本文に移動

ファン元首相の乗った車を妨げ3年にわたる裁判の苦しみ…星州住民の受難記

登録:2018-10-26 09:49 修正:2018-10-26 12:39
ファン・ギョアン元首相、2016年7月15日に 
THAAD反対の民心をなだめるために星州へ 
イ・ミンス氏、住民に追われて逃げたファン元首相の乗った車を防ぎ 
2年3カ月間にわたり警察・検察の捜査と1審裁判が受け
昨年5月13日、慶尚北道星州郡草田面韶成里で開かれたTHAAD(高高度防衛ミサイル)配備反対集会に出たイ・ミンス氏(下)と住民のペ・ミヨン氏(40)=イ・ミンス氏のフェイスブック画面からキャプチャー//ハンギョレ新聞社

 「ただ乗用車を止めただけなのに…」

 ファン・ギョアン元首相が乗った乗用車の進路を妨げ、2年以上捜査と裁判を受けている青年がいる。慶尚北道星州郡(ソンジュグン)に住むイ・ミンス氏(39)だ。2016年7月13日、国防部がTHAAD(高高度防衛ミサイル)を星州に配置すると発表したのが発端だった。同年7月15日、ファン・ギョアン首相(当時)とハン・ミング国防長官は、星州の住民たちを説得するために星州郡庁に来た。しかし、ファン元首相は怒った住民に追われ、C警査の個人の乗用車に乗り、星州の空軍防空基地である星山砲台へと移動した。

 この日午後6時10分頃、イ氏は星山砲台に続く幅6メートルの道路に沿ってパトカーと乗用車が上って来るのを見た。イ氏は「乗用車に誰かが乗っているような感じがした」と話した。イ氏はパトカーが通り過ぎると、ハンドルを左に曲げて車を止めた。ファン元首相が乗った車だった。イ氏は「当時、パトカーから降りた警察官たちが駆けつけ、『車のドアを開けろ』と言って蹴った」と語った。警察官は緊急脱出装備を持ってきて、イ氏が乗った車の運転席のガラスを壊した。ファン元首相の乗った車は、イ氏が止めた車の後ろへ抜けて出ようとした。この過程で、イ氏の車とファン首相の乗った車が衝突した。ファン元首相の乗った車は、そのまま星山砲台に向かった。当時、イ氏の車内には妻(39)と娘(11)、双子の息子(8)2人が乗っていた。

 警察は「イ氏が道路をふさいで走っていたが、突然乗用車をバックさせ、後ろの空いたところへ抜け出そうとした乗用車にぶつかった」と主張した。だが、イ氏は「バックせず停めていたのに、ファン元首相が乗った車が突っ込み、そのまま立ち去った」と反論した。衝突当時の映像が入っているドライブレコーダーなど直接的な物証はなかった。警察はイ氏を公務執行妨害の容疑で立件し、昨年1月9日、事件を検察に渡した。

 警察はイ氏の自宅と車を家宅捜索し、イ氏と妻の携帯電話やパソコンのハードディスクなどを持ち出した。イ氏は警察の取り調べを5回、検察の取調べを1回受けた。大邱地検西部支庁は、昨年12月18日にイ氏を起訴し、最初の刑事裁判は8月21日に開かれた。捜査と裁判を受けて2年3カ月が経っていた。3審まで行くならばさらに何年もかかるかも知れない。

 イ氏は「2年以上捜査や裁判を受け、非常につらく不安だった。だが、私が負わなければならない荷だと思う」と話した。彼は警察の調べを受けている間に会社を辞め、今はマクワウリ農業をしている。2年以上にわたりイ氏を弁護したリュ・ジェモ弁護士は「是非はおいてもファン元首相など責任のある方々が出てきて仲裁すれば簡単に済む問題だった。住民1人がすべての責任を負って、務めていた職場まで辞めることになったのが残念だ」と話した。

 同事件は25日、国会行政安全委員会の慶尚北道地方警察庁国政監査でも議論となった。共に民主党のイ・ジェジョン議員は「公務執行妨害の疑いがあるとしても、子どもが3人も乗っている車の窓を(警察が)壊した行為が正当化できるのか」と尋ねた。これに対し、慶北地方警察庁のキム・サンウン庁長は「私が報告を受けたものによると、(現場の警察官らは)子どもが乗っているとは知らなかったと言う」と答えた。

キム・イルウ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/area/867424.html韓国語原文入力:2018-10-25 20:34
訳M.C

関連記事