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進歩政治、アイコンを失う

登録:2018-07-24 07:47 修正:2018-07-26 14:32
ノ・フェチャン議員死去 
 
庶民と労働者を代弁し国会議員3期務める  
ドゥルキングの違法資金疑惑の捜査を受け  
現実政治の限界超えられず悲劇  
「進歩はさらに高い道徳性求められる」責任を感じたのか  
「すべては私の過ち、党は応援してほしい」
正義党院内代表の故ノ・フェチャン議員(62)//ハンギョレ新聞社

 正義党院内代表のノ・フェチャン議員(62)が23日午前、ソウル中区(チュング)のあるマンションから飛び降りて自殺した。ソウル中部警察署は「午前9時38分にノ・フェチャン議員がソウル中区のあるマンションの玄関で倒れて死亡した状態で発見された」とし、「このマンションの17~18階から飛び降り自殺したものとみられる」と明らかにした。ノ議員は「ドゥルキング」のキム・ドンウォン容疑者(48)の違法政治資金を受け取った疑いなどで、特検の捜査を受けてきた。

 ノ議員は遺書を残した。彼は遺書で、「2016年3月、二度にわたって経済的共進化会(経共会)から合わせて4千万ウォン(約400万円)を受け取った」とし、「多くの会員たちの自発的な募金であったため、当然正常な後援の手続きを踏まなければならなかった。しかし、そうしなかった。自分を恨むしかない。本当に愚かな選択であり、恥ずべき判断だった」として、違法政治資金の授受の事実を認めた。また、「責任を取らなければならない」とし、「大きな過ちを犯した。責任が重い。法定刑でも党の懲戒でも足りない」として、極端な選択をした理由を明らかにした。

 各政党の論評が殺到した。意外にも自由韓国党のユン・ヨンソク首席スポークスマンの論評が最も良くまとまっていた。

 「進歩政治の象徴として、庶民と労働者のための議院活動に模範を示し、政治改革にも先頭に立ってきました。急所を突く発言で国民から愛された故ノ・フェチャン議員の死亡は韓国政治の悲劇です」

 政治家ノ・フェチャンの登場は華やかだった。2004年、第17代4・15総選挙は比例代表の政党投票が行われた最初の選挙だった。民主労働党比例代表8番候補だった彼は、討論会で「50年間にわたって豚バラ肉を同じ金網の上で焼き続けると、肉が真っ黒に焦げてしまう。もう金網を変えなければならない」と発言し、大きな話題を呼んだ。“寸鉄人を殺す”発言の始まりだ。

 第17代総選挙の開票終盤の関心事は「10期に挑戦した自民連の比例代表1番の金鍾泌(キム・ジョンピル)か、民主労働党比例代表8番のノ・フェチャンか」だった。最終的な得票率は、民主労働党13.03%、自民連の2.82%だった。ノ・フェチャンが当選し、落選した金鍾泌は政界を引退した。

 ノ・フェチャン議員は2008年の第18代総選挙でソウル蘆原(ノウォン)丙選挙区に出馬したが、ハンナラ党のホン・ジョンウク候補に敗れた。2012年の第19代総選挙では、統合進歩党の候補として当選した。2013年「サムスンXファイル事件」で議員職を失ったが、2016年の第20代総選挙で慶尚南道昌原市(チャンウォンシ)城山区(ソンサング)に選挙区を変えて当選した。3選議員として、正義党院内代表を務めた。彼は進歩政治の生きた神話であり、アイコンだった。

 政治家なら誰でも分かっていながらも陥る二つの落とし穴がある。金品授受と不適切な男女関係だ。洋の東西を問わず、昔も今も同じだ。政治的性向が保守的か進歩的かもあまり関係ないようだ。

 ノ・フェチャン議員が経済的共進化会(経共会)から金を受け取った時点が、総選挙直前の2016年3月だったのは示唆するところがある。今も選挙に出るためには、選挙管理委員会に申告する公式の政治資金以外にも金がいる。それが韓国政治の悲しい現実だ。

 政治家たちが自己資金をつぎ込んだり、知人から「見返りを求めない」金を受け取らざるを得ない構造だ。ノ・フェチャン議員の死を「韓国政治の悲劇」としたユン・ヨンソク議員の評価に納得が行くのも、そのためだ。しかし、経共会のように大勢の会員が集めて渡した資金は、必ず正常な後援の手続きを踏まなければらず、選挙管理委員会にも申告するのが政界の常識だ。そうしなかったのはノ・フェチャン議員の表現どおり「愚かな選択」であり、「恥ずべき判断」だ。

 進歩政治にはどのような影響を及ぼすだろうか。ノ・フェチャン議員も最後までそのことを心配していたようだ。遺書には「私はここで止まるが、党は堂々と前進してほしい」と党員らに呼び掛ける部分がある。また、「何よりも苦労してここまで来た党の将来に迷惑をかけた」とし、「すべては私の過ちだ。私を罰し、正義党は応援し続けてほしい」と国民に訴えた。

 キム・ヒョンジュン明知大学教授は「自分が育てて上げてきた進歩政党に支持が集まる状況で、本人の過ちで正義党が被害を受け、危機に追い込まれるかもしれないという圧迫感と申し訳ない気持ちがあったようだ」と話した。また、「完璧さを追求していたノ議員が、違法資金を授受したことを自ら容認できなかったようだ。『党は前進しなければならない』という遺書の内容を見ても、自分が進歩政党のために努力しており、正義党が自分によって被害を被ってはならないという切迫感があった」と指摘した。破廉恥な政治家たちに比べると、容疑は重くないかもしれないが、進歩政党のシンボル的な人物として道徳性と清廉さの意味をさらに重く受け止めたという説明だ。

 しかし、今回の事件が進歩政治にいかなる影響を与えるかについては、簡単には予想がつかない。それこそ国民が下すべき判断であるからだ。

ソン・ハンヨン先任記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/854571.html韓国語原文入力:2018-07-24 05:01
訳H.J

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