6・12シンガポール朝米首脳会談後、北朝鮮の非核化交渉と関連し、これと言った進展がみられない中、米国が対北朝鮮制裁の手綱を締めることで停滞の局面の突破を模索している。国連安全保障理事会理事国を対象に、韓米外相が朝米首脳会談後の現況を共有する一方、北朝鮮の完全な非核化までは対北朝鮮制裁の枠組みを維持すべきと強調し、北朝鮮を圧迫している。
マイク・ポンペオ米国務長官は20日(現地時間)、カン・ギョンファ長官との国連安保理理事国共同ブリーフィングを終えた後、記者会見で「安保理理事国は、金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が合意したように、最終的かつ完全に検証された非核化(FFVD)要求に団結している」とし、「この目標を達成するうえで、厳格な制裁の履行が重要だ」と述べた。彼はさらに、「安保理理事国、さらに、国連のすべての加盟国は満場一致で北朝鮮に対する制裁を全面的に履行することで合意した。我々は、彼らがずっとその約束を守って行くことを望んでいる」と付け加えた。ポンペオ長官はまた「制裁が履行されなければ、成功的な非核化の可能性も低くなる」と強調した。非核化交渉が足踏み状態の中、中国やロシアなどの制裁緩和の動きを遮断し、北朝鮮に対する交渉力を高めるための措置と見られる。
特に、ポンペオ長官が北朝鮮の制裁違反の事例を並べ、対北朝鮮制裁の全面的履行を強調した点は注目される。ポンペオ長官は「今北朝鮮は、国連が定めた上限をはるかに超える石油製品を北朝鮮に不法密輸している」とし、「違法な船舶対船舶の積み替えが横行している」と話した。 彼は「このような積み替えは今年に入り5カ月間で少なくとも89回行われており、引き続き行われている」とし、「米国は、すべての国連加盟国に違法船舶対船舶の積み替えを阻止する責任があることを想起させると共に、彼らが(制裁の)履行のため、さらなる努力を傾けることを求める」と付け加えた。ポンペオ長官と共同会見に乗り出した米国のニッキー・ヘイリー国連大使は「米国が北朝鮮に対するすべての精油製品の追加提供の中断を要求したが、昨日、中国とロシアがこれに立ちはだかった」としたうえで、「我々はこのような状況の中、中国とロシアが良い助力者として残るよう圧迫する」と述べた。ロシアの国連代表部が、米国が提起した北朝鮮の精油製品密輸疑惑への「調査」の時間を要求したことに対する批判だ。
ポンペオ長官はこの他にも、海上を通じた北朝鮮の石炭密輸や国境を通じた密輸、北朝鮮労働者が依然として一部の国に存在することについても指摘した。彼はまた、「北朝鮮のハッキングや他の犯罪行為が、政権のために相当な収益を生み出している」とし、「このようなものも中断されなければならない」と述べた。ポンペオ長官は、ドナルド・トランプ大統領が北朝鮮の非核化の見通しについて、依然として肯定的な態度を維持しているとしながらも、北朝鮮が「友達」として国連の舞台に立つためには、「全面的な制裁の履行が必要だろう」と再度強調した。
ポンペオ長官は、北朝鮮が非核化への意志を立証するために、どのような行動を示すことを具体的に望んでいるかという質問に対し、「それは本当にかなり簡単だ」とし、「金委員長は、トランプ大統領だけでなく、文在寅(ムン・ジェイン)大統領にも非核化する準備ができていると話した」と答えた。さらに、「(非核化の)範囲や規模は合意されている。北朝鮮は、これが何を意味しているのか理解している」としたうえで、「我々は、金委員長が世界の前で自分がした約束を守ることを見なければならない」と強調した。
同日、ポンペオ長官と共同ブリーフィングに先立ち、韓米外相会談を開いたカン・ギョンファ外交部長官も、対北朝鮮制裁の維持において立場を共にしていることを明らかにした。
カン長官は同日、ニューヨークで特派員団に「(北朝鮮の)完全な非核化が行われるまで、北朝鮮の具体的な行動を引き出すため、国際社会が立場を揃える必要がある」とし、「完全な非核化が行われるまでは制裁は維持すべきということに共感があった」と述べた。
トランプ政権は、北朝鮮の非核化という目標を達成する上で、対話と制裁を並行するという基調を維持してきた。トランプ大統領は、シンガポール首脳会談直後の記者会見で、韓米合同軍事演習を暫定的に中止する意向を示しながらも、北朝鮮制裁については非核化の具体的な行動があるまで緩和するつもりがないことを明らかにした。ただし、朝米が対話を続ける間、米政府から「最大の圧迫」のような表現が一時姿を消したことから、ポンペオ長官の発言には何らかの思惑があるものと見られる。
外交界では、トランプ政権内部で非核化交渉に進展が見られない状況に対する不満が表出されているという噂も流れている。実際、米国のマスコミは21日(現地時間)、複数の米政府当局者を引用し、トランプ大統領が内部的には非核化交渉に対する失望感といらだちを示していると報じた。トランプ大統領が北朝鮮と実際の交渉に入って現実を“認識”をするようになり、最近公開的に「非核化交渉のタイムテーブルはない」や「交渉が進展している」など、テンポ調節用の発言をしているが、いつトランプ大統領の忍耐心が底をつくか分からない状態という分析も相次いでいる。
朝米関係に詳しい政府関係者は「米国が昨年は制裁に、シンガポール会談を機に対話に没頭した」とし、「今は、対話だけでなく、非核化対話を進展させる条件作りのため、現実的で精巧な交渉の環境を整えていく過程」だと話した。米国が国連安保理理事国を呼んで対北朝鮮制裁を再確認したのもこのためと見られる。他の政府関係者も「制裁が米国の最も強いテコであるため、交渉が始まる前に緩和してはいけないということだ」とし、「最近の制裁緩和ムードなどに米国が待ったをかけたもの」だと話した。チョ・ソンニョル国家安保戦略研究院首席研究委員も「米国は現在、北朝鮮を扱えるのは、金正恩委員長が切実に求めている部分、すなわち対北制裁と関連したものだと判断しているため、既存の制裁を維持・強化する一方、北朝鮮を圧迫し、非核化に導くという立場」だと話した。