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龍山惨事から10年…「私たちはまだあの燃えさかる火から抜け出せずにいる」

登録:2019-01-21 08:45 修正:2019-01-21 13:34
龍山惨事10周忌追悼祭に遺族ら150人が出席 
過剰鎮圧・世論操作は明らかになったが 
責任者の処罰はまだ行われておらず 
「庶民を殺しておいて高位職にいるのが許せない」 
追悼委、国会にキム・ソッキ議員除名を要求 

イ・ジョンミ「龍山の悲劇を防ぐための法改正を」
龍山惨事10周年を迎えた今月20日、京畿道南楊州市磨石のモラン公園の烈士墓地で開かれた追悼祭で、遺族のクォン・ミョンスクさんが涙を流している=南楊州シン・ソヨン記者//ハンギョレ新聞社

 「死人に口なしと言います。それなら、殺した者が口を開くべきでしょう」

 クォン・ミョンスクさん(57)は10年経った今でも答を求めている。クォンさんの夫イ・ソンスさんは、龍山(ヨンサン)惨事の犠牲者の一人だ。龍山惨事は2009年1月20日早朝、ソウル龍山区(ヨンサング)漢江路(ハンガンロ)2街の南一堂ビルの屋上のコンテナで、立ち退き住民らと鎮圧警察の衝突で火災が発生し、立ち退き住民5人と警察1人が死亡した事件だ。20日でちょうど10年になったが、まともな真相究明と責任者への処罰は依然として行われていない。

 「事故さえなければ、夫と少しの稼ぎでも一緒に楽しく過ごしていたはずなのに…私たちがなぜこんな苦痛を受けて生きていかなければならないんですか」。やるせなく流れる涙の中、クォンさんの胸のしこりが一緒に噴き出した。

 この日午後1時30分、京畿道南楊州(ナムヤンジュ)磨石(マソク)のモラン公園犠牲者墓地で「龍山惨事10周忌犠牲者追悼祭」が開かれた。当時コンテナから脱出して生存した立ち退き住民9人と遺族ら150人余りが参加して開かれたこの日の追悼祭では、雪の降りしきった去年の追悼祭とは違い、日差しが墓地を照らした。司会を務めた汎国民追悼委員会(追悼委)のパク・レグン執行委員長は「10年目にしていちばん暖かい日」と語った。しかし、温もりと日差しにもかかわらず10周忌を迎える生存者と遺族の表情は重かった。

 10年という歳月はその分彼らにとっては残酷だった。犠牲者のユン・ヨンホンさんの妻ユ・ヨンスクさん(59)は「10年が過ぎたが、子どもたちはまだ父親の死を認めずにいる。お父さんがどこか旅行に行ったみたいだと言う言葉を聞いて、胸がつぶれた」と話した。ユさんはまだ睡眠薬なしでは眠れないと打ち明けた。生存者のキム・チャンスさん(45)は「一緒にコンテナに登った私たちは、10年前のあの燃えさかる火から抜け出せずにいる」という言葉で、これまでの歳月を振り返った。

龍山惨事10周忌の今月20日午後、京畿道南楊州市磨石のモラン公園の烈士墓地で追悼祭が開かれ、遺族と市民が故人の墓に献花している=南楊州/シン・ソヨン記者//ハンギョレ新聞社

 10年目にして真相究明の扉が開かれたが、まだ先は遠い。昨年9月、「警察庁人権侵害事件真相調査委員会」は龍山惨事当時、過剰鎮圧と世論操作があったことを公式に明らかにした。最高検察庁の過去事真相調査団の調査も進められている。追悼委は「過剰鎮圧という結論が出たが、責任を負う人がいない。検察の真相調査団の調査も外圧で中断している」とし、政府と国会が乗り出すことを求めた。クォンさんは「庶民を殺しておきながら羽振りを利かせている高位職の人たちが許せない」とし、「謝罪すると言ったならば理由を問わず直ちに遺族の前にひざまずけ」と警察に求めた。

 この日の追悼祭では、前日に放映されたSBSの時事番組『それが知りたい』で公開されたキム・ソッキ自由韓国党議員の発言が議論になった。惨事当時、ソウル地方警察庁長だったキム議員は、無理な鎮圧の責任者として名指しされる人物で、追悼委は国会にキム議員の除名手続きを進めることを求めている。犠牲者のヤン・フェソンさんの妻のキム・ヨンドクさん(63)は「キム・ソッキが、いまでも警察庁長官だったなら(龍山惨事と)同じ方法で鎮圧しただろうと言った」とし、「そんな人が国会議員の資格があるのか問いたい」と声を荒げた。犠牲者のイ・サンリムさんの妻チョン・ジェスクさん(75)も「キム・ソッキはまだ目をひらけていない」と皮肉った。実際の放送でキム議員は、制作陣が警察庁調査委員会の結果に対する考えを聞くと「(龍山惨事当時)警察の法執行は正当だったと、今でも私はそう信じている」と答えた。

 追悼祭には、ミョンジン僧侶やイ・ジョンミ正義党代表、パク・ジュミン民主党最高委員らも出席して追悼の辞を読みあげた。イ・ジョンミ代表は「昨年もソウル長位洞(チャンウィドン)と阿ヒョン洞(アヒョンドン)で再開発により賃借人が命を失った。龍山惨事はまだ進行中だ」とし、龍山惨事後10年が過ぎても変わらない暴力的な再建築と再開発の現実を指摘した。さらにイ代表は「政府はもちろん、惨事10周年を迎えて一斉に追悼の意を表明した政党は、明日からでも直ちに真相究明と責任者処罰をはじめ、龍山の悲劇を防ぐための法改正に乗り出すべきだ」と述べた。

 一方、龍山惨事10周忌汎国民追悼委員会はこの日、「徹底した真相究明と責任者処罰のための立場」を発表し▽最高検察庁の過去事真相調査団調査チームの再配当および追加期限の延長▽独立した真相調査機構を通じた徹底した真相究明▽殺人鎮圧の指揮と世論操作の責任者であるキム・ソッキ議員の処罰および除名▽龍山特別法を制定し徹底した真相究明と公訴時效に関係なく責任者処罰する法案制定などを要求した。

南楊州/イ・ユジン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/879107.html韓国語原文入力:2019-01-2021:24
訳M.C

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