新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大で未曾有の危機に直面した主要国が「現金支給」を緊急対策として採択している。韓国では中央政府の代わりにソウル市など地方自治体5カ所が災害基本所得の性格を帯びる緊急生活費を支援することにした。COVID-19による景気低迷の直撃を受けた社会経済的脆弱階層の負担を減らし、低迷している景気を回復させるため、全国民に直接現金支援金を支給する案が世界的に注目されている。
ドナルド・トランプ米政権は17日(現地時間)、COVID-19による経済衝撃を和らげるため、米国国民に現金(小切手)1千ドルを支給する案を含め、1兆ドル規模の景気浮揚資金を投入すると発表した。スティーブン・ムニューシン財務長官は同日、ホワイトハウスで行った記者会見で「米国人らは今現金が必要で、大統領も現金を渡したいと思っている。現在、2週間以内に(施行されれば望ましい)」と述べた。トランプ政府は所得水準によっていくら支給するかや支給対象は労働者に限定するどうか、全世帯に拡大するかどうかなどについては、議会と協議して決める方針だ。日本政府もCOVID-19の感染拡大と関連し、緊急経済対策として全国民に現金1万2千円以上を支給する案を検討していると、毎日新聞が18日付で報じた。
国内では全羅北道全州(チョンジュ)や京畿道華城(ファソン)、江原道に続き、ソウル市も災害(基本)所得の支給に向けて動き出した。ソウル市は18日、中位所得以下の世帯に対し、予算3271億ウォン(約280億円)を投じ、30万~50万ウォン(約2万5千円~4万3千円)を支給する内容を盛り込んだ「ソウル市災難緊急生活費支援対策」を発表した。ソウル市は世帯構成員数によって30万ウォン(約2万6千円。1・2人世帯)~50万ウォン(約4万3千円。5人以上)に差を設け、モバイル地域愛商品券やプリペイドカードを支給する計画だ。
同日午前、国会で開かれたCOVID-19対応政府与党・大統領府会議では、自治体が災害所得など緊急支援に乗り出した場合、政府が第2次補正予算を通じて資金を補填する案が議論された。COVID-19国難克服委員会のイ・ナギョン委員長は会議後の記者会見で、「一部の自治体で災害基本所得に近い緊急支援政策を展開するのは望ましいことだ。中央政府が(今後)どのような政策を展開できるか(推測する上で)良いモデルになるだろう」と評価した。イ委員長は「自治体がこうした方法で支援することによる負担が生じれば、次の補正予算で補填する案も検討する」と付け加えた。
このような流れは、与党指導部の中でも広がっている。イ・ヘチャン民主党代表は同日に開かれた最高委員会議で、「11兆7000億ウォン(約1兆円)の補正予算が成立したが、2008年の金融危機当時の28兆4000億ウォン(約2兆4200億円)に比べれば十分とは言えない。補正予算以降の状況を綿密に検討し、特段の経済対策を検討する必要がある」と述べた。パク・ジュミン最高委員も「世界経済の困難による悪影響に備えるため、災害基本所得など積極的な方策を考慮しなければならない」と賛同した。
チェ・ハンス慶北大学教授(経済通商学部)は「今は財政の健全性を問う場合ではない。自治体が社会的脆弱階層に緊急生活費を支援するのは、社会保険を補う効果があり、現在のような時期には適切な措置だ」と述べた。