新型コロナウイルス感染症の発生地である中国湖北省武漢地域に滞在していた韓国人368人が帰国した31日の朝、金浦(キンポ)空港には緊張感が漂っていた。忠清南道牙山(アサン)の警察人材開発院と忠清北道鎮川(ジンチョン)の国家公務員人材開発院に向かう彼らが徹底的に分離され検疫を経てバスに向かう間、空港には沈黙が流れていた。
帰国者たちを乗せた大韓航空の政府チャーター機は同日午前6時3分に武漢を出発し、朝7時58分頃に金浦空港に着陸した。空港には白い防護服を着た職員たちが彼らを迎える準備のため慌ただしく動いており、空港の外では彼らの移動を支援する2個中隊約140人の警察とマスコミ各社の記者たちでごった返していた。36台のバスのほかに119救急車18台も順に到着し、待機していた。チャーター機搭乗後、機内や金浦空港での検疫過程で発熱症状を示した18人の帰国者を載せる陰圧救急車だった。運転手らは皆、防疫服にマスクやゴーグルまで着用していた。搭乗客は武漢空港ですでに中国政府と韓国医療陣による2度の検疫を経たが、到着直後にも再び検疫を受けた。同日、発熱症状が現れた帰国者18人のうち14人は国立中央医療院に、4人は中央大学隔離病床に移送された。
全員マスクをつけたまま、保安区域の空港ゲート内の検疫台を通過し、バスに乗った帰国者たちの顔も緊張感に満ちていた。彼らの移動経路にはポリスラインが設置され、移動をサポートする職員たちも全員防護服を着ていた。帰国者たちの大半はバスの中で、神妙な面持ちで外を眺めたり、手にした携帯電話を眺めたりしていた。しかし、子どもを抱いた母親の目からはやっと故国に着いたという安堵感も感じられた。帰国者368人を乗せたバス36台はマスクで覆われた沈黙の中、ソウル金浦空港を出発した。
武漢からの帰国者たちを乗せた最後のバスが11時14分に金浦空港を去るまで、3時間16分の時間がかかった。6組に分かれた帰国者たちはそれぞれ3組ずつ峨山と鎮川郡に向かった。バス5~7台で構成された一組が出発する度、高速道路巡察隊の車が前後に二台ずつバスをエスコートした。警察関係者は「高速道路までパトロール隊が道を案内する予定だ」と述べた。発熱症状が現れた18人の帰国者が救急車に乗る時も、ソウル地方警察庁交通パトロール隊がバイクに乗って道を案内した。最長潜伏期の14日間、峨山警察人材開発院と鎮川国家公務員の人材開発院で過ごすことになる帰国者たちは、現地の受け入れを反対した住民たちが反対の意思を撤回したことを受け、同日、各地域に無事到着した。