「被告人たちは各無罪」
26日午後2時、ソウル高裁403号。ソウル高裁刑事12部裁判長を務めるホン・ドンキ部長判事の判決が終わると、傍聴席で静かな拍手の音が鳴り響いた。「おめでとうございます」。法廷の外へ出た人たちは同日の再審で無罪を言い渡されたチ・チョングァンさん(78)にお祝いの言葉をかけた。「韓国で民主化が実現されているということを同僚の記者たちに伝えることができて、嬉しいです」
フランス通信社の東京特派員だったチさんは、1980年に国家保安法違反の疑いで懲役7年を言い渡された。朴正煕(パク・チョンヒ)軍事独裁政権が終わりの段階に差し掛かった1979年4月、警察治安本部は北朝鮮の指令を受けて統一革命党を再建しようとしたスパイ10人を検挙したと発表した。当時、スパイとして逮捕されたのはチ氏を始め、イム・ドンギュ高麗大学労働問題研究所総務部長や、経済学者で『民族経済論』を執筆したパク・ヒョンチェ忠南大学・慶煕大学講師、ヤン・ジョンギュ韓国農業近代化研究会常務理事などだった。彼らは日本にいる北朝鮮の対南工作員に抱き込まれ、国家機密を探知し、北朝鮮を称賛した容疑(国家保安法違反)などで裁判にかけられ、無期懲役や懲役刑を言い渡された。
しかし、この日のこの“嬉しい知らせ”を直接聞いた再審請求人は、日本から来たチさんだけだった。「統革党再建スパイ団」関連者のうち、無期懲役を宣告されたチ氏など5人は2013年に再審を請求した。5人のうちパク・ヒョンチェ、キム・ジェウさんはすでに帰らぬ人となっていた。裁判所の再審開始の決定に4年がかかり、その間ヤン・ジョンギュさんも2014年にこの世を去った。イム・ドンギュさんはパーキンソン病の診断を受け、療養院の病床にいた。
裁判部はこの日の判決で「被告人らは令状なしに捜査官署に身柄を確保され、拘束令状が発給されるまで不法拘禁された状態で自白した。不法拘禁による心理的圧迫や強圧の状態が検察捜査でも続けられており、被疑者尋問には証拠能力がない」と判断した。
もちろん、同日の判決で最終的に無罪が確定したわけではない。無期懲役を宣告した最高裁判所の確定判決から38年、再審請求から5年を待たされたチさんなどは、これから7日間、検察が上告しなければ、再審無罪が確定する。