憲法裁判所は12月27日、朴槿恵(パク・クネ)政府が締結した日本軍「慰安婦」被害者問題の合意(以下12・28合意)は政治的合意に過ぎず、被害者の基本権を侵害しないとして憲法訴願審判対象ではないと判断した。
憲法裁はこの日、カン・イルチュルさんなど「慰安婦」被害者29人と家族12人が外交部長官を相手に「12・28合意が違憲であることを確認してほしい]として提起した憲法訴願事件で、裁判官の全会一致意見で却下を決定した。却下は憲法裁の審判対象でないと判断する時、本案の審理を行わず下す処分だ。
2015年12月28日、韓日両国政府は韓国政府が設立する被害者支援財団に日本政府が10億円(約107億ウォン)を拠出する代わりに「慰安婦」問題を最終的・不可逆的に終わらせることに合意した。しかし、被害者を排除した合意に対し激しい批判が提起され、民主社会のための弁護士会(民弁)は2016年3月、被害者と家族を代理して違憲確認の憲法訴願を出した。
3年9カ月の審理の末に、憲法裁は12・28合意が法的拘束力のある条約ではなく政治的合意に過ぎないと判断した。憲法訴願の対象になるには、被害者の権利・義務に影響を与える公権力の行使がなければならないが、12・28合意は政治的合意に過ぎないということだ。憲法裁は12・28合意が書面ではなく口頭での合意であり、国務会議(閣議)の審議や国会の同意など、憲法上の条約締結手続きを経ておらず、合意内容に謝罪内容が含まれているとしても被害者らの被害の回復に向けた法的措置ではなかったと説明した。
憲法裁はこのような理由から、12・28合意が被害者の対日賠償請求権など基本権に影響を及ぼさないと判断した。憲法裁は「合意により被害者の権利が処分されたり韓国政府の外交的保護権限が消滅したとみなすことはできない。被害者の法的地位が影響を受けると見ることはできない」と述べた。12・28合意は法的拘束力がなく国民の基本権など法的権限が侵害される可能性がないため、憲法訴願の対象にならないということだ。
民弁のイ・ドンジュン弁護士は判決直後、記者団に対し「非常に残念さが残る。被害者たちが(合意によって)受けた傷を癒せる機会になりえたのに、その部分を憲法裁が果たせなかった」とし、「憲法裁の決定で12・28合意が条約でもなく公式な交渉レベルに至っていないという点が認められたため、政府が合意の性格、効力を考慮して合意を破棄したり再交渉する過程に進むことを要求するきっかけとなるだろう」と話した。
一方、憲法裁はこの日、サハリン強制徴用被害者2296人が対日請求権を巡る日本政府との紛争で韓国外交部がこれを解決するために努力していない(不作為)として出した憲法訴願も却下した。憲法裁は「2013年6月に韓日請求権協定による韓日外交当局間協議を開催することを提案し、2014~2016年に幹部面談と実務協議を通じて誠意ある対応を促進してきており、現在もこのような基調が撤回されていない」と明らかにした。外交部が作為義務を履行していないとみなすことはできないということだ。被害者を代理した法務法人インアンドインのキョン・スグン弁護士は、「政府の形式的な努力を憲法裁が認めた。7年間審理した事件だが、却下の決定が出たのは残念だ」と話した。