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[記者手帳]文在寅政府はなぜ増税に消極的なのか

登録:2018-06-23 09:42 修正:2018-06-23 15:20
4月9日、ソウル光化門利馬ビルで開かれた財政改革特別委員会発足式で、出席者らが看板の除幕を行った後、記念写真を撮っている=企画財政部提供//ハンギョレ新聞社

 22日、来年の不動産保有税の改編案が公開されました。大統領直属の政策企画委員会傘下の財政改革特別委員会(財政特委)はこの日、討論会を開き4つの再編案を持ち出しました。総合不動産税の課税標準である公定市場価格や税率を“ちょっぴり”引き上げ、税収を最小1949億~最大1兆2952億ウォン(約194億~1287億円)多く徴収するというのが核心内容です。

 最近ハンギョレが韓国財政学会を相手に行ったアンケート調査で、財政専門家24人のうち21人(85.5%)は、保有税改編案に必ず含めなければならない課題として公示価格の現実化を挙げました。また、11人(44%)は「1住宅保有者も多住宅保有者もすべて保有税を上げるべき」と答え、「多住宅保有者だけ引き上げるべき」という回答(10人)と拮抗しました。しかし、財政特委のふたを開けてみると、総合不動産税を定める公示価格の現実化は改編案から抜け落ち、賛否論争が激しかった「賢い1軒」の税率にも手を出さないことで結論が出ました。結局、保有税が改編されても、韓国の資産総額に対する保有税の負担率は経済協力開発機構(OECD)の平均(0.33%・2016年)の半分にも満たない水準(0.15%)にとどまるように見えます。

 こんにちは。韓国の租税と財政政策を担当する企画財政部を取材する経済エディター席政策金融チームのチョン・ウンジュ記者です。文在寅(ムン・ジェイン)政府は財政の積極的な役割と福祉の拡大を主張しながらも、税収拡充のための増税には消極的な方です。一般的に保守性向の政府は「減税」政策、進歩性向の政府は「増税」政策を推進するという点を考えると、ちょっと不思議なことです。私はその原因が「総合不動産税トラウマ」と予想を上回って納められている税金(超過税収)にあるのではないかと思っています。

 進歩性向の政府と呼ばれた盧武鉉(ノ・ムヒョン)政府は、任期5年間で租税負担率を17.8%から19.6%へと1.8%ポイント引き上げました。代表的な租税政策が、今回改編が議論されている総合不動産税でした。江南(カンナム)などを中心に不動産価格が高騰すると、不動産価格の安定化のために盧武鉉政府は2005年に総合不動産税を導入しました。しかし、「税金爆弾」という批判が集中し、住宅価格までおさまらなくなると、大統領の支持率は12%まで急落します。この「総合不動産税トラウマ」は、李明博(イ・ミョンバク)、朴槿恵(パク・クネ)政府に続き、文在寅政府にも影響を及ぼしていると思われます。

 前回の大統領選挙時でも、文在寅候補陣営は「包括的増税ロードマップ」を検討しました。少子高齢化が急速に進み、財政支出を増やすのは避けられないと判断したからです。具体的な対策としては、株取り引き差益・賃貸所得などの不労所得に対する課税を強化し、過度に高い所得免税者の割合を低くすることが議論されました。しかし、大統領選挙以降、超高所得者(3億ウォン超過)と超大手企業(3千億ウォン超過)に対する所得税・法人税引き上げを除いては、増税議論はうやむやになりました。

 租税・財政全般に対する改革を推進する特別機関である財政特委が、政権発足から1年近く経った今年4月になってようやく「遅れて発足」し、なんとか今年は保有税改編にのみ集中しました。今回公開された結果も、期待したレベルにはるかに及ばないという評価が出ています。財政特委は租税改革ロードマップを今年末に打ち出す予定ですが、2020年の総選挙という政治日程が迫っているため、まともに進められるかどうかは未知数という見通しが出ています。

チョン・ウンジュ経済エディター席政策金融チーム記者//ハンギョレ新聞社

 文在寅政府は増税には消極的ですが、「財政支出を増やす」という立場はずっと堅持しています。方法は超過税収と支出の構造調整を活用することです。引継ぎ委員の立場だった国政企画諮問委員会は昨年、国政課題の推進に要する178兆ウォンの主要財源を、超過税収の60兆5千億ウォンと支出の構造調整の60兆2千億ウォンで策定しました。実際、昨年の超過税収は19兆6千億ウォンに達しました。

 しかし、超過税収に頼った財政支出の拡大は持続可能性が低いです。「国らしい国」を作るためには、国家が財政をどう使うのか、そのために税金をどのように徴収するのか、政府が長期的ビジョンを見せなければなりません。それは専門家30人が集まった財政特委の役割ではありません。政府が積極的に乗り出し、国民を説得して「総合不動産税トラウマ」を一緒に克服していかなければならないのではないでしょうか。未来世代のために、福祉と増税の突破口を用意することができる時間はあまり残っていません。

チョン・ウンジュ経済エディター席政策金融チーム記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/850282.html韓国語原文入力:2018-06-22 21:32
訳M.C

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