2016年4月8~9日、大邱(テグ)のとある第20代総選挙の期日前投票所は投票する人で賑わっていた。投票所の一角では、警察庁情報局所属の情報官(IO)が投票状況を注意深く見守っていた。同日の風景は、直ちに情報官の「情報報告」に取り上げられた。「大邱の有権者らが、普段なら1回折るべき投票用紙を2回折る場合が多い」。保守的な雰囲気のため、あまり投票の意思を隠す必要がなかった大邱の有権者らが、投票用紙を「2回」折っている事実が、「特異動向」として報告された。
その特異動向は総選挙の結果にも反映された。第19代総選挙の際、52.77%を得票した与党のセヌリ党は、第20代総選挙では37.69%の獲得にとどまった。第19代総選挙で40.42%の得票率で敗れたキム・ブギョム候補は、第20代では62.3%を得て、民主党系列の候補としては初めて大邱地域で当選した。当時、期日前投票所の「特異動向」は、強固な地域主義に亀裂が生じているというシグナルだった。
3日、ハンギョレの取材結果、朴槿恵(パク・クネ)政権当時、「親朴」候補の当選を目標に選挙に介入したという疑惑を受けている情報警察が、2016年4・13総選挙当時、全国の事前投票所に対する動向報告書を作成して大統領府に報告したことが明らかになった。与党を支援するため、情報警察が組織的に選挙に関与したのだ。
当時、警察庁情報局は全羅道以外のすべての地域の情勢と世論などに関する情報を収集し、「選挙状況分析報告書」と「圏域別報告書」を作成した。「圏域別報告書」の中には地域別期日前投票所の現場の雰囲気と動向を把握した「期日前投票所の雰囲気報告書」もある。全国的に3000人に達する情報警察が、地域別に期日前投票所に投入され、組織的に投票状況を“偵察”したものとみられる。
チョン・チャンベ当時大統領府治安秘書官室先任行政官(現、中央警察学校長)は、このように作成された圏域別「期日前投票報告書」を、警察庁情報局から受け取り、“上層部”に報告したという。当時、警察庁情報局と大統領府の架け橋の役割を果たし、“選挙介入”文書をやり取りしたチョン治安監とパク・キホ警察庁情報局情報審議官(現、警察開発人材院長)は、朴槿恵政権当時、2年足らずで総警(日本の警視正に相当)から警務官(警視長に相当)、治安監(警視監に相当)に“超スピード昇進”を果たした。チョン治安監は先月30日、令状実質審査で、「(選挙介入文書の作成は)数十年続いてきた慣行」だと主張したという。
人権連帯のオ・チャンイク事務局長は「情報警察を今のシステムのまま放置すると、いかなる政権であれ、情報警察を活用したい誘惑に駆られるだろう。全面的な改編ときちんとした改革が急がれる」と指摘した。