韓国が今年分担すべき在韓米軍の防衛費分担金が、昨年より787億ウォン(8.2%)増えた1兆389億ウォン(約1015億円)に決まった。当初米国が受け入れ可能な総額のマジノ線として“通知”した10億ドルよりは少ない金額だが、協定有効期間が1年に過ぎず、韓国はまたもや引き上げ圧力に直面することになった。
外交部のチャン・ウォンサム韓米防衛費分担交渉代表と米国務省のティモシー・ベッツ防衛費分担交渉代表は同日午後2時30分、ソウル都染洞(トリョムドン)の外交部庁舍で、第10次韓米防衛費分担金特別協定(SMA)の文案に仮署名した。昨年3月に交渉を開始してから11カ月がたった。今回の協定で総額は、昨年韓国が支払った9602億ウォンに2019年度の韓国国防予算引き上げ率(8.2%)を反映した1兆389億ウォンで妥結した。米国が要求した総額(10億ドル)よりは少ないが、「国民の心理的なマジノ線」だとして分担金の規模が1兆ウォンを超えてはならないと主張してきた文在寅(ムン・ジェイン)政権も、一歩後退したわけだ。また、昨年12月末に米国側が「最上部の指針」だとして突然提示した協定の「有効期限1年」の要求も受け入れた。当初韓国政府は、昨年の分担金9602億ウォン(約938億円)からの減額を主張したが、最終段階では9999億ウォン(約976億円)に有効期間3~5年を提示し、米国側も1兆4400億ウォン(約1406億円)に有効期間10年の要求から旋回した。
米国が土壇場で有効期間1年にこだわった背景には、同盟国との防衛費分担基準を新たに設けるというドナルド・トランプ大統領の強い意向があり、今年上半期に始まる第11次協定締結のための交渉では、米国の増額圧迫がさらに激しくなる見通しだ。特に米国側は、来年11月の大統領選挙を控え、同盟国の防衛費分担金の増額をトランプ政権の外交成果に掲げようとしており、韓国にとっては次回交渉の際に負担として作用する可能性が高い。外交部当局者は「(米国は)同盟国に対する防衛費分担の論理において、統一した基準、ガイドラインを作って分担を求める」という立場だとし、「そのような原則を作る作業が進行中」だと話した。ただし、こうした方針が昨年11月末から12月初め頃になって決まったものと見られ、米国がいつどのような“新しい原則”を打ち出すかは分からないと、外交部側は説明している。政府高官は「(特別協定を結ぶ)韓国と日本を除き、NATO(北大西洋条約機構)を含め、中東国家の事例がそれぞれ異なるため、何を持ってどのように同盟国の分担を増やすのか、私たちも知りたい」と話した。両国が同日、次回の協定を今年中に妥結できない場合に備え、「双方が合意した場合、協定を延長適用」できるようにしたのも、米国側の“不確実性”に対する懸念が反映されたものとみられる。
今回の協定の主な争点の一つだった米国の「作戦支援(Operational support)」項目(朝鮮半島における米軍戦略兵器の展開費用など)の新設要求は、在韓米軍の駐留経費分担という協定の趣旨と目的に合致しないという韓国側の主張が受け入れられ、撤回された。その代わり、在韓米軍基地の運営支援に必要な電気やガス、上下水道料金などの費用は、現物を支援する軍需支援細部項目に一部反映された。
防衛費分担金の執行の透明性と責任性を高めるための方策も設けられた。軍事建設分野で例外的な現金支援を撤廃し、軍事建設配分額の12%に制限された設計・監理費の現金支援の比率を執行実績によって縮小できるようにした。軍需支援の未執行分が自動的に繰り越されることを制限し、75%以下に明示された在韓米軍の韓国人労働者の人件費支援比率の上限線もなくした。
この日仮署名された協定は、法制処の審査を経て、次官会議と国務会議で可決されれば、両国の正式署名後、国会の批准同意を受けて発効する。