「非核化と体制保証の核心要素を6カ月以内に交換する方法だけが、北朝鮮と米国の憂慮を解消し、双方の希望を共に実現できる現実的に唯一の道だ」
イ・ジョンソク元統一部長官は30日、ドナルド・トランプ米大統領の「迅速な一括妥結」(all in one)と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の「段階的・同歩的(同時的)措置」網羅する第3の代案として、「(6カ月間の)頭括型解決策」を提案した。米朝が史上初の首脳会談を控えて、板門店(パンムンジョム)やニューヨーク、シンガポールで3角協議を加速化しながら、「非核化-体制保証」の確実な等価交換方式をめぐって熾烈な“駆け引き”を繰り広げている中で出た提案だ。
イ元長官は同日、ソウルのザ・プラザホテルで開かれた「韓国未来フォーラム」で「『トランプ方式』の成功に向けた提言」という題名の講演で、2段階で構成された「頭括型解決策」を提案した。まず朝米首脳会談から年末までの6カ月以内に北朝鮮は、米国に核兵器と大陸間弾道ミサイル(ICBM)の保有場所や目録を提示し、これを国外に搬出するなどの方法ですべて廃棄する。トラン政権が直接的な安保脅威とみなしてきた北朝鮮「核武力」の核心を先に解消し、「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」(CVID)の見通しを確実にする方式だ。その期間に米国は見返りとして、「完全かつ検証可能で不可逆的な安全保証」(CVIG)を行う。 具体的には、軍事的安全を保証するものとして「終戦宣言(不可侵の内容を含む)または必要に応じて不可侵協定」▽政治的安全を保証するものとして「朝米の国交正常化」とテロ支援国指定の解除▽経済的安全を保証するものとして、(国連と米国の)対北朝鮮経済制裁の解除などを実行する方式だ。この期間中に平和協定の協議も始める。
さらに、2019~2020年末までの2年間で2段階にわたる「非核化」として、核兵器・ICBMの廃棄リスト検証▽核物質の廃棄・検証▽核物質関連工程と施設物の廃棄・検証▽ICBM生産施設や工程、保管施設の廃棄・検証▽核兵器・ICBM関連人材の産業分野へと転換▽特別査察などを実行する。「体制保証」と関連しては、対北朝鮮経済補償の推進▽米国企業の北朝鮮進出▽日朝国交正常化(勧誘)▽平和協定の締結を実行する。イ元長官は「この程度なら、朝米のどちらも満足できる結果を得られると思う」と話した。
この提案の核心は、米朝が互いに望む決定的な内容を6カ月という短期間でスピードを出して互いに実行し、充足させることにある。例えば、北朝鮮の非核化実践と共に、常住連絡代表部の設置を飛び越え、大使館級の国交正常化を通じて関係の正常化に直行する速度戦だ。イ元長官は「米国の法律によると、テロ支援国の解除だけではなく、北朝鮮との国交正常化も、(議会の承認なしに)大統領が決定・実行できる」とし、トランプ大統領が金正恩(キム・ジョンウン)委員長の“恐怖”の解消するために、政治的指導力を発揮する必要があることを強調した。
さらに「交渉を成功に導くためには、何よりも、金委員長の“恐怖”を深く理解する必要がある」と提案した。「非核化の決心」は1948年の北朝鮮政権樹立以来の生存方式である「軍事主義」の放棄を意味するものであり、「核を作った名分になった“敵対国”(米国)から体制保証をもらう核を放棄しなければならない(逆説的な)状況」であるため、「金委員長の核放棄に対する恐怖が大きくならざるを得ない」ということだ。実際の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は27日、金委員長と「統一閣首脳会談」の結果を明らかにする際、「金委員長にとって不明なのは、非核化の意志ではなく、自分たちが非核化を実施した場合、米国が敵対関係を終息して体制保証をすると確実に信頼できるかどうかについて、懸念があると思う」と強調した。マイク・ポンペオ米国務長官が24日(現地時間)、下院聴聞会に出席し、「完全かつ検証可能で不可逆的な体制保証を提供する案を金委員長と話し合った」と公開したのも、このような脈絡で理解することができる。これと関連して、イ元長官は「『トランプ方式』とはすでに確定したものではなく、朝米首脳会談などの結果によって作られるもの」とし、「『トランプ方式』は現在進行形」だと付け加えた。
南北米3カ国政府の動きと最近の情勢の流れに詳しい外交消息筋は「イ元長官の提案が実行に移されたら、たとえ途中で米国議会によって“一時中止”される状況が起きても、北朝鮮にとって“悪い取引”ではないだろう」と話した。
イ元長官は2000年代序盤、いわゆる「第2次北朝鮮核危機」により朝米敵対関係が激化した際、6カ国協議の9・19共同声明の採択などで情勢を安定させようとした盧武鉉(ノ・ムヒョン)政府の核心人物であり、文在寅政権でも南北首脳会談諮問委員として活動している。昨年には大統領府官邸でイム・ドンウォン元統一部長官(南北首脳会談諮問委員長)と共に文大統領と面会するなど、「政府の外の中心人物」と呼ばれる。