遭難船舶の救助に出動した韓国の駆逐艦が、日本の海上自衛隊の哨戒機に向かって射撃統制レーダーを照射したとして日本政府が反発する状況が広がり、韓国と日本が20年近く実施してきた「捜索及び救助訓練」(SAREX・Search and Rescue Exercise)の実効性に疑問が提起されている。
韓国海軍と日本海上自衛隊は、1999年から船舶遭難事故が発生した際の共同捜索及び救助作戦能力を育むための連合海上訓練を2年毎に行なってきた。人道主義的措置が必要な状況を仮定したこの訓練は、対北朝鮮情報を共有するために2016年に締結された軍事情報保護協定(GSOMIA)と共に韓日軍事協力を象徴する。
この訓練には、両国の海上戦力が大挙動員される。昨年12月、日本の横須賀西南海上で開かれた訓練には、韓国海軍の4400トン級駆逐艦の姜邯賛(カンガムチャン)艦と4200トン級軍需支援艦の華川(ファチョン)艦、日本海上自衛隊の5050トン級駆逐艦の「てるづき」とSH60ヘリコプターなどが参加した。規模が大きい時は、機雷敷設艦と上陸艦、海上哨戒機などが動員されたりもする。
それでも、この訓練が仮定した人道主義的措置が必要な状況が実際に発生しても、韓国と日本の共同対応はもちろん疎通システムは全く作動しなかった。それどころか韓国駆逐艦のレーダー運用と日本海上哨戒機の近接飛行をめぐる論議だけがふくらんだ。訓練の成果が蓄積されていたとすれば、こうした状況を予防したり、問題が発生したとしても直ちに収拾できるチャンネルが作動しただろう。
海軍側は「この訓練の趣旨と経験を無視したのは日本」と指摘する。ある関係者は「今回の状況は、韓国の駆逐艦が緊迫した状況で捜索に出動したので共同対応を広げる条件はなかった」として「例え訓練の成果が蓄積されていたとしても、日本政府が反発する今の状況には変わりがなかっただろう」と話した。今回の論議が、日本政府の政治的判断から始まったという指摘だ。
しかし、一部ではこの訓練が当初から人道主義的捜索及び救助に焦点を合わせたものではないと指摘する。表面的には人道主義的訓練を標ぼうしているが、実際には北東アジアで韓米日の軍事協力を進展させるための手段だということだ。実際、韓米日は2014年7月、済州島(チェジュド)南側の東シナ海一帯で大規模捜索及び救助訓練を実施した。この訓練には、米海軍の第7艦隊所属航空母艦ジョージ・ワシントン号(9万7000トン)をはじめ韓国と日本のイージス艦が大挙参加した。