新型コロナウイルス(COVID-19)によるショックを減らすために制限された対象に一時支給する「災害基本所得」制度導入の動きが、国内外で相次いでいる。脆弱層の生活苦を減らすためだけではなく、全般的な経済活性化の次元からも必要な措置だ。
米国政府は17日(現地時間)、COVID-19事態に対応するために米国人に現金1千ドル(約124万ウォン)以上を支給する方案を含んだ1兆ドル規模の景気浮揚策を推進すると明らかにした。一定の所得基準により対象を制限して支給する案だ。条件を問わず全員に支給する普遍的基本所得制とは異なる。
韓国内では地方自治体レベルで災害基本所得の性格を帯びた生活支援策が相次いで打ち出されている。全羅北道全州市(チョンジュシ)、京畿道華城市(ファソンシ)、江原道、済州道に続いてソウル市が、災害基本所得支給案を18日に明らかにした。中位所得以下の117万7千世帯に30万~50万ウォン分(約2万6千~4万3千円)の地域愛商品券やプリペイドカードを「緊急生活費」として配る内容だ。ソウル市のパク・ウォンスン市長の説明のように「生計の壁に直面した市民の苦痛に現実的に応えるための策」だ。
地方自治体単位でも災害基本所得の性格の緊急生活費をまず支給する策を広める必要がある。17日に国会を通過した補正予算(11兆7千億ウォン)だけでは埋めることのできない死角が多いためだ。中央政府が事後保全する策を設けて施行すれば、拡散の速度を上げられるはずだ。与党である共に民主党はこのような提案をすでに行っている状態だ。同党新型コロナ国難克服委員会のイ・ナギョン委員長は18日、「一部の地方自治体が災害基本所得に近い緊急支援をしており、望ましいことだ」として「地方自治体の会議を招集して協力を要請し、自治体の負担は次の補正予算で補てんする策を考える」と述べた。
中央政府次元でも、もっと広い意味での災害基本所得案を積極的に検討する必要がある。地方自治体ごとの策では基準が異なり空白が生じて、公平さに対するいさかいが起きかねないためだ。ソウル市が10日に中位所得以下の全国988万世帯に60万ウォン(5万2千円)ずつを緊急生活費として支給しようと政府に提案したことは参考に値する。必要な財源用意のための第2次補正予算案を準備しておかねばならない時だ。今年の拡大財政の状態でも国内総生産(GDP)に対する国家債務の比率は40%をやや上回る水準(41・2%)で比較的良好なため、余力はある。
災害基本所得支給を巡って「現金ばら撒き」とか「気前よく与えすぎ」と非難するのはのんきな話だ。「減税先行で」という主張もまた適切ではない。今直ちに困っている人が税金を払うことができないという現実を知らないか無視している主張にすぎない。小商工業者や零細自営業者、個人事業主、フリーランサー、非正規職、請負労働者が体験する生計の苦労は全般的な景気低迷とも密接に関係しているという点を直視しなければならない。「非常経済時」であるだけに、既存の慣行ややり方から抜け出して政策を展開すべきだ。