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家で元気な老後を…来年6月からコミュニティケアへの第一歩踏み出す

登録:2018-11-21 09:17 修正:2018-11-21 15:35
2026年には国民5人に1人が「高齢者」 
高齢者ケアの不安を解決するため  
地域社会で統合ケアサービスを提供
城南慰礼にある公共シルバー住宅内の総合社会福祉館で、ゲームを楽しんでいる高齢者ら。政府は2022年までに4万戸の高齢者公共賃貸住宅を「ケア安心住宅」として建設する計画だ=保健福祉部提供//ハンギョレ新聞社

 高齢者が「療養病院・施設」の代わりに「普段住み慣れた場所」」で健康な老後を送れるようにする「ケアシステム」が作られる。2026年、韓国は65歳以上の高齢者人口が国民の5人に1人の割合になる「超高齢社会」に進入する。高齢者のケアに対する負担も大きくならざるを得ない。療養病院・生活施設などで生活する高齢者は、49万8千人(2016年基準)に達する。「現代版姥捨山」に転落した療養施設や、雪だるま式に増える高齢者の診療費、「身動きが取れなくても住み慣れた場所で生を終えたい」という高齢者の欲求などは、深刻な社会問題として浮上している。

 これに対し、保健福祉部は20日、家や地域で高齢者に住居、医療・療養・ケアサービスなどを提供する「地域社会統合ケア(コミュニティケア)」の基盤を、超高齢社会に入る直前の2025年までに構築すると発表した。来年6月から12の地方自治体が2年間にわたりモデル事業を施行し、第一歩を踏み出す。「コミュニティケア」とは、高齢者や障害者などが日頃から暮らしてきた場所で、個人の欲求に応じたサービスを受け、地域社会で共に生活できるよう支援する社会サービス政策をいう。英国や日本などでは自治体を中心にこのようなサービスを提供している。

 政府はまず、老人適合型住居インフラを大幅に拡大する計画だ。2019~22年に新規に供給される老人公共賃貸住宅4万戸を、健康・ケアする施設に非常に近い「ケア安心住宅」として建設する。ケア安心住宅には、自動ガス遮断機や動作感知センサーなどが設置される。高齢の居住者が多い永久賃貸住宅14万戸は、社会福祉館と連携を高めることにした。27万世帯を対象に、住宅修理事業も始める。トイレの使用や入浴などに困難を抱える高齢者の自宅に、滑り止めの床材を敷き、浴室に安全手すりを設置するなどの事業だ。昨年、高齢者の転倒など骨折による医療費だけで1兆3千億ウォン(約1300億円)に達した。

 来年から医師が自宅を訪ねる訪問診療(往診)も実施する。現在、看護士が老人の慢性疾患や生活習慣などを管理する訪問健康サービスは、低所得層を中心に110万世帯(125万人)にしか提供されていない。政府はこれを2025年までに346万世帯(約390万人)へと3倍以上拡大する計画だ。長期入院して退院した高齢者や一人暮らしの高齢者などが対象だ。ただし、医師協会などが適正な報酬保障などを要求して反発しており、実施まで課題を残している。同時に2022年までにすべての市郡区に住民健康センターを構築すると共に、病院2千カ所に「地域連携室」(社会福祉チーム)を設置し、退院患者にコミュニティケアを紹介し、連携する。

コミュニティー(地域社会)ケアの概要図//ハンギョレ新聞社

 また、高齢者長期療養保険で介護サービスを受けている高齢者人口を全体の8%(58万人)から25年11%以上(約120万人)に増やす。自宅から病院に移動する車両サービス(病院までお連れタクシー)や自宅の段差の除去などを長期療養保険で支援する案が進められる。食事の宅配や安否確認など、自宅で受けられるサービスも新たに開発する予定だ。民官が共に参加する「地域ケア会議」も運営する。コミュニティケアは民間の保健医療・社会福祉機関を通してサービスを提供するためだ。政府は2022年までに、15万5千人の公務員を社会福祉分野で拡充する方針だ。

 保健福祉部はモデル事業を通じて多様なコミュニティケアモデルを発掘した後、2022年までに「(仮称)地域社会統合に向けたケア基本法」を制定する計画だ。来年上半期に児童や障害者に関するコミュニティケアの計画も次々と打ち出す。

 しかし、コミュニティケアがきちんと実施されるためには、まだまだ越えなければならない山が多い。保健福祉部は中央政府が法的・制度的な基盤を作れば、地方政府が自主的に企画・施行する政策だと強調している。しかし、ソウル大学医学部のキム・ユン教授は「自治体の権限と責任が明確に示されておらず、商業化した民間ケアサービスが大半を占めている韓国の現実では、ややもすれば多様なサービスだけが並べたてられるだけの制度になる可能性がある」と懸念を示した。仁荷大学医学部のイム・ジョンハン教授(韓国コミュニティケア保健医療協議会常任代表)も、「より大きな枠組みで地方政府が主導的な役割を果たすよう、地方分権が行われ、地域住民の参加が拡大されてこそ、コミュニティケアが定着できる」と強調した。

 今後、高齢者長期療養保険や健康保険、自治体の財政負担などをどう分けるかも曖昧だ。国会に提出された来年度予算80億ウォンは、自治体12カ所にそれぞれ6億ウォン前後を支援する程度に止まる。保健福祉部は「コミュニティケアを普遍的に提供するのに必要なサービス総量の分析や所要財政の推計などは、研究を通じて検討する」とし、後続課題として残している。

 詳細な施行課題も補完されなければならない。イム・ジョンハン教授は「医師の往診や看護師による訪問看護、理学療法士のリハビリサービスが活性化するためには、高齢者長期療養保険と健康保険でこれを支援する制度改編が必要だ」と指摘した。嶺南大学のキム・ボヨン教授は「長期療養保険で1級に指定されている臥床高齢者が1日4時間のサービスしか受けられず、結局24時間介護サービスが提供される施設に行かなければならないのが現実」だと話した。外国でもこのような制度が定着するまでは数十年がかかった。このような理由で、最初の一歩を踏み出したコミュニティケアの道のりは遠い。

パク・ヒョンジョン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/society/rights/870997.html韓国語原文入力::2018-11-20 23:34
訳H.J

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