出入口の扉は内側で固く閉ざされていた。出入りする住民も見当たらず、施錠された扉の前に立てられた案内板には「関係者以外立ち入り禁止」、「出入り全面統制」と書かれていた。「ここに住む女性たちはほとんど挨拶もしないし、あまりしゃべらないから、ちょっと変だなと思っていたけど、住民の3分の2が新天地の信者だと聞いてびっくりしました」。8日午後2時、大邱達西区聖堂洞(ソンダンドン)ハンマウム・マンションの向かい側で会ったある住民はこう語った。
合わせて2棟の同マンションは、大邱(テグ)市総合福祉会館で運営している大邱市の長期賃貸マンション(主に低所得層のために自治体や韓国土地住宅公社によって運営される賃貸住宅)である。全体の住民140人のうち、新天地の信者が94人で、先月13日から同日までで住民46人が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染したことが確認された。感染者は全員新天地信者だと、大邱市は明らかにした。80人は陰性反応を示した。残りの14人については、現在検査が行われている。4日には住民をマンション内に隔離し、出入りを禁ずるコホート隔離処置が下された。大邱市は8日までに感染者を全員病院または生活治療センターなどに移送したと説明した。
マンションで、COVID-19の患者が大量に発生し、特に住民の3分の2が新天地信者であることが確認され、その背景に疑問の声が上がっている。一部の新天地信者がマンション住民たちに布教したのではないかという声も上がっているが、現地では新天地信者の間で同マンションが口コミで広まり、信者が集まって暮らすようになったと見る人が多い。
同マンションの最も大きな特徴は、大邱市内で働く35歳以下の未婚女性が入居対象という点だ。20~30代の若年層が信者の大半を占める新天地の特性と、同マンションの入居環境が相まって、新天地の集団居住施設になったと大邱市などは把握している。居住期間は2年だが、1回に限り延長が可能であり、最長4年まで居住できる。家賃は月2万2千~5万4千ウォン(約1800~4800円)で、かなり安い。1985年に建てられたため古くて狭く、入居希望者も多くない方だ。大邱市総合福祉会館が申請を受け付け、入居資格などを審査する。
さらに、同マンションは新天地大邱教会とは直線距離で1.2キロメートルしか離れていない。歩いて20~30分程度の距離だ。新天地の信者の職員をはじめ、10人の感染者が出た文成病院が同マンションの向かい側にある。新天地関係者も「教会に近く、家賃がかなり安いため、青年(信者)たちが多く住んでいる」とし、「ほとんどが聖徒(信者)からの紹介で入居した」と話した。
入居過程における特恵疑惑も持ち上がっている。しかし、大邱市はそれを強く否定した。クォン・ヨンジン大邱市長は同日午前のブリーフィングで、「アパートが古く、エレベーターもないため、入居希望者は少ない。入居競争が激しいなら、公務員が恩恵を与える可能性があるかもしれないが、(定員割れであるここは)その余地はない」と述べた。
問題は、第2、第3のハンマウム・マンションがありうるという点にある。大邱市は、同マンションの感染者46人のうち45人を確認してから、ようやく彼らが同じマンションの住民であることを把握した。さらに、この事実を公表せず、マスコミの報道が出てから、7日に発表した。大邱市は、これと似た形の新天地信者の集団居住施設があるかどうかを確認している。クォン・ヨンジン市長は「新天地信者が集まって住んでいる類似したマンションがあるかどうかを、疫学調査班が調べている」と述べた。