この数年、徐々に下がっていた自殺率が昨年、大幅に増加に転じた。これによって経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で2位に落ちていた自殺率が再び1位に浮上する見通しだ。特に10代と30~40代など若い年齢層で自殺率が大幅に上昇した。
24日に統計庁が発表した「2018年死亡原因統計」によると、昨年自殺による死亡者数は1万3670人で、前年に比べ1207人増加した。1日平均自殺者数は37.5人だった。人口10万人当たりの自殺による死亡者を意味する自殺率は26.6人で、前年に比べ9.5%(2.3人)増加した。
自殺は10~30代の死亡原因で1位、40~50代では2位だった。年齢別で見ると10代(22.1%)、40代(13.1%)、30代(12.2%)の自殺率が大きく上昇。50代(8.2%)と60代(8.9%)、70代(0.2%)では増加幅が全体平均を下回り、80歳以上の高齢層では自殺率が0.4%減少した。性別による自殺率は男性が38.5人で、女性(14.8人)より2倍以上高かった。
これにより韓国はOECD加盟国中、自殺率で再び1位に上がることとなった。OECDは国ごとの年齢構造の影響を排除した年齢標準化自殺率によって国際比較を行っているが、韓国の年齢標準化自殺率は2018年に24.7人と、OECD平均11.5人の2倍を超えることが分かった。韓国は2005年以降13年間にわたってOECD加盟国中、自殺率が1位を占めた。昨年は自殺率が高いリトアニア(24.4人、2017年時点)がOECDに加入し、2位に下がっていた。しかし、今年自殺率が急上昇し、再びOECD 1位に上ったわけだ。
政府は、昨年は有名人の自殺事件が多かったことが影響したと控えめに分析した。有名人の自殺に同調するいわゆる「ウェルテル効果」が現われた可能性があるということだ。中央自殺予防センターのペク・ジョンウセンター長(慶熙大学病院精神健康医学科教授)は、「ある人が死を選ぶ際には複合的な要因が作用する。例えば、経済的困難に直面した後、家族との関係が悪化し、本人の健康状態も悪化するなどの問題が重なると、死にたいと思うようになるが、そんな時に好きな有名人が自ら命を絶つと、極端な選択をする傾向がある」と語った。
加えて、自殺を肯定的に評価する許容的な態度も大きくなった。昨年全国の成人1500人を対象に行われた「自殺実態調査」の結果を見ると、苦痛を強いられている状況で、自分や他人の自殺を容認する態度は2013年の2.96(5点満点)から2018年には3.02に上昇した。自殺を受け入れなければならない状況があり得るという認識も2.43から2.61に大きく上昇。ますます広がる所得格差も自殺死亡率上昇に影響を与えているものとみられる。市民1500人のうち、自殺を考えたことがある人の割合は18.5%で、その中では自殺を考えた理由として経済的な問題(34.9%)を挙げた人が最も多かった。続いて家庭生活の問題(26.5%)、成績・試験・進路問題(11.2%)の順だった。
2018年、政府は「自殺予防国家行動計画(2018~2022年)」を立てるなど、国家レベルで自殺問題に取り組んでいるが、専門家らは相変わらず自殺や貧困、メンタルヘルスなどの問題に対する統合的アプローチが弱いと指摘する。ペク氏は、「OECD加盟国の自殺率が低いのは、経済的困難に陥った人々が支援を受けられる福祉サービス、メンタルヘルスに問題が生じれば治療を受けられる機会の提供など、非常に多くの努力をしているためだ」とし、「韓国の場合、危機に直面し孤立した人々が助けを求めることができる地域社会システムは依然として不十分だ」と語った。保健福祉部はこの日、説明資料を出して、「今年7月までは、昨年同期と比較して自殺率が8%前後の減少傾向を示している」とした。
一方、昨年の死亡者総数は29万8820人で、死亡原因統計をとりはじめた1983年以降最も多かった。10大死亡原因は悪性新生物(がん)、心臓疾患、肺炎、脳血管疾患、自殺、糖尿病、肝臓疾患、慢性下気道疾患、アルツハイマー病、高血圧性疾患の順だった。アルツハイマー病は、前年の11位から9位に上昇。肺炎も4位から3位に上昇した。高齢化傾向によって代表的な老人性疾患が死亡原因となるケースが増えたものと分析される。