韓国の最高裁判所による強制動員被害の初の確定判決から1周年を迎え、日本の市民団体と学者たちが被害者の人権回復に向けた努力が必要だという声明を相次いで発表した。
強制動員被害者を支援する日本の市民団体「強制動員問題解決と過去清算のための共同行動」と「日本製鉄元徴用工裁判を支援する会」は30日、「直ちに強制動員被害者の人権回復を」という声明を発表した。
両団体は声明で、1年前の最高裁判決について「国際人権規範にも合致する画期的な判決でした」と擁護した。そして「日本の司法は、企業の不法行為を事実認定はしながら被害者の請求を棄却しましたが、韓国の司法は植民地支配下の反人道的な不法行為に対する『強制動員慰謝料請求権』は日韓請求権協定の対象外であるとして請求を認めたのです。20年以上にわたる被害者たちの闘いは報われました」と評価した。
両団体は、安倍晋三首相が韓国最高裁の判決について「国際法に照らしてありえない判決」と非難し、日本の多くのメディアがこれに追従する報道をしていることに懸念を示した。強制動員の被害者が 「『植民地支配と侵略』によって『多大の損害と苦痛』を被った被害者であるという事実、朝鮮半島植民地支配の歴史に向き合うことなく、ひたすら韓国を敵視する動きに憂慮を禁じえません」とした。また、初の賠償確定判決の被告人である日本製鉄が安倍政権の圧力に屈し、いまだ判決を履行していないとし、「不法な強制動員によって利益を得た当の企業が 自らの企業行動規範=『各国・地域の法令を遵守』に反し、その責任を果たさないことは許されません」と記した。
両団体は被害者に残された時間はないとし、「大法院判決は日韓両国政府が妥協の産物として結んだ日韓請求権協定が曖昧にして長年放置してきた強制動員被害者の救済を命じました。被害者のために日韓両政府、そして強制動員に関わった企業が知恵を出し合って一日も早く問題解決を図ることを強く求めます」とした。
これに先立つ29日には、朝鮮半島の歴史を研究する日本の学者の集まりである「朝鮮史研究会」が「韓国大法院判決への日本政府・当該企業・メディアの対応に対する声明」を発表した。同会は会員約500人を擁する日本最大の朝鮮半島史研究者団体。この声明で同会は、日本政府が強制動員問題について「『解決済み』だ、『国際法違反』だとして、韓国政府に対して抗議を行いました。朝鮮史研究の蓄積と学術的観点からみて、『解決済み』とする日本政府の主張は歴史的な事実を無視するもの」と指摘した。
同会の研究者たちは「数多くの朝鮮人が戦時下での『募集』『管斡旋』『徴用』などの政策にもとづいて強制動員され、厳重な監視の下で過酷な労働を強いられたことが明らかにされています」と指摘した。さらに韓日請求権協定についても、「『財産』『請求権』のみが議論され、…『完全かつ最終的に解決された』こととされました。日本の植民地支配責任・戦争責任と強制動員被害者の人権侵害という論点については交渉の議題にはなりませんでした」と明らかにした。
研究者たちはまた「日本政府と当該企業は、植民地支配責任の観点に立って、その過去を克服するために、植民地支配下での加害・被害の事実と法的責任を認めて謝罪と賠償を行い、被害と加害の事実について将来世代に教育する、という責務を果たす必要があります」と指摘した。