昨年、韓国の自殺率が5年ぶりに増加傾向に転じたという。今年に入ってから7月までは昨年同期より8%減少したというから、短期間の上下よりも全般的な水準と中長期的な傾向を重視すべきだろう。韓国の自殺率は2005年以降、2017年を除いて経済協力開発機構(OECD)で1位から落ちたことがない。自殺の原因を一つや二つに絞ることはできないが、韓国社会が誤った方向に進んでいることだけは明らかだ。
24日の統計庁の発表を見ると、昨年自ら命を絶った韓国国民は1万3670人で、1日平均37.5人だった。自殺率(人口10万人当たりの自殺者数)は26.6人だった。死亡原因のうち、疾病の次に大きな割合を占める。保健福祉部は昨年自殺率が再び上昇したことについて、有名人の自殺を真似る「ウェルテル効果」と関連づけて説明している。有名人が自殺した数カ月間に自殺者数が増えたのは事実だが、これも自殺潜在群がいたからこそ起きたと見るべきだ。社会の構成員を自殺に追い込む構造を解決することこそ肝要だ。
10代は成績と進学が、20~50代は経済的困難が、60歳以上は疾患が自殺動機の中で最も大きな比重を占めるという。10代は休息権さえ奪われたまま、世界で最も熾烈な入試競争に追い込まれており、労働者は最悪の不安定雇用と貧富の差を経験している。所得水準と自殺率の相関関係も高い。高齢化の速度、高齢者の貧困率も世界で最も高い。すべて世界最高の自殺率を裏付ける数値だ。
保健福祉部の調査結果によると、「自殺に対する許容的な態度」も日増しに高まっているという。これもまた、関係断絶と社会に対する「希望なし」が反映されたものと見るべきだ。無限競争と勝者独占の構造、脆弱なセーフティーネットの画期的な改善なくしては、いかなる対策も対症療法に過ぎない。政府がこの状況をどれほど深刻に考えて対応しているのか、振り返ってみる必要がある。