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「戦争と廃墟の地から逃げてきた」…済州は“約束の地”になるか

登録:2018-06-20 10:02 修正:2018-06-21 17:04
[済州出入国・外国人庁で会ったイエメン人たち] 
 
イエメン難民500人余りが済州に滞在、対策に苦心 
フーシ反政府軍に掌握されて徴集から逃れ、済州に押し寄せ 
難民の社会問題への懸念に「私たちは平和を愛しています」
イエメン難民申請者たちが今月18日、済州出入国・外国人庁に設けられた就職説明会に出席するため、長蛇の列を作っている=済州/ホホジュン記者//ハンギョレ新聞社

 「子どもたちにとても会いたい。戦争から逃げてここに来たが、どうすれば良いかわからない」

 18日午前、済州市龍潭洞(ヨンダムドン)の済州出入国・外国人庁の広場の木陰に座り、草をむしりながら休んでいたモハメド・アメッドさん(38)は力のない声でこう語った。イエメンの首都サヌアで高校の物理教師として働き、先月15日に済州にやって来た彼の済州行きは長い道のりだった。彼は北イエメンから南イエメン、スーダンとエチオピア、コロンボ、マレーシアを経て済州に来た。「シーア派のフーシ反政府軍が掌握した後、イエメンを離れる前の1年間は給料をもらえませんでした。どんな仕事でもしなければ暮らせないのに…」

イエメン人のモハメド氏が今月18日、済州出入国・外国人庁で記者に済州島にやってきた経緯を説明している//ハンギョレ新聞社

 ビザなしで30日間訪問できる済州にイエメン難民たちが今年から大挙して集まっている。15日基準で561人が入国し、このうち549人が法務部傘下の済州出入国・外国人庁に難民申請をした。イエメンはアラビア半島南西部にあるイスラム国家だ。2015年、イスラム宗派のスンニ派とシーア派のフーシ反政府軍の内戦が始まり、数多くのイエメン人が世界各地に流浪の旅に出た。現在、済州は彼らが探している「約束の地」の一つだ。

 アリ・ヘジャムさん(26)はフーシ反政府軍が掌握したタイズ市役所でマーケティングを担当していた。彼は「難民同士がコミュニケーションするインターネット空間で、済州島がビザなし入国地域ということを知った。この情報がマレーシアにあるイエメン人に急速に広がり、済州に来るようになった。マレーシアでは4年間滞在してお金を稼ぎ、イエメンにいる家族に送金した」と話した。済州市内の宿泊施設で1室をイエメン人2人と一緒に使っている彼は、済州島に来るときに持ってきた米貨1800ドルも全部使い尽くした。彼は「済州島に来た後、仕事を探すことができなかった。今になって仕事を探している」と話した。アリ・ヘジャムさんはムスリムに対する懸念について「マレーシアでは現在5万人余りのイエメン人がいるが、ここ1年間、犯罪率は0%だ。私たちは酒と賭博をしない。イスラムは平和的な宗教であり、平和を愛する」と話した。

今月18日、済州市龍潭洞の済州出入国・外国人庁で開かれたイエメン難民申請者のための就職説明会で、イエメン人たちが司会者の説明に耳を傾けている=済州/ホ・ホジュン記者//ハンギョレ新聞社

 慶尚北道尙州(サンジュ)の赤十字病院から来たボランティア医療陣の前に立ったイッブ出身のヒシャームさん(25)は、右足の甲が傷跡でまだらになっている。ヒシャームさんは「フーシ反政府軍が都市を掌握した後、戦線に若者を集めるため強制徴集をした。強制徴集から逃げて右足に銃弾2発を撃たれた。外科手術を受けられず、いまも破片が体の中に残っている」と話した。彼の兄弟5人のうち1人は内戦の渦中で失踪し、1人はマレーシア、他の2人はイエメンにいる。同じイッブ出身で元警察官だったモハマドさん(50)は、フーシ反政府軍に掌握されると命の脅威を感じ、故郷に5男1女を残して2016年5月にイエメンから離れた。彼は「現在としてはどんな仕事も選んでいられない。どんな仕事でもしたい」と話した。

イエメン人のヒシャーム氏が今月18日、済州出入国・外国人庁で銃弾に撃たれた足を見せている//ハンギョレ新聞社

 この日、西帰浦(ソグィポ)で漁船漁業をするホン・チャンヒさん(55)は、同僚の船主3人と共に船員を雇用するためにここを訪ねた。ホンさんは彼らに「漁船に乗ったことはあるのか、初めて船の仕事すると、船酔いする」と話し、彼らの周りに集まったイエメン人たちは「賃金はいくらか。休む時は賃金はもらえないのか。船に乗って出るのか」などの質問を投げかけた。イエメンでサッカー選手をし、サッカーのコーチとして働いていたアブド・アリさん(27)は「漁船に乗れる」と言い、連れて行ってほしいと話した。彼は昨年2月にイエメンを離れ、残した息子(4)の顔が毎日思い浮かぶと話した。彼らの雇用問題を議論する姿に、イエメン人たちが1人2人、我も我もと集まり、「どんな仕事でもやる」と言った。

イエメン人たちが今月18日午前、済州出入国・外国人庁で人手を募集するために来た市民の周りに集まって話を交わしている//ハンギョレ新聞社

 彼らの未来についてコ・オボン済州道自治行政課長は「済州道としては急に難民問題が発生して当惑している。しかし、難民申請者たちの生計問題が緊迫しているため、済州出入国・管理庁と協議しながら最大限支援し、人道レベルの問題も積極的に検討する」と話した。果たしてイエメン難民申請者たちに、済州島は「約束の地」となるだろうか。それとも、再び流浪の旅に出るための橋渡しとなるのだろうか。

文・写真 ホ・ホジュン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/area/849650.html韓国語原文入力:2018-06-19 10:38
訳M.C

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