20日、平壌(ピョンヤン)の錦繍山(クムスサン)迎賓館で開かれた北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長と中国の習近平国家主席の第5回首脳会談に金英哲(キム・ヨンチョル)労働党中央委副委員長が同席しなかった事実が確認された。
金委員長と習主席の4回にわたる首脳会談に同席してきた金副委員長の“不在”は注目すべき変化だ。北朝鮮事情に詳しい消息筋は「今後の対米交渉窓口の役割を金英哲副委員長が務めないと見ても良いシグナルだ」と説明した。
これと関連し、注目すべき点は、リ・ヨンホ外務相の地位の変化だ。「労働新聞」は21日付4~5面で、前日の朝中首脳会談を取り上げた記事で、北朝鮮側の陪席者としてリ・ヨンホ外務相を権力序列が高いリ・スヨン外交担当党中央委副委員長よりも先に掲載した。これに先立ち、4月25日に金委員長とロシアのプーチン大統領の首脳会談の際も金英哲副委員長は外され、リ・ヨンホ外務相とチェ・ソンヒ外務省第1次官が同席した。金委員長の“対外交渉代理人”が金英哲副委員長からリ・ヨンホ外務相に変わった可能性もあると見られているのもそのためだ。政府関係者は「交代かどうかは確認が必要だ」としながらも、「事実なら、悪いシグナルではない」と述べた。米国側は軍出身で“昔ながらのスタイル”の金英哲副委員長に対する不満を示し、交代を希望してきたという。
20日、朝中首脳会談の陪席者の中には、経済と軍事分野の人物が目立つ。北朝鮮側からは、ナンバー・ツーの崔竜海(チェ・リョンヘ)国務委員会第1副委員長や外交分野のリ・ヨンホ外務相、リ・スヨン副委員長と共に、経済の総責任者であるキム・ジェリョン内閣首相とキム・スギル人民軍総政治局長が陪席した。中国側からは、習主席の秘書室長に当たる丁薛祥中国共産党中央弁公庁主任や楊潔チ外交担当政治局委員、王毅外交部長とともに、経済戦略を総括する国家発展改革委員会の何立峰主任、鍾山商務部長が陪席した。さらに、中央軍事委員会の苗華政治工作部主任が異例にも同席した。
何立峰主任と鍾山商務部長の陪席には、制裁の枠組みの中で朝中経済協力を推進し、北朝鮮の経済開発を支援するという中国の意志が込められているものと見られる。ヤン・ガビョン国家安保戦略研究院責任研究委員は「習主席が会談で『経済民生領域や幹部の教育、人的交流を強化する』と述べており、朝中国交樹立70周年を記念し、教育や衛生、体育、メディア、地方の領域の協力を強調したのは、人的交流や観光などを大きく増やして、制裁の枠組みの中で経済支援を行うと共に、経済発展の経験を伝授するという意味」だと話した。
軍分野のキム・スギル人民軍総政治局長や苗華政治工作部主任の陪席は、習主席が「北朝鮮の合理的な安保の懸念の解決に力を添える」と発言したことと関連があるという推測と共に、経済建設で軍の役割とも関連があると見られている。ヤン責任研究委員は「苗華政治工作部主任は習近平主席の側近で、軍の人事と思想などを担当している人物」とし、「北朝鮮が核・経済並進路線から経済建設集中路線に切り替え、改革開放を推進するには軍の同意と思想の変化が必要だが、関連する中国の経験を共有する意味があると思われる」と説明した。