生活苦を訴えていた家族が自ら命を絶つ事件が再び起こった。2014年のいわゆる「松坡(ソンパ)三母娘事件」以降、福祉の死角地帯の発掘などに関する制度改善が行われているが、同じような事件が絶えない。
6日、京畿道金浦(キンポ)警察署などの説明を総合すると、5日午前3時40分頃、金浦市場基洞(チャンギドン)のマンションでAさん(37)と息子のB君(8)、Aさんの母親のCさん(62)の家族3人が死亡しているのを、Aさんの夫と消防隊員が発見した。Aさんと別居中の夫は警察で「妻と二日前から連絡が取れず、この日家を訪ねたが、人の気配がなく119に助けを求めた」と供述した。
Aさんなど3人の遺体が発見された部屋の中では、自殺したものと推定される物品と情況も発見された。AさんとCさんがそれぞれ書いたと推定される遺書には「生活が苦しい」と生活苦を吐露した内容などが書かれているという。Aさんはときどき知人に「経済的に苦しい」と話していたという。Aさんは基礎生活受給(日本の生活保護に相当)対象などの緊急福祉支援の対象ではなく、福祉関連の相談もしたことがなかった。
最近、このような一家死亡事件が繰り返されている。先月クリスマスを翌日に控えた12月24日にも、大邱市北区(テグシ・プック)のある住宅で、40代の夫婦が10代の子ども2人とともに自ら命を絶った。この夫婦は200万ウォン(約18万6千円)足らずの給与で1億ウォン(約930万円)の借金を返済しながら暮らしていたため、経済的に窮したものと調査でわかった。この夫婦は、次上位階層(基礎生活受給対象の一つ上の階層。潜在的貧困層)の指定を申請したが、家賃の保証金2千万ウォンと中古トラックなどが財産とされ、緊急福祉受給対象にもならなかった。昨年11月19日には仁川市桂陽区(ケヤング)の賃貸住宅でも40代の女性と20代の子ども2人など4人が「経済的に苦しい」という内容の遺書を残して死亡した。家長だった40代の女性が失業した後、生活苦に苦しんでいたことが分かった。この家族は月24万ウォン(約2万2千円)の賃貸料支援を受ける住居受給対象だったが、健康保険料滞納や電気・水道の供給停止などがなく、政府が2014年の「松坡三母娘事件」以降導入した危機家庭発掘システムから漏れた家庭だった。同月に発生した「城北洞(ソンブクドン)四母娘事件」は、健康保険料の滞納・公共料金の延滞など、危機の兆しがあちこちで見られたが、まともに助けを受けられなかったケースだった。
最近1年間で起きた一家心中は、知られた事件だけで18件あり、70人あまりが命を落とした。遺書などから把握した自殺の原因は、大半が「ひどい生活苦」と推定された。大邱や仁川の一家死亡事件のように、政府の公共扶助基準に満たないケースが多かった。
専門家らは、このような死の行列を防ぐためには福祉の死角地帯の主な原因と指摘されてきた扶養義務者の基準を廃止するなど、基礎生活保障制度の資格基準を緩和し、公共が積極的に介入する必要があると指摘した。ソウル大学のク・インフェ教授(社会福祉学)は、「基礎生活保障制度の資格基準が全般的に厳しく、一般の人はなかなか支援対象になれない」とし、「たとえ厳しい境遇に置かれた人を発掘しても、彼らに与えられる福祉の恩恵がない。扶養義務者の基準を廃止し、住居用財産の認定範囲を拡大するなど、現在の厳格な基準を緩め、希望を抱かせるべきだ」と話した。扶養義務者基準とは、受給基準に合致しても一定以上の所得・財産を持つ親や子どもがいれば、生計給与・医療給与を受けられないようにした制度だ。
中央大学のキム・ボムジュン教授(社会福祉学)は、「経済的困難に直面すると、精神的にも危うい状況に置かれるようになる」とし、「自殺を防ぐためには、所得保障とともにメンタルヘルス関連の福祉サービスなどを提供することも重要だ」と強調した。