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[寄稿]死ぬまでカン・ヨンジュ

登録:2017-04-25 02:20 修正:2017-04-25 07:18
28日、保安観察法違反の疑いで裁判にかけられる医師のカン・ヨンジュ氏//ハンギョレ新聞社

 カン・ヨンジュが裁判にかけられたと聞いて驚いた。保安観察法上の届出義務不履行による起訴だと聞いてさらに驚いた。1999年に出所したから、18年間も塀の外で暮らしてきたのに、まだ過去の鎖が現在を締め付けているとは、驚かざるを得ない。

 カン・ヨンジュは5・18光州(クァンジュ)民主化抗争で銃を手にした高校3年生の市民軍であり、医学部在学中に全斗煥(チョン・ドゥファン)政権によるねつ造の疑惑があった「欧米留学生スパイ団」事件で35日間も拷問を受けた後、14年間服役した良心の囚人だ。転向制度に抵抗し、獄中で合わせて300日間にわたるハンガーストライキを繰り広げ、国際アムネスティが定めた最年少の非転向長期囚となって、結局思想転向制度を撤廃させた。昨年まで光州(クァンジュ)トラウマセンター長を務め、現在はソウル市内に開業し、痛みの治療の名医として知られる家庭医学科専門医だ。そのような彼が再犯が懸念されるとの理由で、18年間も国家の監視の対象となり、言うとおりにしなかったとして今月28日に裁判にかけられるという。

 保安観察法は国家保安法違反などで3年以上の刑期を終えた人を対象とした監視法だ。2年ごとに更新されるが、法務部長官が再犯の恐れがあると判断すれば、死ぬまで国が私生活を監視できる。これまで彼に対する保安観察の更新事由はこのようなものだった。「国家保安法、保安観察法廃止を主張した」、「様々な集会に参加した」、「妻の収入に依存し、下流の生活をしている」。さらには「インターネットに詳しく、活動能力が旺盛だ」など、極めて恣意的かつ反人権的な理由だ。

 保安観察処分を受けると、3カ月ごとに本人の一挙一動を申告しなければならない。引っ越し先を知らせなければならないのはもちろん、未明に突然かかってきた警察の電話にも出なければならない。旅行に行くためには、旅行目的や期間、同行者などを事前に届け出なければならない。他の人との交流や連絡はもちろん、集会、デモ場所への出入りを禁止されることもある。家族、親族だけでなく、家主、職場の同僚、聖堂の信者、マンションの警備などにも被保安観察者に対する情報が要求され、動態を把握する。すでに刑を終えたにもかかわらず、死ぬまで受刑生活を繰り返さなければならないのだ。

 カン・ヨンジュは刑務所で14年間、転向書への捺印を拒否して闘った。拷問に耐え切れず、転向書に署名をしてから自殺した人もおり、拷問による障害を負った人も多い。そのような状況で14年間も転向せず、耐え続けるのは想像を絶する苦痛だったはずだ。ともすれば、懲罰部屋に閉じ込められ、手足が縛られた状態で犬のようにご飯を食べながら彼が守ろうとしたのは、思想や信念ではなく、人間としての尊厳と価値だったという。そして、転向制度を廃止させ遵法誓約書に署名せず、刑務所から出所する際、彼は「もう世の中に借りはない。できる限りのことはやった。社会が私に再びそのような責務を要求してはならないと思う」と話した。

イ・ミョンス心理企画者//ハンギョレ新聞社

 カン・ヨンジュは良心や表現の自由がいかに空気のようなものなのかを、炭鉱の中のカナリアのように私たちに気づかせてくれた。私たちはその部分でカン・ヨンジュに借りがある。監獄の中で14年間を一人で闘ったのに、再び18年もカン・ヨンジュ一人に今のような闘いを続けさせてはならない。彼が死ぬまで繰り返すかもしれない闘いだ。ともに闘って廃止させなければならない。それはまさに私たちの良心とアイデンティティを守る闘いだ。

 裁判所は、今回の事件の判決を保留し、保安観察法の違憲法律審判提請を再度行ってほしい。そのような常識的な判断が日常になることを願う気持ちが積み重なって、常識的な政権への望みに繋がると、私は信じている。カン・ヨンジュがいるべき場所は法廷ではなく、自由な日常だ。死ぬまで。

イ・ミョンス心理企画者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/791107.html 韓国語原文入力:2017-04-17 19:07
訳H.J(1744字)