非転向長期囚として14年間収監されて出所した後、保安観察法の届出義務を履行しなかった容疑で裁判にかけられたカン・ヨンジュ氏(56)に、無罪が言い渡された。裁判所は、国家保安法を再び違反した危険性がないにもかかわらず保安観察処分を更新したのは違法であるため、処罰できないと判断し、法務部の慣行的な決定にブレーキをかけた。
ソウル中央地裁刑事4単独チョ・クァングク判事は21日、保安観察法違反の疑いで裁判にかけられたカン氏に、無罪を言い渡した。チョ判事は「2011年や2013年、2015年の3回にわたる保安観察の更新処分は、再犯の危険性があると認められる十分な理由が無い限り違法な処分」だとしたうえで、「届出義務の前提となった処分が違法であるならば、法治主義の原則上、被告人を刑事処罰することはできない」と判断した。
1985年、「欧米留学生スパイ団事件」で無期懲役を言い渡されたカン氏は、転向書の作成を拒否し、14年間も監獄に閉じ込められた最年少非転向長期囚だった。カン氏は1999年に釈放されたが、今回は再犯の恐れがあるという理由で保安観察処分を受け、18年間にわたり7度も更新された。保安観察処分を受ければ、3カ月間の主要活動事項などを管轄警察署長に届け出なければならない。しかし、カン氏は「良心の自由を侵害する」との理由で、届出を拒否し、2002年と2010年に続き、昨年3度目に起訴された。保安観察法は届出義務違反者に2年以下の懲役または100万ウォン(約10万円)以下の罰金に処するように定めている。
カン氏に対する裁判所の無罪判決は、基本権を侵害しないよう、法務部などに保安観察の事由を厳格に検討することを求めるものと言える。チョ判事は「申告義務の履行を拒否したこと自体は、再犯の危険を判断する資料にならない」としたうえで、「被告人は、大韓民国の体制自体を否定しているわけではなく、保安観察の廃止と不服従の主張も憲法上の表現の自由を越える行為と見ることはできない」と明らかにした。また、警察などが保安観察処分の更新の主要根拠に挙げた操作スパイ事件の拷問被害者の会である「真実の力」の理事としての活動についても、「人権侵害被害者の治癒を支援したり、真相究明活動を行う団体であり、設立者全員が再審請求で無罪判決を言い渡され、確定された」とし、問題がないと判断した。それ以外にも、マスコミとのインタビューや寄稿、光州(クァンジュ)トラウマセンター長としての活動、5・18光州民主化運動とセウォル号関連の講演などは、憲法上の表現の自由と良心の自由に該当すると判断し、医師のカン氏の安定的な社会生活などもチョ判事は考慮した。
ただし、裁判所は、依然として保安観察法自体は違憲でないと判断しており、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)に「#私がカン・ヨンジュだ」と書き込み、二重処罰だという批判を受けた保安観察法の廃止を主張した市民の声とは距離があった。チョ判事は「憲法裁判所は2回保安観察処分根拠条項について違憲ではないと判断しており、その後、南北の政治・軍事的対立・緊張関係が完全に解消されていない状況で、保安観察制度自体は必要だと思われる。届出義務は思想の変更を強要するものではなく、良心の自由を侵害すると見ることはできない」として、カン氏の違憲法律審判提請の申請は受け入れなかった。
カン氏は無罪判決の後、「法治主義と国民の基本権を守る裁判所の任務を果たすため、難しい決定を下してくれたことに感謝している。今回の判決が人権と民主主義、自由と平等が私たちの暮らしに空気のように浸透し、世の中にさらに一歩踏み出す契機になった」と話した。今回の判決により、ボールはまた検察と法務部に渡された。カン氏の弁護を担当したチェ・チョンギュ弁護士(法務法人地平)は、「保安観察更新処分の根拠を細かくチェックし、再犯の恐れがないと認めた裁判所の判断を尊重して、検察は控訴を、法務部は保安観察更新処分をしてはならない」と話した。