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ムン議長、最高裁判決の無力化との指摘にも韓日首脳会談前に法案発議急ぐ

登録:2019-12-11 06:26 修正:2019-12-11 07:53
ムン議長、今週中に法案の発議を推進 
今月末の首脳間協議の“誘い水”になることを期待 

日本の謝罪なく慰労金だけ…訴訟の取り下げが条件 
「勝訴予想被害者」の支給基準も曖昧 
被害者たち「拙速に立法するな」と反発
大田地域の市民団体が今月9日午前、大田市西区屯山洞強制労役労働者像の前で「ムン・ヒサン案」の即時撤回を求める記者会見を行っている//ハンギョレ新聞社

 ムン・ヒサン国会議長が韓日企業の寄付金と国民の自発的募金で財団を作り、強制動員の被害者に慰謝料(慰労金)を支給する、いわゆる「ムン・ヒサン案」を今週発議する予定だ。裁判で勝訴した日帝強制動員被害者たちと関連市民社会団体の反発にもかかわらず、23~24日の韓中日首脳会議期間中の開催を調整している韓日首脳会談に合わせて推進している格好だ。「ムン・ヒサン案」には日本の謝罪と責任の認定が盛り込まれておらず、被害者たちが訴訟を放棄しなければ慰謝料(慰労金)を受け取れない仕組みであるため、20年間にわたる法的闘争の結果である韓国最高裁(大法院)の判決を無力化するという批判の声が高まっている。韓国政府が公式的に認めた被害者約22万人のうち、訴訟に関わった一部だけが支援を受けられるなど、公平性をめぐる議論も巻き起こるものとみられる。

 ムン議長が法案発議を急ぐのは、韓日首脳会談を念頭に置いているからだ。日本が対韓国輸出規制問題の解決に向けた対話に乗り出すことを条件に、先月22日「韓日軍事情報包括保護協定」(GSOMIA)の終了が見送られたが、両国の対立の主な争点である“強制動員”が解決されない限り、韓日関係が転換点を迎えられないという判断に基づいている。国会議長室関係者は「韓日首脳が議論する際、『ムン・ヒサン案』が誘い水の役割を果たせると見ている」としたうえで、「日本の謝罪を明文化した1998年の『金大中(キム・デジュン)・小渕宣言』(日韓共同宣言-21世紀に向けた新たなパートナーシップ)を再確認し、両国が和解のきっかけを作る『文在寅(ムン・ジェイン)・安部宣言』を期待する」と述べた。そして、韓日関係が改善すれば、両国企業の寄付金、国民の募金にも弾みがつくだろうと見通した。

 ムン議長は強制動員と関連し、二つの法案を準備している。主に推進する「記憶・和解・未来財団法」(財団法)の制定案と「対日抗争期強制動員被害の調査および国外強制動員の犠牲者等の支援に関する特別法」(強制動員特別法)の改正案だ。当初、強制動員特別法の改正案一つで「ムン・ヒサン案」を推進しようとしたが、訴訟にかかわった被害者に合わせて新しい法律を作ることにした。

 支援の対象は、韓国最高裁の判決によってすでに執行力が生じた国外強制動員の被害者や裁判で勝訴が予想される被害者と遺族だ。現在、訴訟に乗り出した被害者たちは約1千人程度だが、このうち約700~800人の訴訟はまだ始まっていない。国会議長室関係者は、「訴訟中かこれから訴訟を準備する被害者がすべて対象になる。訴訟に入った被害者は訴訟を放棄すれば申し込める」とし、「財団で審査を経て慰謝料を支払う方式だ」と述べた。裁判には時間がかかる上、費用の問題もあり、訴訟の放棄をめぐって被害者の間で混乱が予想される。また、「ムン・ヒサン案」に同意しない被害者が引き続き訴訟を進める場合、日本企業の現金化問題などは依然として残るため、根本的な解決策ではないという意見もある。

 慰謝料の審査と支給をめぐっても、公平性をめぐる議論が予想される。三菱重工業の訴訟などの代理人を務めるイ・サンガプ弁護士は、「すでに法律に基づいて政府から被害者と認められているのに、再び審査を行うというのは話にならない」とし、「特に一部の訴訟関連の被害者を対象に支援するというのは平等権の侵害だ」と批判した。韓国政府が公式に認めた強制動員被害者だけで21万8639人に達する。労務者が14万8961人、軍人が3万2857人、軍属が3万6702人、慰安婦などその他が119人だ。「勝訴が予想される被害者」など、支給基準も曖昧だ。日帝強制動員・平和研究会のチョン・ヘギョン研究委員は、「これまで支援が不十分で、被害者の間でも慰謝料は非常に敏感な問題だ。曖昧な基準で選別して支援した場合、新たな法的紛争が生じるだろう」と懸念した。

 財団をめぐり、「税金の無駄遣い」という批判も避けられない。現在、行政安全部傘下の「日帝強制動員被害者支援財団」があるが、「ムン・ヒサン案」が成立すれば、別途に「記憶・和解・未来財団」が設立される。強制動員関連財団が二つになるわけだ。国会議長室関係者は「慰謝料の支給などがあり、当面は別途運営せざるを得ない。今後どうするのかについては議論が必要だ」と述べた。

 ムン議長は、財団法とともに強制動員特別法の改正案も準備中だ。現在、国会に発議された強制動員法案を併合し、改正案を作成する計画だ。軍人・軍属への支援と2015年になくなった強制動員調査委員会を再び発足させる案を推進すると明らかにした。しかし、政府組織を新たに作らなければならず、軍人・軍属の支援に相当な財政が必要とされるだけに、国会で議決される可能性は不透明であり、「色を出しただけ」と指摘されている。

 民族問題研究所のキム・ヨンファン対外協力室長は、「強制動員問題は拙速に処理できる内容ではない」とし、「一旦立法を中断し、多様な意見聴取を経て総合的な対策を講じなければならない」と話した。

キム・ソヨン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/politics/diplomacy/920355.html韓国語原文入力:2019-12-11 02:30
訳H.J

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