「今この瞬間、平壌で最も忙しい女性」 「瞬間移動説」 「シーンスティーラー」…3回目の南北首脳会談で“めざましい”活躍を続けている金与正(キム・ヨジョン)北朝鮮労働党中央委員会第1副部長を称する言葉だ。
平壌で開かれた今回の首脳会談で、金与正副部長は文在寅(ムン・ジェイン)大統領夫妻を歓迎し、南側関係者と疎通する一方、金正恩(キム・ジョンウン)北朝鮮国務委員長に密着随行する儀典の“実力”補佐官としての“1人4役”をこなして話題になった。
文在寅大統領の平壌到着初日の18日、文大統領専用機が平壌の順安(スナン)空港に到着する前、金副部長は空港の随所を巡り文大統領歓迎のための儀仗隊と警護員を総括点検した。続いて、文大統領夫妻出迎えのために空港に出てきた金正恩国務委員長夫妻を補佐し、忙しく動いた。北朝鮮側の花束を渡す子どもから歓迎の花束を受け取った文大統領夫妻が行進を始める前、韓国の儀典官ではなく金副部長が歩み出て手から花束を預かる姿も目を引いた。儀仗隊査閲のために上がった壇上で文大統領と金国務委員長が立ち位置を決めかねていると、金副部長が急いで駆け寄り文大統領に立ち位置を案内して立去った。
平壌市内“カーパレード”が進行される時は、歓迎の人波の中で両首脳の行進の姿を見守る姿も捉えられた。しかし、いつのまにか百花園迎賓館には先に到着して、入口前で文大統領夫妻を待つ姿にネチズンたちは“瞬間移動説”まで取りざたした。金正淑(キム・ジョンスク)女史は、迎賓館に先に来ている金副部長に向かって「本当にビックリした」と言い、「歓迎してくださりありがとう」と感謝を伝えた。
翌日の19日、金副部長は実務と儀式を同時にこなす“密着随行”補佐に変身した。黒の正装姿に髪を端正に結い上げて、紐のない黒の四角いカバンを持ち、急ぎ足で歩いたり携帯電話を持ったまま忙しく仕事をこなす姿が百花園迎賓館の随所で見られた。
“韓国通”の面目も遺憾なく発揮した。この日午前、両国の首脳が単独会談を進める間、会談場の前でチョン・ウィヨン大統領府国家安保室長と真剣な対話をする場面が生中継のカメラに捕えられた。文大統領の儀式を受け持っているキム・ジョンチョン儀典秘書官らが、両首脳の合意文署名時の動線をチェックした後、金与正副部長に近付いてしばらく議論する姿も映った。他の関係者たちは時々椅子に座ったりもしたが、金副部長が椅子に座っている姿はついに見られなかった。
合意文署名式の時は、金委員長の後に立って署名のインクがにじまないようにする吸取器がカメラの画面を隠さないように画面の外側である右側へ移し、署名が終わるとすぐにインクを吸い取る作業も金副部長が遂行した。両首脳が登場する時は、カメラの視野外に退いていながらも、必要な時にはいつも現れる“圧倒的存在感”に“シーンスティーラー”というニックネームがつけられもした。「金与正が首脳会談歓迎式などすべての首脳間行事で見せてくれた姿だけでも、アクションスリラー物スパイ映画一編は作れる」とあるネチズンは評した。
金正恩国務委員長の唯一人の妹でもある金副部長は、2014年に金委員長に随行して姿を現わし、2017年10月には北朝鮮の権力核心である政治局候補委員に名を上げた。2018年2月の平昌(ピョンチャン)冬季五輪の時は、高位級代表団員と同時に特使の資格で韓国を訪問し、南北および朝米外交の舞台に登場している。5月初め中国の大連で習近平国家主席と会合する際にも随行した。初めての朝米首脳会談だった「6・12シンガポール会談」で、金委員長とドナルド・トランプ大統領が共同合意文に署名する時、金副部長が行事場所に事前に準備されたペンの代わりに自ら持っていたペンを取り出して金委員長に渡す姿が話題になりもした。単純な随行を越えて、側近実力者として秘書室長の役割までも兼ねているという分析が多い。18日、南北首脳会談場には北側関係者として金副部長と金英哲党中央委副委員長が同席した。南側はソ・フン国家情報院長とチョン・ウィヨン大統領府国家安保室長が同席した。金副部長は今年3月、チョン・ウィヨン国家安保室長とソ・フン国家情報院長など特使団訪問の時も、金正恩委員長との面談に同席し、4月27日の1回目の南北首脳会談の時も活躍した。朝米首脳会談のワーキングランチでは、マイク・ポンペオ国務長官が参加した席に同席したことがある。