セウォル号事故当日、朴槿恵(パク・クネ)大統領がチェ・スンシル氏の夫チョン・ユンフェ氏と一緒にいたという疑惑を報じて、韓国検察に起訴された産経新聞の加藤達也ソウル支局長の一審裁判を控え、当時大統領府と裁判所事務総局が共に「有罪判決」を検討した事実が確認された。同事件は大統領府を意識した検察の無理な起訴という批判が多かったが、大統領府が裁判所の判断を通じて処罰の正当性を“立証”しようとしたものとみられる。当時、裁判所は無罪を言い渡した。
22日、ハンギョレの取材結果、2015年11月にクァク・ビョンフン当時大統領府法務秘書官はイム・ジョンホン元裁判所事務総局次長に「最高裁の判決を参照してください」というショートメッセージと共に、名誉毀損罪の判例を送ったという。同時期、イム元次長の指示を受けた事務総局企画調整室審議官(判事)は、加藤氏の裁判に関連した名誉毀損罪の検討報告書を作成し、大統領府法務秘書官室行政官に送ったという。クァク元秘書官は判事として在職していた頃、裁判所事務総局の企画担当官、裁判研究官を務めた。
当時はソウル中央地裁で行われていた1審弁論が全て終わり、判決だけを残した時期だった。当時、大統領府と事務総局は、有罪▽無罪判決を下し、不適切さを指摘する案▽大統領が「処罰を望まない」との意思を表明し、処罰しない案など、多くのシナリオを検討したという。
イム元次長は、クァク元秘書官とショートメールで連絡を取り合った当時、イム・ソングン当時ソウル中央地裁刑事首席部長(現ソウル高裁部長判事)を通じて、裁判長のイ・ドングン部長判事に「引用された噂が虚偽だという点が判決文に確実に盛り込まれなければならない」と指示したという。同年12月に下された1審の判決で、裁判所は「大統領のセウォル号沈没事故当日の足取りは公的関心事案に当たるため、言論の自由が幅広く認められるべきだ」として無罪を言い渡しながらも、「(該当報道は)虚偽事実であることが明らかだ。大統領を嘲弄し、韓国を戯画化した内容を作成しながらも、事実関係を確認しなかったのは適切ではない」と付け加えた。
一方、イム部長判事は2015年の双龍自動車の集会時間でも関与した情況が確認された。イム部長判事は公務執行妨害などの容疑で起訴された「民主社会のための弁護士会」所属の弁護士らに対する裁判を担当していた刑事合意部の判事らに対し、「(互いに)異なる結論が出ないよう協議するよう」指示していたことが分かった。民弁弁護士らは、2013年の双龍自動車関連集会で、警察の秩序維持線の退去を要求し警察官の腕をつかんで引っ張った容疑で起訴された。これらの事件を担当した両裁判部はそれぞれ全員に無罪を言い渡したが、イム部長判事は判決文の量刑理由から「警察の職務執行が適法とは言えない」など、被告人に有利な部分と(警察に)不利な内容をすべて削除するよう要求したという。ある判事出身の弁護士は「(同じような事件でも)判事によって量刑が違いすぎるという批判を避けるため、量刑協議を提案する場合はあっても、結論を合わせろという指示はしない。判事は各々が憲法機関なのに、すべての判決が同じ結論というのは話にならない。明白な裁判介入」だと指摘した。
これに先立ち、民弁は声明を通じて「イム部長判事が宣告後、個別に当該裁判部に外圧を加え、判決文の一部の文言を削除するよう求めており、実際の外圧によって判決文の文言が削除された事実が明らかになった。検察は徹底的に捜査し、厳罰に処すべきだ」と要求した。また「このようなことが繰り返されないよう、各裁判所の首席部長制度および高等裁判所の部長判事制度のような官僚的要素を廃止する制度改革案を講じなければならない」と求めた。