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「保安観察処分、『再犯の危険性』厳格に問うべき」機械的保安観察にブレーキ

登録:2020-02-07 02:18 修正:2020-02-07 08:45
「保安法違反」懲役8年満期出所の40代 
利敵団体の集会、行事参加を理由とした 
保安観察処分に対して行政訴訟起こし勝訴 
高裁「刑執行後の社会活動、より考慮すべき」
ソウル瑞草洞の最高裁大法廷の出入り口上部に据えられた裁判所の象徴「正義の女神像」=キム・ジョンヒョ記者//ハンギョレ新聞社

 イ・ビョンジンさん(48、大学講師)は、利敵団体(北朝鮮を利する団体)と接触して軍事機密を渡したとして、国家保安法違反で2010年に懲役8年を言い渡され、2017年9月に満期出所した。しかし、出所して4カ月後の翌年1月、大田(テジョン)地検から出頭を要求する一本の電話がかかってきた。調査の末、法務部は同年12月、保安観察処分審議委員会の議決を経て、イさんに保安観察処分を下した。保安観察法によると、法務部は国家保安法違反などで3年以上の刑を言い渡された人の再犯を防止し社会復帰を助けるため、保安観察処分を下すことができる。この処分を受ければ、転居や海外旅行時はもちろん、3カ月に一度ずつ主要活動内容を管轄警察署に報告しなければならない。この処分は特別な事情がなければ2年ごとに更新される。

 法務部が明らかにした理由はこうだ。「(イさんの)犯罪行為は非常に重大であるにもかかわらず『政治学徒として統一を念願する自然な交流』と主張しており、受刑中、国家保安法違反の前歴者らとの面会を続け、出所後も利敵団体が主管する集会や行事に参加し続けており、国家保安法の廃止まで主張している」。 法務部は、イさんが収監中にやり取りした手紙や接見した人たちの一人ひとりについて指摘したうえ、イさんが大学講師として働きながら国家保安法の廃止を主張する本を出版し、関連集会や講演に参加したことや、海外旅行をしたことまで問題視した。イさんはハンギョレとの電話インタビューで、「出所して間もない状態で調査を受けに来いと言われること自体が大きな苦痛だった。どんな活動を行っているか具体的内容は細かく調べもせず、まるで日帝強占期の思想犯を扱うように機械的に再犯の危険性を突きつける感じを受けた」と語った。イさんは法務部の処分に反発し、昨年初めに保安観察処分の取り消しを求めてソウル高裁に行政訴訟を起こした。

 裁判所は今月4日、イさんに勝訴の判決を下した。ソウル高裁行政4部(イ・スンヨン裁判長)は、イさんが法務部長官を相手に起こした行政訴訟で、法務部に保安観察処分の取り消しを命じた。保安観察処分は、すでに犯した行為について再び責任を問うのではなく、同じ犯罪の再発を防ぎ、対象者の社会復帰を助けるための行政措置であり、刑執行後の社会的活動や態度、生活環境、性行までを見て総合的に決定すべきという主旨だ。同高裁は「犯罪状況が重いとの理由だけで、直ちにイさんが国家保安法違反行為を再び犯す危険性があるとは考えにくく、むしろ刑執行期間中にイさんが見せた行動、刑執行後の社会的活動などをより積極的に考慮することが望ましい」と指摘した。「再犯の危険性」を厳格に判断しなかった法務部の機械的処分にブレーキをかけたかたちだ。

 裁判所は、具体的にイさんが刑務所で国家保安法に違反した人たちと手紙のやり取りや接見をしていたとしても、日常的な親交以上の接触ではなかったと判断した。また、イさんが保安観察処分の対象者の申告義務を履行し、警察および検察の調査にも誠実に応じており、調査内容を見ても「特に再犯の憂慮が認められるだけの事情は見られない」と判断した。イさんは、2018年に警察と検察の調査過程で北朝鮮の体制についての質問を受けると「朝鮮民族として同胞愛を持っており、分断の痛みを乗り越えて平和的に共存してほしい」と常識的な水準で答えている。

 裁判所は、刑執行後のイさんの行動に問題はないと判断した。イさんが国家保安法に反対する本を発行したとしても、これは「憲法で保障された政治的表現の自由、言論・出版の自由、良心の自由に属する活動」にすぎず、大韓民国の憲法秩序を否定するところまで行っていないと判断したのだ。イさんが生業を持って安定した社会生活を営んでいること、海外渡航歴はあるものの、知人と会ったり学問的な交流をするためと見られることなどを考慮すると、「むしろこうした諸事情は、原告が社会構成員として安定的に定着している状況を反映している」と述べた。ただ、裁判所は「保安観察処分自体が違憲的」というイさんの主張は受け入れなかった。

 過去に保安観察期間の更新処分の違法性が争われたことはあるが、出所後に下された保安観察処分そのものの違法性が争われ、原告が勝訴した事例は珍しい。イさんの代理人のオ・ミネ弁護士(法務法人ユルリプ)はハンギョレの電話取材に対し「法務部は国家保安法が適用された容疑内容や受刑生活当時の事情を主な理由として保安観察処分を下したが、これは制度の趣旨に合わず、違法だと裁判所が判断したものだ。再犯の危険性を判断する際、過去の犯罪に対する責任を再び問うかたちの機械的な処分は下してはならないということを、裁判所が確認したという意味がある」と説明した。

コ・ハンソル記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/927173.html韓国語原文入力:2020-02-06 11:05
訳D.K

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