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[ニュース分析]文大統領が光州記念演説途中に19秒間沈黙した理由とは

登録:2019-05-20 06:06 修正:2019-05-20 07:28
「光州市民に申し訳なくて…」 
「5・18侮辱」への惨憺たる思いを表現 
異例の長い沈黙に聴衆も涙ぐむ 
5・18に対する相次ぐ妄言受け、急遽出席
文在寅大統領が今月18日午前、光州北区雲亭洞の国立5・18民主墓地で行われた第39周年5・18民主化運動記念式典に出席し、記念演説をしながら涙ぐみながら呼吸を整えている=光州/キム・ジョンヒョ記者//ハンギョレ新聞社

 「光州(クァンジュ)市民に申し訳なくて…」

 沈黙が続いた。19秒間の長い沈黙だった。

 「あまりにも恥ずかしくて、国民に訴えたいと思ったからです」

 かろうじて口を開いたものの、声は潤み、瞳は揺れていた。式場を埋め尽くした聴衆の瞳もともに揺れていた。ハンカチを取り出して涙を拭う人もいた。

 今月18日、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の39周年5・18光州民主化運動記念式典での演説は、メッセージ自体よりも、演説途中に20秒間近く続いた“言葉の空白”が話題になった。その沈黙について、文大統領の周辺では、「人権弁護士であると同時に民主化運動家として、光州に対して持ち続けた負債意識の表れであり、国政責任者として光州が再び侮辱される状況を目にしなければならない惨憺たる思いの表現だ」だと述べた。

 文大統領が沈黙したのは、記念演説の初盤、光州市民に対する申し訳ない気持ちを語るくだりだった。沈黙の末に再開された記念演説は「1980年、光州が血を流して死んで行く時に、光州と共に(行動)できず、その時代を共に生きた市民の一人として、本当に申し訳なく思っている。公権力が光州で行った野蛮な暴力と虐殺に、大統領として国民を代表し、もう一度深くお詫び申し上げる」という、より具体的な謝罪につながった。2年前の記念演説で「憲法の前文に5・18精神を盛り込む」とした約束を守れなかったことについても、文大統領は「申し訳ない」と謝罪した。

文在寅大統領が18日午前、光州北区雲亭洞の国立5・18民主墓地で行われた第39周年5・18民主化運動記念式典に出席した後、犠牲者アン・ジョンピル氏の墓を参拝し、母親のイ・ジョン二ム氏を慰めている=光州/キム・ジョンヒョ記者//ハンギョレ新聞社

 文大統領は同日、5・18民主化運動40周年を迎える来年の行事に出席する方がいいという意見が多かったが、本人の決断で今年の行事に出席したと明らかにした。これと関連し、大統領府関係者は「除隊して大学に復学した時に経験した5・18に対する負債感の表現」だと説明した。また別の関係者は「最近、一部の自由韓国党の議員らと極右勢力の妄言が相次ぐのを見て、光州行きを決断したようだ」と話した。与党の一部では、文大統領が記念式典に出席した背景には、80%前後を推移していた就任初めの支持率が半分に落ちた状況でも、依然としてゆるぎない支持を示している光州・全羅道の有権者に対する感謝の気持ちもあると見ている。

 文大統領の同日のメッセージでは「私たちがやるべきなのは、民主主義の発展に貢献した光州5・18に感謝しながら、より良い民主主義を発展させていくこと」だとしたうえで「私たちの5月は希望の始まりで、統合の土台でなければならない」とし、“統合”を強調した。しかし、統合の前提条件が“真実の究明”にあるという点も明確にした。文大統領は「独裁者の後裔でなければ、5・18を違う視線で見ることはできない」とし、最近の5・18関連の妄言を直接非難した。そして、「5・18以前、維新時代と5共和国時代にとどまっている立ち遅れた政治意識では、新しい時代に向けて一歩も踏み出せない」と述べた。国会ではキム・ジンテ、イ・ジョンミョン、キム・スンレら極右勢力に同調する国会議員の発言が相次ぎ、自由韓国党指導部は核心支持層の顔色をうかがって懲戒に消極的な現状況を念頭に置いた発言とみられる。

 ファン・ギョアン代表が地域世論の反対を押し切って記念式典への出席を強行した自由韓国党は、ひややかな反応を示した。文大統領の記念演説について、ナ・ギョンウォン自由韓国党院内代表は同日、フェイスブックへの書き込みで、「文大統領は独裁者の後裔を云々し、事実上我が党を狙った発言をした。片方の陣営だけの記念式典を見たようで、残念だった」と述べた。

ソン・ヨンチョル記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/bluehouse/894505.html韓国語原文入力:2019-05-19 20:58
訳H.J

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