本文に移動

[コラム]現状変更と現状維持の力比べ

登録:2018-07-19 22:53 修正:2018-07-20 08:15
イ・ヨンイン・ワシントン特派員//ハンギョレ新聞社

 すぐにでも朝鮮半島に劇的変化がありそうだった3~6月が過ぎて、情勢が小康局面に入り込んだ。ムードがあまりにも高まったので、今の“静かな”状況がかえってぎこちなく感じられる。

 今の局面を大きな枠組みで見れば、現状維持と現状変更の間の力比べと定義できる。押す力と引く力がきっ抗すれば、物体はその場にいることになる物理現象と似ている。

 北朝鮮は1990年代の社会主義圏崩壊以後、体制の安全保証を目標に朝米関係改善のための現状変更を試みてきた。だが、ビル・クリントン、ジョージ・ブッシュ、バラク・オバマ行政府を相手に成功できなかった。米国史で最も非伝統的なアウトサイダーと言われるドナルド・トランプ大統領の登場で、現状維持の隙間が広がった。4~6月はそんな風に新たに開かれたドアの隙間に対する期待感が、変化の方向を予測できないことから始まる不安感を押した時期であった。

 だが、シンガポール首脳会談から1カ月余りを経て、現状維持という根深い慣性が勢いを得ている。米国は「与えるばかりで得たものはない」という世論に押されて、自身が与えたり今後与えるものの値打ちをとても高く付けている。北朝鮮との交渉で優位を占めるための戦略を越えて、“交渉失敗”にともなう責任から逃れようとするならば、交渉はもう一歩前に出ることはできない。責任論に対する恐れは、現状維持の心理的根源だった。

 例えば、終戦宣言は重大な非核化措置が出るまでは渡せないというのが、米国内の雰囲気だ。政治的な象徴的行事に種々の理由を付けて値打ちを高める。「在韓米軍の駐留問題や国連司令部の解体問題がふくらみかねない」、「平和体制問題があまりに早く議題にのぼりかねない」という論理が登場している。そうなれば、終戦宣言が過度に重くなり、交渉のテコとしての意味を喪失し、自重に耐えられなくなり頓挫するだろう。

 本格的に実務交渉に入れば、交渉当事者である官僚らの責任論に対する恐れ、主流世論の過去論理の踏襲、現状変更にともなう既得権の喪失を憂慮する専門家たちの声は一層高まるだろう。おそらく、それは米国のみならず北朝鮮の内部でも違う姿で現れうる同じ現象だろう。

 中国に目を向ければ、朝鮮半島の現状維持が明確な立場と見られる。金正恩(キム・ジョンウン)委員長の三回の訪中に対する答礼として、朝米首脳会談後に習近平主席が千里の道も厭わずに北朝鮮を訪問しそうだったが、顕著な動きはないという。

 北朝鮮が「重大な非核化措置」を断行し、朝米関係が急速に再進展したり、朝鮮半島情勢が悪化して再び緊張が高まったり、米中間の貿易戦争が一層激しくなる状況でないならば、「習主席が北朝鮮を訪問する切迫性はない」とワシントンのある中国専門家は伝えた。中国の伝統的な朝鮮半島政策の基調に照らしてみれば驚くべき内容でもない。

 結局、現状変更を追求しその方向性を定めることは、いよいよ南北の役割として再び返ってきている。北朝鮮の立場で、核・ミサイル施設の申告を決断することは容易ではないだろう。申告は、すなわち廃棄の履行を意味するためだ。とはいえ申告せずに今後の前進が難しいのも事実だ。北朝鮮がそのように永く追求してきた現状変更の機会を逃さないと信じたい。

 私たちの立場でも、国連総会のような9月のスケジュールをどのように活用するかが難しい問題とされている。11月の米中間選挙が過ぎれば、トランプ大統領がどのように出てくるか分からない。現在の流動的情勢のために、韓国政府は慎重に動かなければならないという主張よりは、中間選挙後の不確実性の方がさらに高いので、今こそ積極的に動かなければならないという論理に手を上げたい。

イ・ヨンイン・ワシントン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/854050.html韓国語原文入力:2018-07-19 19:11
訳J.S

関連記事