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米国、「柔軟なアプローチ」の4時間後、追加の対北朝鮮制裁…朝中同時にけん制

登録:2019-06-21 06:14 修正:2019-06-21 08:49
習近平主席の訪朝に合わせ、「対話・制裁」のメッセージ


北朝鮮に宥和的シグナル 
ビーガン特別代表、対話を念頭に 
「柔軟なアプローチが外交の唯一の道… 
北朝鮮の非核化観点を理解」と言及し、注目集める 
習主席の訪朝には「建設的」と期待感示す 
 
中国には「脱線するな」と警告 
米財務省、制裁対象と取り引きした 
ロシアの金融会社への制裁を追加指定 
「朝中に状況判断を誤るな」と牽制球 
「トランプ大統領、交渉力を高めるために見守っているだけ」 

イ・ドフン外交部朝鮮半島平和交渉本部長(左)とスティーブン・ビーガン米国務省対北朝鮮特別代表が今月19日(現地時間)、米ワシントンで開かれた米国大西洋協議会と東アジア財団の戦略対話イベントで、出席者らと質疑応答を行っている//ハンギョレ新聞社

 中国の習近平国家主席の訪朝を皮切りに、朝鮮半島をめぐる外交戦の新たな幕開けとなった20日、米政府は異なる対北朝鮮メッセージを同時に発信した。スティーブン・ビーガン国務省北朝鮮政策特別代表が「柔軟なアプローチの必要性」などを取り上げ、北朝鮮に宥和的シグナルを送る一方、米財務省は北朝鮮の制裁回避を助けた疑いで、ロシアの金融会社に対する制裁を発表した。

 ビーガン特別代表は19日(現地時間)、ワシントンで米国のシンクタンクである大西洋協議会が東アジア財団と開いた戦略対話の基調演説で、「(朝米)双方は柔軟なアプローチの必要性を理解している」とし、「これが外交で前進できる唯一の道」だと強調した。

 彼は「互いに明確な利益になる解決策を知っている。私たち(米国)はこの問題の解決に失敗してきたこれまでの25年間の解決策を越えなければならない。(その点で)米国は非核化において有意義かつ検証可能な処置を期待するという点を明確にした」と述べた。さらに「われわれはそれ(非核化措置)に対する北朝鮮側の観点も理解する」としたうえで、「それは可能だが、安全保障と全面的な関係改善に対する幅広い協議という脈絡とともに進めなければならない」と説明した。これは、米国が非核化措置だけでなく、北朝鮮の要求も論議できることを再確認したものとみられる。

 ビーガン代表はこうした脈絡で、「米国は、両首脳がシンガポールで行ったすべての約束について協議する準備ができている」と述べた。また、北朝鮮と実務交渉の再開に前提条件がないという立場を再確認したが、「あらゆることを協議しなければならない」と付け加えた。

 2月末、ハノイでの朝米首脳会談で隔たりを埋められず膠着に陥って以来、米国側が「柔軟なアプローチ」に言及したのは今回が初めてだ。同日の発言は、来週の韓米首脳会談を控え、ビーガン特別代表が早期訪韓して北朝鮮側と実務接触を図る可能性があると見られる中で行われたという点で、特に注目を集めた。北朝鮮は、今年4月の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の施政方針演説で、米国に「新たな計算法」を求めたが、米国側では「漸進的非核化はない」という強硬な姿勢を貫いてきた。国家安保戦略研究院のチョ・ソンニョル諮問研究委員は「北朝鮮との対話を念頭に置いた宥和的メッセージ」だと分析した。

 ビーガン特別代表は、習主席の訪朝については、米国務省同様、慎重な立場を明らかにした。「いかなる結果が出るか、見守るつもり」だとし、「習主席が平壌(ピョンヤン)訪問期間中、北朝鮮の非核化に建設的かつ適切なメッセージを送るだろうという期待を持っている」と述べた。米中の様々な不一致にもかかわらず、「(対北朝鮮政策で)中国は100%我々に同意している」とし、中国の“脱線”を迂回的に警戒した。

 朝中首脳会談をめぐる米国内の懸念と対中警告は、4時間後に明らかになった。習主席の訪朝を数時間後に控えた時点だった。米財務省海外資産管理局(OFAC)は、北朝鮮が国際金融システムにアクセスできるようにし、北朝鮮の制裁回避を助けたという疑いで、ロシアの会社「ロシアン・フィナンシャル・ソサイエティー」を制裁対象に指定したと発表したのだ。

 財務省は、同社が米国の制裁対象である「丹東中盛インダストリー・アンド・トレード」(丹東中盛工貿)側に銀行口座を提供したと発表した。丹東中盛はすでに米国の制裁リストに載っている北朝鮮の朝鮮貿易銀行(FTB)が直接・間接的に所有または運営する会社だという。今回の制裁で、ロシアン・フィナンシャル・ソサイエティーの米国内資産は凍結された。チョ・ソンニョル諮問研究委員は「中国が北朝鮮制裁と関連し最も恐れるのはセカンダリー・ボイコット」だとし、財務省が(習主席の訪朝に)タイミングを合わせ、(中国に)判断を誤るなと警告したものとみられる」と分析した。

 米法務部が先月9日、米国と国連の制裁に違反して石炭や重装備を運送した容疑で、北朝鮮の貨物船ワイズ・オネスト号の差し押さえ・没収手続き突入の事実を発表したのも、北朝鮮が短距離ロケットを打ち上げた直後だった。米国は、この発表が北朝鮮の発射(5月4、9日)と関連がないと主張したが、時期からして明確な北朝鮮への警告メッセージと受け止められた。キム・ジュンヒョン韓東大学教授は「米国が強穏両面戦略を精巧に展開しているとは思えない」とし、「財務省内部の強硬派が(対北朝鮮制裁問題を)活用している」と述べた。「一方ではビッグ・ディールを掲げ、他方では別の話をしながら様々なシグナルを送っているが、トランプ大統領が、複雑なシグナルを送ることで交渉で有利に立場に立てると考え、放置しているだけだ」と説明した。

キム・ジウン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/politics/diplomacy/898743.html韓国語原文入力:2019-06-20 20:55
訳H.J

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