A氏は常習的に120茶山(ダサン)コールセンター(ソウル市の総合相談電話窓口)の相談員に電話をかけ、暴言や性的な侮辱発言をした。2010年から2013年4月まで計459回にわたり暴言や性的侮辱発言をし、ソウル市は2013年4月、A氏をソウル北部地検に告訴した。一日中電話応対をする相談員たちは、一日に何度も言葉の暴力の被害を受けるが、親切さを維持しようとするために一部の相談員は顔は笑っていても憂うつな感情が続く「スマイル症候群」を患ったりもする。
昨年10月18日、改正案が施行された産業安全保健法(産安法)で一日平均55件の相談を受けてきた公共機関の相談コールセンターの相談員が、相談者に暴言やセクハラを受けた場合、電話を切ることができる法的根拠が設けられた。産安法第26条2項には、顧客応対をする労働者が顧客の暴言・暴行によって身体的・精神的苦痛による健康障害が発生したり、発生するおそれがあるとき、事業主は業務を一時的に中断させるなどの処置をしなければならないとされている。雇用労働部の関係者は、改正された産安法について、「ラーメン常務事件(大企業の常務が機内食に因縁をつけ暴行をはたらいた事件)やデパート母娘事件(デパートの顧客が駐車場でアルバイトの誘導員をひざまずかせた事件)など、顧客のパワハラ問題が多かった。顧客応対の健康対策を樹立せよという要求が出てきて、国会議員が感情労働者保護法を発議した」とし、「産安法で顧客の暴言などに対する健康障害予防措置が新設された」と明らかにした。ただ、これまで公共機関の相談員が暴言などの状況に置かれた時に電話を切れるようにする具体的な規定は設けられていなかった。
これに対し行政安全部は1日、公共機関の相談員のための具体的な相談応対標準案をまとめ、今年下半期から施行する方針だと明らかにした。行政安全部が作った標準案によると、相談者が意図的に通話を30分以上続けたり、言葉の暴力を加えた場合、相談員は後でまた電話をかける旨を説明して通話を終了することができる。行政安全部は今年下半期までに、このような内容を盛り込んだコールセンター運営マニュアルを各公共機関に配布する方針だ。
行政安全部の関係者は「産安法改正案により労働者の顧客応対に対する事業主の義務を規定した条項が新設されたが、まだ(その義務は)ゆるい」とし、「さらに、公共機関のコールセンターのうち零細なところは相談員が9人や10人にすぎない。(コールセンターの)規模が小さければ茶山コールセンターのようなマニュアルもないだろう。(暴言を聞いたら)3回目で電話を切ることができるという規定ができたが、現実ではうまく作動できない場合もある。(行政安全部が)標準案を作成しようとするのはそのため」と説明した。
昨年、産安法改正案が施行された後、政府が相談員のための保護措置を導入することにしたが、スピーディーには進まなかった。行政安全部は昨年、相談員保護のための音声案内の手続きを導入することを決めたが、このような手続きを実際に施行しているコールセンターは全国156カ所のうち40カ所のセンター(25.6%)にすぎないことが分かった。相談員を保護するために相談者の発言を録音するという音声案内を施行しているセンターは98カ所(63%)だった。
一方、行政安全部が昨年12月から今年1月まで156の全国の公共機関のコールセンター運営現況を調査したところ、公共機関の相談員は1人当たり一日平均61.5件の相談要請を受け、54.5件を処理すると集計された。