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生計立てられなくなる…「しばらく立ち留まる」ことができない人々

登録:2020-03-04 06:56 修正:2020-03-04 08:34
「新型コロナショック」の被害も二極化 
矢継ぎ早に福祉措置取るIT、大企業のように 
在宅勤務・有給休暇は考えられない 
顔色をうかがいながら出勤する中小企業労働者 
その日暮らしの自営業者やフリーランサー 
当面の生計立てるためにそれぞれ生きていく道を見つけるしかない 
首都防衛司令部の将兵たちが今月3日午後、ソウル江南区開浦洞の九龍村で防疫作業を行っている。ソウル市は首防司の協力を得て管内の緊急防疫に兵力と装備を投入したが、毎日自治区別に申請を受け付け、大衆が集まる場所を中心に消毒する計画だと発表した=イ・ジョンア記者//ハンギョレ新聞社

 先月23日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の危機警報が深刻レベルに引き上げられてから3日で10日目を迎え、事態が長期化する中、感染症の危機がもたらした社会経済的被害の大きさにも格差が生まれている。政界や学界などは、日常から離れて社会的な距離を置くため、「しばらく立ち留まる」ことを薦めているが、勤務する会社や周りの助けを受けて在宅勤務や有給休暇、家族介護などが可能な人々とそうでない人々にとっては危機が差別的に迫っているのだ。

 昨年11月基準で従業員数約3600人のゲーム会社「NCソフト」は、最近、破格の措置を取った。COVID-19に対応するため、先月27日から6日まで、全役員と社員が有給休暇に入ったのだ。有給休暇以降は9日から部署別に半分ずつ分けて交代で在宅勤務(テレワーク)を行うことにした。NCソフトの関係者は「社員にできれば旅行などを控え、家で家族にサービスする時間を持ってほしいと呼びかけた」とし、「10日近く有給休暇を与えた会社はNCソフトが唯一であるだけに、役員や社員たちも粛々と過ごす雰囲気だ」と話した。

 ネイバーも先月26日から全職員テレワークを施行しており、カカオとKTなど、IT業界の大手企業も素早くテレワークを実施している。ネイバーの関係者は「ノートパソコンなどに業務プログラムを設置できるようにし、機器を追加で使いたい社員がいる場合は予算の範囲内で追加支援している」とし、「テレワークに支障がないよう支援している」と話した。

 SKイノベーションをはじめとするSKの系列企業6社も、先月25日からの必要不可欠なスタッフを除き、テレワークを行うようにしている。大林建設や韓火建設など、多数の建設会社もテレワークを実施しており、サムスン電子やLG電子は、妊婦など高リスク群の役員や社員に限りテレワークを認めている。京畿道板橋(パンギョ)のあるIT企業社員は「地下鉄通勤をしてきたが、テレワークで自宅の外に出ることもほとんどなく、感染源との接触は少なくなった」と話した。SKテレコムのKマネージャーは「COVID-19でテレワークが活性化し、技術的にテレワークに問題がないことが立証されたようだ」と話した。

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テレワークする大企業と顔色うかがいながら無給休暇取る中小企業 

 中小企業は雰囲気が一変している。感染危機を避けるという理由で、むしろ労働条件が悪化した企業も続出している。自動車部品製造関連の中小企業に勤めるKさん(31)は最近、普段より1時間30分早い朝7時30分までに出勤する。サラリーマンが最も多く集まる公共交通機関の通勤時間を避けるべきという会社の方針によるものだ。退勤時間も1時間30分繰り上げられたが、仕事をしているうちに普段と同じ時間になる場合も多い。会社側は有症者に限り、自宅隔離を実施している。Kさんは「感染した場合の不利益を恐れ、絶対にCOVID-19にかかってはいけないと思っている人が多い」と話した。

 中小企業の労働者らは、有給休職や在宅勤務などは考えられないのが現状だ。医療関係の中小企業で働くOさん(25)は「イントラネットなど、社内ネットワークが不十分であるため、外部では業務を行うのが難しく、テレワークができる人たちがうらやましい限り」だと語った。IT関連中小企業の社員Kさん(30)も「体調が悪い場合は休みを取るように言われれているが、社員が少ない中、1人が抜けるとその空白が大きく、顔色をうかがわざるを得ない構造」だと話した。仁川空港で航空会社に地上業務を委託されている中小企業に勤めるYさん(32)も「今月初め、会社から『コスト削減のために無給休暇を実施する』というメールが届いた。年次休暇も一緒に使うように促され、給料が先月より半分以下に減る予定だ」とし、「大手航空会社は休暇を使っても一部の給与を支給するというが、私たちは無給休暇を取りながらもいつ会社がなくなるか分からないと心配しなければならない状況だ」と語った。

