文在寅(ムン・ジェイン)大統領の特別使節団(特使団)が5日午前7時30分に平壌に向かう。誰も特使団の訪朝結果を楽観できない。マイク・ポンペオ米国務長官の4度目の訪朝の取り消しが示唆するように、朝鮮半島情勢が複雑に絡んでいるからだ。北朝鮮の「労働新聞」は4日付で、「北南関係を阻害するのは米国の行く手を阻むことだ」という題名の論評を通じて「米国は三千里の国土を真っ二つにした張本人」だとしたうえで、「わが民族の不幸と苦しみ、血と涙は、米国がもたらした災いであり受難」だと主張した。6・12朝米首脳会談以降、一向に見られなかった厳しい批判だ。非核化と終戦宣言など、相応措置をめぐる朝米の神経戦がそれだけ激しくなったことを裏付ける。朝鮮半島情勢の進路は霧の中にある。
特使団は平壌で、朝鮮半島情勢を再び進展させる動力源となる突破口を見出せるだろうか。特使団の訪朝の成否は三つの要因の影響を受けざるを得ない。
第一に、特使団が「米国発のカード」を握っているかどうかだ。米国政府と事前に調整された米国側の見返りを持って行けば、その大きさにかかわらず、今回の訪朝は成功する確率が高い。しかし、「米国発のカードはなさそうだ」というのが事情に詳しい消息筋の話だ。イム・ジョンソク大統領秘書室長が特使団の訪朝と関連し、「私たち自らが新しい条件と状況を作らなければならないという切実さを抱いていく」という書き込みをツイッターに掲載したのも、このような事情と関係あるものと見られる。
第二に、金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が「追加決断」するかどうかだ。金委員長は、今年3月に文統領の特使団を迎えた際、「4月の南北首脳会談、非核化および米国との対話意志の表明、核実験とミサイル試験発射のモラトリアム」などを明らかにし、史上初の朝米首脳会談への道を開いた。今回も金委員長が追加非核化措置を明らかにすれば、行き詰まったように見える朝鮮半島情勢の活路となるだろう。望ましいシナリオだが、これも「実現可能性は高くない」というのが政府内外の大方の見通しだ。新しい構図を作って行く3月とは異なり、今はすでに組まれた構図の中で繰り広げた神経戦によって難関に直面したためだ。
第三に、文大統領の「決断」と情勢を主導できる韓国ならではの「創意的代案」の存在の有無だ。事情に詳しい消息筋は「特使団が手ぶらで行くわけではないが、これと言った代案はないだろう」と話した。情勢を一気に突破できる妙案は期待できないということだ。ただし、文大統領が特使団を通じて「9月の南北首脳会談」を機に、4・27板門店(パンムンジョム)宣言の履行を加速化する“強力な意志”を金委員長に示すのは確かだというのが、関係者たちの話だ。
政府は、特使団が平壌で金正恩国務委員長に会えると予想している。期待ではなく予想だ。3月に特使団の訪朝の際は、金委員長に晩餐会を兼ねて4時間以上面会できた。国策研究機関のある関係者は「北朝鮮も(メッセージを発表する)マイクが必要な状況」だと話した。金委員長が特使団に会い、対外メッセージを送るだろうという見方だ。
政府は、特使団と金委員長の面会が実現すれば、帰還後「チョン・ウィヨン、ソ・フン特使」をすぐ米国に派遣し、ドナルド・トランプ大統領に金委員長のメッセージを直接伝えることで、対米説得外交に乗り出す計画だという。朝米首脳の間接対話を斡旋するという意味だが、文大統領が特使団の訪朝カードを取り出した隠れた理由でもある。このような様々な事情を総合すると、特使団の訪朝の成否を分ける最小値は「金正恩委員長との面談」といえる。