTXなど指定席のある公共交通機関で乗客の間の空席を設ける従来の方針と変わらなかった。
結局、効果を高めるためには、経済的支援案の内容がカギになるものと見られる。盆唐ソウル大学病院のキム・ホンビン教授(感染内科)は「『社会的距離置き』による小商工人の2次被害は国が支援しなければならない」とし、「どこまで苦痛を分かち合えるかについて、社会的合意形成が急がれる」と述べた。政府は、行政命令対象によって被害を受ける自営業者への支援策を講じていると発表した。