朝米高官級会談が延期された後、北朝鮮に対する朝米間の神経戦が激しさを増している。制裁の手綱を引き締める米国と、非核化の進展のためには制裁の緩和が必要という北朝鮮の要求が真っ向から対立し、交渉の膠着局面が長引くかもしれないという憂慮も高まっている。
■制裁を握りしめた米国の戦略
マイク・ポンペオ米国務長官は9日(現地時間)、米中外交・安全保障対話会議後の記者会見で、「国連安保理の制裁決議の履行に対する中国の協力は、この重要な非核化問題の意味ある突破口を見出すのに貢献するだろう」とし、中国が対北朝鮮制裁の枠組みを離脱してはならないと強調した。
アジア歴訪に出たマイク・ペンス米副大統領は同日、ワシトンポストへの寄稿で、「明確に言うが、米国は北朝鮮に対して前例のない外交的・経済的圧迫を引き続き加えていく」とし、「朝鮮半島の完全な非核化が達成されるまで、制裁を含む圧迫キャンペーンを維持することを、すべてのインド・太平洋国家に求める」と明らかにした。
米国が制裁の手綱を引き締めているのは、北朝鮮の非核化を圧迫する戦術的意味もあるが、状況管理に力を注ぎながら、“時間稼ぎ”をする可能性があるというシグナルと見られている。国家安保戦略研究院のイ・スヒョン対外戦略研究室長は「トランプ大統領が交渉の枠組みを維持しながらも、状況管理に焦点を合わせ、『トランプ流の戦略的忍耐』へと進む可能性もある」とし、「トランプ大統領と参謀たちは『制裁によって北朝鮮が交渉に出た』という確信を持っているため、そう簡単には制裁を解除しないだろう」と見通した。トランプ大統領は中間選挙後の7日の記者会見でも「制裁は維持されている」、「急ぐ必要はない」と繰り返し強調した。
■北朝鮮のカードは?
対外的に北朝鮮の立場を代弁する在日本朝鮮人総聯合会の機関紙「朝鮮新報」は10日付で、「米国が『急がない』という表現で“速度調節論”を主張し、共同声明の履行ではなく現状維持を望むなら、無理して対話する必要はない」と主張した。同紙は核・経済並進路線の復元可能性に触れた今月2日の北朝鮮外務省米国研究所長の論評を改めて言及し、「研究所長が個人の判断で主張できるような問題ではない」と警告した。
マーク・フィッツパトリック元米国務省核不拡散担当副次官補は「ボイス・オブ・アメリカ」(VOA)とのインタビューで、「トランプ政権は北朝鮮がミサイル発射を再開しない限り、利益になると考えているかもしれないが、北朝鮮が実験を再開した場合は、戦略的脅威の側面だけでなく、トランプ大統領の政治的立場にも悪影響を及ぼすだろう」とし、懸念を示した。
しかし、北朝鮮が再び挑発に出る可能性は高くないという分析もある。イ・スヒョン研究室長は「北朝鮮は今年大きく進展した南北関係に意味を置いており、南北関係に及ぼす影響を考慮して、核・ミサイルの開発に戻ることはないだろう」とし、「南北関係(改善の)速度を上げることで、突破口を見いだそうとする可能性もある」と話した。
■韓国の役割
朝米高官級会談後、南北鉄道の連結と金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の来韓などを進める予定だった韓国政府は困惑している。突破口を見いださなければならない状況だ。北韓大学院大学のヤン・ムジン教授は「これから再選のために努力しなければならないトランプ大統領も、北朝鮮の非核化の成果が必要であり、非核化を進展させるためには、対北朝鮮制裁を緩和しなければならない」としたうえで、「韓国は南北合意を進展させると同時に、北朝鮮には非核化措置を、米国には段階的な制裁緩和をそれぞれ説得しながら、クリエイティブに動かなければならない」と話した。新たに設けられる韓米作業部会を通じて、韓国が米国をさらに積極的に説得すべきという指摘もある。