「私の辞任を持って、検察改革の成功的な完遂が可能な時が来たと思います。検察改革のための“火付け役”はここまでです」
チョ・グク法務部長官が退いた。10月14日、長官に就任から35日後の電撃辞任だった。わずか3時間前まで、彼は特別捜査部(特捜部)の縮小を骨子とした検察改革推進状況を発表し、検察改革の青写真を具体化した。「私を踏み台にして、検察改革が成功するよう、最後まで見守ってほしい」と述べたチョ長官は、自ら“跳躍台”になることで、検察改革を「逆らうことのできない歴史的課題」として残し、退場した。
彼の言葉通り、チョ長官は「火付け役」としての役割を忠実に果たした。検察の捜査を受ける史上初の法務部長官だった彼は、就任直後から検察改革に集中した。就任当日、改革実務を担当する「検察改革推進支援団」を発足させ、検察改革案を法務部に提案する第2期法務・検察改革委員会(改革委)を構成した。改革委は慌ただしく動き、検察の直接捜査の縮小や最高検察庁の検事による「セルフ監察」の廃止などの勧告案を発表した。
チョ長官の素早い行動に検察も動き始めた。「検察改革を防ぐため、チョ長官を捜査している」と疑われた検察は、捜査の正当性を確保するためにも、検察改革に賛同せざるを得なかった。避けられない改革なら、自ら主導権を握ると決心したようだった。ユン・ソクヨル検察総長は特捜部の縮小や公開召喚と深夜取り調べの廃止、専門公報官の導入など、検察独自の改革案を打ち出した。
公開召喚の廃止の「第1号の恩恵者」がチョ・グク一家になるなど、チョ長官の検察改革が本人の捜査に対する利害と衝突するという指摘も少なくなかった。しかし、確かなのは、パク・サンギ元法務部長官が2年以上在任しながらもあまり進展が見られなかった検察改革の速度を、チョ長官が35日間でかなり引き上げたことだ。その結果、10月22日、特捜部の廃止・縮小を骨子とする「検察庁事務機構に関する規定」の一部改正令が公布・施行されたのに続き、31日には長時間・深夜の取り調べの制限などを盛り込んだ「人権保護捜査規則」が公布され、12月から施行される。
問題はこれからだ。チョ長官は去り、法務部長官の席は依然として空いている。改革委は検察の「事件割り当てシステムの改善」など、重要な勧告案を相次いで発表しているが、チョ長官の辞任以降、法務部はこれについて具体的な立場を明らかにしていない。改革委の勧告に素早く反応した従来の姿とはかなり異なる。これまで法務部は、改革委が勧告案を出せば、長官主宰の幹部会議を開き、勧告案をどのように受け入れるか、迅速に決めてきた。
「チョ長官の時は、長官が決定を下し、責任も長官が負った。今は責任を取る人がいない。当分は検察改革も遅々として進まざるを得ないだろう」。ある法務部関係者はこのように語った。キム・オス法務部次官が長官代行を務めているが、検察改革と関連して、責任ある決定を下す権限はないということだ。チョ長官の退任後、改革委が勧告した(事件)割り当てシステムの改善と関連しても、懸念の声があがっている。別の法務部関係者は、「事件の割り当ては、検察の上部が事件を“コントロールする” 第1段階だ。検察としては最も痛いところを突かれた。重要な事案について法務部が躊躇している間に、検察は独自の割り当てシステムの改善案を打ち出すだろうし、適当に妥協するのではないかと懸念している」と述べた。1日現在までも文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、法務部長官候補を指名していない。
妻のチョン・ギョンシム東洋大学教授とチョ前長官の弟を逮捕した検察は、近く一人残されたチョ前長官を召喚する方針だ。チョン教授が未公開情報を利用して借名で株式を購入したと疑われる時点で、チョ前長官の口座から数千万ウォンが引き出された情況が最近明らかになり、チョ前長官も検察の起訴は避けられないものと見られる。一部では、チョン教授が株式を相場より安く購入した事実をチョ前長官が知っていたなら、「収賄罪」まで適用できるという主張もある。
近く検察の召喚により「チョ・グク」が再び登場する。チョ前長官が起訴されれば、ろうそくが再び燃え上がる可能性があり、検察改革も大衆の熱い関心事になるかもしれない。チョ前長官の召喚や起訴が緩んだ検察改革の手綱を引き締めるきっかけになるだろうか。チョ前長官は再び検察改革の「火付け役」になれるだろうか。