 大企業はマスクの品薄事態に対処するいわゆる「マスク福祉」にも積極的だ。ネイバーは最近、社内に「大邱(テグ)・慶尚北道に家族がいる場合は、会社が代わりに送るから申し込んでほしい」という通知を出した。COVID-19の感染者が集中的に発生した大邱・慶尚北道地域出身の社員を対象にした福祉の範囲を家族にまで拡大したのだ。ウリ銀行の関係者は「本店レベルで大量に確保するつもりだったが、それがうまく行かず、営業店に予算を割り当てて個別的に買うようにしている」と話した。国民銀行は営業店の社員1人当たり30枚分のマスクを確保し、少しずつ配っている。新韓銀行も「一日一人一枚のマスク」を原則にし、営業店に支援していると発表した。

 教育部が2日、全国小中高校の始業式をさらに2週間延長したことを受け、大企業は育児支援が必要な労働者について、家族の世話をするための休暇や年次休暇などの使用を積極的に薦めている。特に、妊婦の社員や学校(幼稚園)の始業式(開園)の延期で子どもの面倒を見なければならない社員などに対する配慮を優先している。

 しかし、学校現場ではその負担が一般の教師ではなく、学童の教師に転嫁されている。大邱新岩小学校で非正規職の学童教師として働いているムン・スジョンさん(46)は「一般の教師たちは在宅勤務をしているのに、緊急な状況だからといって私たちには出勤しろと言う」とし、「学校は教師を保護するために在宅勤務を実施しているのに、誰にも守ってもらえない思うともどかしい。でも、非正規労働者だから何も言えない」と訴えた。

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限界に達した零細事業主とフリーランサー

 特に、日当で生計を立てているフリーランサーの危機感は限界に達した状態だ。ソウルのある区民体育センターでピラティス講師として4年近く働いてきたCさん(33)には最近、出勤を取りやめてほしいという連絡が届いた。センター側は区役所からの指示だと伝えたという。一つのレッスン当たり日当を受け取るCさんはセンターに抗議してみたが、「ここに入りたがる講師は多い。訴えを起こしたければ好きにしろ」と言われた。Cさんは「出ていくお金は決まっているのに、入ってくるお金がないため、積金を解約した」とし、「いつまで待たなければならないかも知れず、ただ茫然としているだけだ。少しでも支援してほしい」と話した。ソウル恩平区の銭湯で保証金6千万ウォン(約540万円)に家賃200万ウォン(約18万円)で垢すり室を借りて、10年間働いてきたKさん(58)はCOVID-19の感染拡大以降、お客さんが半分以下に大幅に減り、最近従業員にしばらく仕事を休むように通知した。「その日、二人で焼酎を飲みました。こんな風に体を使う仕事をしているのに、1カ月に少なくとも300万ウォン(約27万円)は稼けないとおかしいでしょう?なのに銭湯にお客さんが来ません」

 実際、地域の労働福祉センターなどにも関連の相談が増えている。これらの相談は、在宅勤務や賃金の“一部”を支援する雇用維持支援金などに関する内容よりは、零細事業主たちの無給休職と解雇関連の相談や休業手当などについてよく知らない、いわゆる社会的弱者層からの質問が多い。ソウル冠岳区のイム・ソンギュ労働福祉センター長は「最近、特に長期勤務が保障されていない職場でその日暮らしをする社会的弱者層の電話が増えている。毎日1件や2件はある」とし、「COVID-19で売り上げが落ち、それによって解雇されている社会的弱者層は、食べていけない状態が発生している」と話した。

 「私が作っていく福祉国家」のオ・ゴンホ共同運営委員長は「もともと福利厚生を備えた正社員中心の事業場と周辺部事業場の格差が存在するが、COVID-19のように災難状況が来たときは、普段認識できなかった格差がさらに大きく現れる」とし、「正社員と非正社員の格差がある事業場では、非正社員にも正社員に準じた支援が行われなければならず、零細自営業者らには国家レベルの支援ネットワークが必要だ。災難状況での休業給与や営業の断絶によって発生する損失を支援する制度と財源が必要だ」と指摘した。

ペ・ジヒョン、チョン・グァンジュン、チェ・ミンヨン記者、キム・ジェソプ先任記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/930986.html韓国語原文入力:2020-03-04 05:00
訳H.J

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