危機の金剛山(クムガンサン)に新たな活力を吹き込む解決策探しに、南北が拍車をかけている。韓国政府は28日、「北朝鮮側が提起した問題を含め、金剛山観光問題を協議するための(局長級の)当局実務協議を都合のいい時期に金剛山で開催」しようと北側に提案した。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が「南側の関係部門と合意して」観光施設を撤去するよう指示(23日)したのを受け、北側が「合意される日に訪朝撤去+文書協議」を提案(25日)してから三日後のことだ。協議が実現すれば、昨年12月14日の第2次体育(分科)会談以来、10カ月ぶりの初の南北当局による協議となる。
北朝鮮が応じるかどうかによって、南北関係全般の進路がはっきり分かれる見通しだ。会談が実現すれば、金剛山観光の活性化策だけでなく、冷え切った南北関係を解決する場が設けられる。北朝鮮が会談を拒否すれば、金剛山の南側施設の財産権保護問題を含め、様々な対立が激化し、南北関係の更なる悪化は必至だ。
政府が提案した会談は、局長級当局代表団に観光事業者が同行する方式だ。イ・サンミン統一部報道官は定例会見で「政府と現代峨山は28日午前、(開城)南北共同連絡事務所を通じて北朝鮮の朝鮮アジア太平洋平和委員会と金剛山国際観光局宛てにそれぞれ通知文を送った」とし、「南北当局による実務協議を提案し、観光事業者が同行すると通知した」と明らかにした。統一部-アジア太平洋平和委、現代峨山-金剛山国際観光局を協議の相手に想定したアプローチだ。北側が25日、金剛山国際観光局の名前で統一部と現代グループにそれぞれ通知文を送ってきた方式と微妙に異なる。政府が統一部の通知文の宛先にしたアジア太平洋平和委員会は、1998年に現代と金剛山観光協力事業に合意した北側の署名主体であり、金英哲(キム・ヨンチョル)労働党副委員長が委員長を務めている労働党の外郭機関だ。
北側は金正恩委員長の「(北側主導の)総合国際観光文化地区構想」を前提に、南側施設の「訪朝撤去」を通知してきたが、政府は南北協力方式の金剛山観光の活性化を大前提にした「一部老朽施設の撤去+新戦略に合わせた大々的な改修・補修」などを念頭に置いている。イ・サンミン報道官が「韓国企業の財産権に対する(北側の)一方的な措置は国民感情に反し、南北関係を損なう恐れがあるだけに、南北間で十分な協議を経て合理的に解決していく必要がある」と強調したのもそのためだ。例えば、海路観光の中止で使い道がなくなった金剛山長箭(チャンジョン)港のバージ船方式の海金剛ホテルは適切な方式で撤去し、温井閣やゴルフ場などは南北が合意する新たな観光活性化戦略に合わせて改善補修しようという構想だ。現代峨山が対北通知文で「北側が提起した問題とともに、金剛山地区の新しい発展方向に対する協議を提案した」とイ・サンミン報道官が伝えた。
政府は、金剛山に新たな命を吹き込む「創意的解決策」作りに没頭している。政府が検討する「創意的解決策」は、条件・環境と内容の2つの側面に分けて検討する必要がある。政府は(1)国際情勢(=対北朝鮮制裁と米国という要因)、(2)南北協議(=北朝鮮当局の同意)、(3)国民的な共感(=世論の支持確保)などを条件・環境要因に挙げている。内容は「変化した環境」、すなわち強力な対北朝鮮制裁と金正恩委員長の新たな観光戦略を念頭に置き、「南北協力空間として金剛山を最大活用する」案だ。具体的には、1998年11月の観光開始以来、金剛山地域が南北協力の場として築いてきた三つの機能、つまり「観光+離散家族再会+社会文化交流の場」の効果的配合により、国際制裁に違反せず、事実上の観光事業の再開・活性化の効果を得ようという構想だ。イ・サンミン報道官も「観光や離散家族再会、社会文化交流など、金剛山地域の三つの空間機能を総合的に考慮したうえで、創意的な解決策作りを始める」と述べた。
観光は、2008年7月に中止されるまで、現代峨山が主導してきた大規模な団体観光方式の再開は困難だ。これまでの観光の見返りの支給方式が、国連の制裁対象であるいわゆる「大量現金」(バルクキャッシュ、大量破壊兵器の開発に使われる危険のある大量現金)に該当しかねないからだ。文在寅(ムン・ジェイン)大統領が25日、大統領府担当記者懇談会の際、「既存の観光方式は、(国連)安保理制裁のため、そのまま維持することが難しい面がある」と述べたのもそのためだ。政府は「大量現金」の議論を回避できる「個別観光」を優先的な代案として検討・推進している。カン・ギョンファ外交部長官が24日、記者会見で「個別観光は制裁対象ではない」と口火を切った。
政府はいかなる方法であれ、金剛山地域に大勢の人々が足を運べば、「観光の再開・活性化」の効果を収められると考えている。政府が金剛山の離散家族面会所などを活用した離散家族再会と社会文化交流の活性化を「創意的解決策」に盛り込もうとしているのもそのためだ。実際、昨年8月に金剛山で離散家族再会行事が行われ、長期にわたる南北関係の停滞にもかかわらず、昨年一年間だけで金剛山で民族和解協議会(民和協)金剛山連帯行事(2018年11月3~4日)や金剛山観光20周年記念行事(2018年11月18~19日)、現代峨山創立20周年記念行事(2月8日)、南北民間団体の「南北共同宣言の履行に向けた新年連帯の集い」(2月12~13日)などが開かれた。
ただし、政府の「個別観光+離散家族再会+社会文化交流」の配合方式の「創意的解決策」が現実化するためには、制裁免除などと関連した米政府の説得と南北当局の合意という大きな山を越えなければならない。道のりはまだ遠い。その第一歩が南北当局の実務協議だ。