文在寅(ムン・ジェイン)大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が19日、「9月平壌共同宣言」で、金委員長のソウル訪問に合意した。文大統領は「特別な事情がない限り年内」と期限も縮めた。金委員長が南北分断以来初めて大韓民国の首都であるソウルの地を踏む北の最高指導者になる可能性が高まった。
金委員長はこの日百花園迎賓館での首脳会談の共同記者会見で、「私は、文在寅大統領に近いうちにソウルを訪問することを約束した」と明らかにした。文大統領は「金委員長にソウル訪問を要請しており、金委員長は近いうちにソウルを訪問することにした」とし、「ここで『近いうちに』というのは特別な事情がない限り『年内に』という意味だ」と付け加えた。「9月平壌共同宣言」の第6条にも「金正恩国務委員長は文在寅大統領の招請によって近いうちにソウルを訪問することにした」という内容が盛り込まれている。
ソウル答礼訪問は、金委員長が決断した。ムン・ジョンイン大統領統一外交安保特別補佐官は、平壌で記者団に「北朝鮮統一戦線部の主要関係者が『周りに反対されたが、完全に金委員長の独自的決定だった』と話した。それだけ憂慮が大きいようだ」とし、「金委員長がかなり難しい決定を下し、文大統領が督励した」と話した。
訪問が実現すれば、金委員長は70年の分断史上初めてソウルを訪問する北朝鮮最高指導者になる。金委員長は4・27首脳会談当時、板門店の南側地域の平和の家を訪れ、初めて軍事境界線を越えたが、共同警備区域内だった。文大統領も「金委員長のソウル訪問は、北朝鮮側指導者として最初の韓国訪問であり、南北関係に画期的な転機を設けるだろう」と述べた。キム・ヨンチョル統一研究院長は「文大統領の平壌訪問に続いて相互訪問が定例化し、南北関係も完全に正常な関係に進むという意味」だと話した。
北朝鮮の最高指導者のソウル訪問は2000年の南北首脳会談の時も合意されたが、当時、金正日(キム・ジョンイル)総書記の安全問題と朝米関係の悪化のため、実現しなかった。チョン・セヒョン元統一部長官は「キム・ヨンスン労働党対南担当秘書が韓国を訪れ、現地調査も行ったが、金委員長の身辺安全に確信を持てなかった」とし、「2002年末には北朝鮮がロシア・ウラジオストクで第2回首脳会談を提案したが、韓国が難色を示した」と話した。ここに米国ブッシュ政権が北朝鮮を「悪の枢軸」と規定し、北朝鮮と1994年に結んだ米朝枠組み合意を破棄したことで、訪韓の可能性はさらに薄くなった。2007年の南北首脳会談当時は、金正日総書記の答礼訪問の合意がなかった。キム・ヨンチョル院長は「金総書記はソウル訪問の意志が強くなかった」と話した。
しかし、今回は金正恩委員長がソウルを訪問する可能性が高いとみられている。南北首脳はすでに3回の首脳会談を通じて人間的な信頼を築いた。キム院長は「開放的で実用的な金委員長のスタイルからして、訪問が実現するだろう」とした。カギはむしろ韓国の受け入れ態勢という指摘もある。金委員長のソウル訪問をめぐって韓国で理念をめぐる対立が深まれば、来韓に障害物が生じかねないということだ。
大統領府は、金委員長のソウル訪問をきっかけに、南北米終戦宣言も期待する雰囲気だ。大統領府関係者は「金委員長のソウル訪問の際、終戦宣言が行われれば、まさに錦上に花を添えることになる」としながらも、「ドナルド・トランプ大統領と真剣に協議しなければならない問題」だと話した。