「社会主義経済建設に総力集中!」北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長兼労働党委員長が「党中央委員会7期3次全員会議」で「経済・核並進路線」の終了を宣言し、新たに提示した「党の戦略路線」だ。
これ自体だけでは内容や方向、強度を測りがたい。ただし、金委員長が今回の会議で明らかにした“目標”には誇張がない。現実認識が率直だ。金委員長は「闘争の当面の目標」が「国家経済発展5カ年戦略」(2016~2020年・5カ年戦略)期間に「すべての工場・企業所の生産の正常化」と「全野(田畑につくられた野原)ごとに豊饒の秋」を達成し「人民たちの笑い声が高らかに響くようにすること」と明らかにした。中長期的には「全体の人民たちに何不自由なく満ち足りて文明化した生活を与えること」と提示した。2013年の並進路線の採択後、北朝鮮の核兵力強化処置とそれに対応した国連など国際社会の制裁強化による北朝鮮経済の困難な現実を包み隠さなかった。「生産の正常化」という表現が代表的だ。金委員長が南北および朝米首脳会談を機に、非核化措置をテコに国際社会の制裁の緩和と経済支援・協力を引き出したいと思っていることがわかる。
さらに、金委員長は「党の経済政策を貫徹するための内閣の統一的な指揮に無条件に服従しなければならない」という指針を下した。外部の専門家らの間で、北朝鮮経済の悪習慣と指摘されてきた党・軍の介入による「経済政策の政治化」を遮断するという意志の表現だ。
金委員長が明らかにした「新しい戦略路線」の内容や方向、強度を推し量るならば、2016年5月「朝鮮労働党第7次大会」の時、金委員長が行った事業総和報告を振り返ってみなければならない。当時、金委員長は「経済強国の建設は、現在わが党と国家が総力を集中しなければならない基本戦線」と明らかにした後、2012年の就任以来模索してきた「金正恩式経済改革・開放政策」を総合的に整理して発表した。第一に、中期経済計画として「5カ年戦略」を発表、第二に、金正恩式経済開放戦略として「経済開発区」活性化、第三に、「金正恩式経済改革(市場化)戦略」として「我々流の経済管理方法」の公式化だ。
5カ年戦略は、金正恩時代の最初の経済政策戦略の基調であるため重要だ。「経済開発区」は、金委員長が2013年3月31日、労働党中央委全員会議で指示して以来、これまで20カ所以上設置された。このうち8つが鴨緑江(アムノッカン)・豆満江(トゥマンガン)など国境地帯に設置・運営されている。経済開発区は、中朝国境地域をはじめ、地方分散型「金正恩式対外経済開放」の核心的な手段だ。俗に「5・30処置」と呼ばれる「我々流の経済管理方法」は、北では「社会主義企業責任管理制」と呼ぶが、「市場」と関連した各種の不法・半合法活動の合法化をはじめ、工場・農場などの経済現場の自主性・インセンティブの強化が中心だ。外部の専門家らはこれを「金正恩式市場化」、「金正恩式経済改革の初期措置」と考え、注目してきた。
このような「金正恩式経済改革・開放3種セット」は、核開発による国際社会の対北朝鮮制裁の強化のために力を得られなかったが、「金正恩委員長は戦争準備をしながらも市場の扉は開けておいた」(イム・ウルチュル慶南大学極東問題研究所教授)。南北および朝米首脳会談以降は、非核化の進展に合わせた制裁の緩和の度合いによって、状況が大いに異なりうるということだ。
一部では「金委員長が中国の改革開放を率いたトウ小平の道を歩こうとしている」という評価もあるが、まだ断定する状況ではない。金委員長は「新しい革命的路線の基本原則は自力更生」と強調することにより、少なくとも形式論理上では全面的改革開放と距離を置いた。