国政壟断の事件の核心人物のチェ・スンシル(本名チェ・ソウォン)氏が30日に開かれた破棄差し戻し審初公判で、無実を訴えた。チェ被告が法廷に立ったのは1年2カ月ぶりだ。チェ氏は有罪・無罪を再び争うとして、朴槿恵(パク・クネ)前大統領を証人申請した。
同日午前、ソウル高裁刑事6部(裁判長オ・ソクジュン)の審理でチェ氏の破棄差戻し審初公判が開かれた。黒いコートを着て法廷に登場したチェ氏は、発言の機会を要請した後、A4用紙三枚に自筆で書いた文書を5分にわたり読み上げた。「この裁判が私に残された唯一の機会だ」と切り出したチェ氏は、「私は決して陰の実力者ではない。報道された数百億ウォン台の隠匿財産とペーパーカンパニーは、フェイクニュースに過ぎない。私は20年以上幼稚園を運営しながら、平凡な人生を送ってきた。大統領を利用して個人的な私益を追求したこともない。天に誓える」と抗弁した。さらに、「これまでの苦しみは言葉では言い表せないほどだ。検察の横暴な家宅捜索と捜査で、(国が)社会主義を越えて独裁主義に向かっている。幼い娘と孫が、一生苦痛の中で暮らしている。部分的にでも必ず無実を明らかにしてほしい」と裁判所に訴えた。
チェ氏側は特定犯罪加重処罰法違反(賄賂)や朴槿恵前大統領との共謀関係、職権乱用の容疑まで争う意向を明らかにした。最高裁が有罪趣旨と判断した容疑について、再び争うということだ。チェ・スンシル氏側の弁護人は、「違法行為の事実を確認する前に(朴槿恵大統領が)弾劾された。判決はその後に出た。順序が逆になった。この事件の核心は、検察と特検が朴前大統領を弾劾に追い込むために収賄罪を着せたこと」だと主張した。また、「公務員ではないチェ氏を職権乱用の罪で処罰するためには、公務員の朴槿恵前大統領と共謀関係が認められなければならない。この部分はこれまで審理がきちんと行われなかった」と主張した。
チェ氏は同日、賄賂と判断された馬3頭を追徴してはならないという主張も展開した。賄賂で受け取ったとされる馬をサムスンに事実上返したから、「刑を軽くしてほしい」と訴える一方、形式上、馬の所有・管理者がサムスンであるため、自身に対する馬3頭購入費の追徴は不適切だということだ。乗馬支援を名目にサムスンがチェ氏に渡した馬3頭は、現在サムスン電子乗馬団が管理しているという。チェ氏は2審裁判で懲役20年、罰金200億ウォン(約18億4千万円)に加え、馬三頭の購入費(34億1797万ウォン)を含めた追徴金(70億5281万ウォン)を言い渡された。
チェ氏側は破棄差戻し審の証人として朴前大統領と娘のチョン・ユラ氏、サムスン電子のパク・サンジン元社長、ソン・ソクヒJTBC社長など4人を申請した。
特検と検察側は「最高裁の判断は確定力を持つ。チェ氏が出した上告理由は、すでにすべて退けられた。被告人がこれ以上争えず、破棄差し戻し審の裁判所も他の判断はできないという最高裁判所の判例がある。量刑証人を除く残りの証人申請は理解できない」と述べた。ソウル高裁は「最高裁の判決は事実上、法律上の隷属力がある」と説明しながらも、証人採択の可否は後日決定するとしている。
同日、チェ氏とともに差し戻し審の裁判を受けたアン・ジョンボム元大統領府経済首席は、これといった立場を明らかにせず、「量刑」だけを争う意向を示した。チェ氏の次の裁判は12月18日に開かれる。