訪韓中のスティーブン・ビーガン米国務省北朝鮮政策特別代表が16日、北朝鮮に対して会おうとの提案を公開の場で出し、10月初めのスウェーデン・ストックホルムでの交渉が決裂した後に膠着状態に陥った朝米交渉の火種が生き返る可能性に注目が集まっている。特にビーガン代表が「妥当性のある段階」「柔軟性」「バランスの取れた合意」など、北朝鮮式アプローチ方法を受け入れるかのような発言をした点が目立つ。ただし、これまで北朝鮮が要求してきた「新しい計算法」の具体的な内容は提示しておらず、北朝鮮が実際に対話に出てくるかは未知数だ。
この日、ビーガン代表は韓国外交当局者と協議を終えた後、記者団の前で「私たちはあきらめない」とし、朝米交渉の進展に対する意思を強調した。特にビーガン代表が使った「妥当性のある段階」(feasible steps)という表現に注目する必要がある。ビーガン代表はこの日の記者会見で「私たちは(朝米)両方のすべての目標を満足させる『バランスの取れた合意』のために、交渉で『妥当性のある段階』と『柔軟性』(flexibility)を持った多くの創意的方法を(北朝鮮に)提供している」と明らかにした。
ビーガン代表のこの日の発言は、北朝鮮の非核化措置とそれに対する米国の制裁緩和など「対北朝鮮敵対視政策」の撤回が、段階的・並行的・相補的な方法で交換されることがあり得るという意味と解釈される。ストックホルム朝米実務交渉代表として出席したキム・ミョンギル北朝鮮外務省巡回大使が、9月20日の談話で、ドナルド・トランプ大統領が言及した「新しい方法」を取り上げて論じ、「信頼を築いて実現可能な(feasible)ことから一つずつ段階的に解決していくのが最上の選択という趣旨ではないかと思う」と述べたことに照応する内容だ。
朝米交渉に精通した政府関係者は「朝米が直面した対話断絶の局面を打開してみようという米国なりの方向性を最大限に誠意をもって表現したもので、『交渉が再開されたら、北朝鮮のすべての関心事を議論することができる』という(イ・ドフン朝鮮半島平和交渉本部長の)言葉に繋げられる」と説明した。ホン・ミン統一研究院北朝鮮研究室長は「北朝鮮は、非核化措置と米国の制裁緩和および安全保障など相応の措置を、等価的かつ公正に反映して段階的に実践しようと要求しているが、米国の立場は初期に一括的な合意をした後、それ以後に各段階別に相応の措置を行い、それさえも等価交換ではないこともあり得るということ」として「今回のビーガン代表の発言は、北朝鮮のアプローチ方法を受け入れようとする進展した発言と見られる」と指摘した。
一方、この日ビーガン代表は、金正恩(キム・ジョンウン)北朝鮮国務委員長に対するトランプ大統領の信頼を確認し、交渉の進展がトランプ大統領の委任によることを強調して、北朝鮮が対話の場に出てくることを繰り返し促した。彼は「トランプ大統領は金正恩委員長も私たち(米国)のような目標を達成するために努力していると確信していると繰り返し話している」とし、「大統領の指示により、我々交渉チームはその目標を達成するために北朝鮮と仕事をする準備ができている」とした。
これまで北朝鮮の官僚らが明らかにした対米メッセージに対して、ビーガン代表は「敵対的で否定的であり不必要」だとし、「朝米が平壌(ピョンヤン)とニューヨーク、ワシントン、シンガポール、ストックホルム、ハノイ、板門店(パンムンジョム)などで行った協議内容や精神を反映しないでいる」と指摘した。
北朝鮮がさらなる軍事行為を自制することを促す声も上げた。ビーガン代表は北朝鮮の13回目の新型戦略兵器の実験と、今月7日と13日の東倉里(トンチャンリ)の西海衛星発射場で実施したミサイルエンジン燃焼と推定される実験に対して、「朝鮮半島の平和に役立たない」とし、「だが、大きく遅れることはなかった。よりよい方法を選ぶ能力は私たち自身の手にある」と説得した。
ビーガン代表は、北朝鮮が米国の態度の変化がないならば「新しい道」に行くとして提示した「年末の期間」に言及して、「米国は締切の期限を設けていない」と釘を刺した。彼は「クリスマスプレゼント」を警告した北朝鮮の言及を念頭に置いたかのように、「年間で最も神聖な休日」であるクリスマスが「平和になることを望む」として、北朝鮮が挑発行為を自制することを願うというメッセージも出した。