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[ニュース分析]金委員長、「豊渓里核実験場」放棄し「経済建設」選んだ

登録:2018-04-23 06:23 修正:2018-04-23 07:19
党中央委全員会議で「核・経済の並進路線」の終了宣言 
「社会主義経済建設に総力集中」新路線を採択 
ICBMの試験発射中止など先制的信頼構築措置 
「国際社会と緊密な連係を積極化」を強調 
非核化で国際経済体制への合流目指す
平壌大同江沿いに濃い霧が漂う中、「平壌の朝」が始まっている=平壌/カン・チャングァン記者//ハンギョレ新聞社

 北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長兼労働党委員長が、国家戦略の核心軸を“核”から“経済”に切り替えると公式宣言した。南北、朝米首脳会談を控え、北朝鮮体制を率いる指導機関である朝鮮労働党の中央委員会第7期第3回全員会議(20日)を通じて公式的に打ち出した重要な戦略的方向転換だ。

 金委員長は「経済建設と核兵力の建設を並進させることに対し、我が党の戦略的な路線が明らかにした歴史的課業が輝かしく貫かれた」とし、「並進路線が偉大な勝利に帰結」したと述べた。2013年3月31日の党中央委全員会議で採択した「核・経済の並進路線」を公式終了するという宣言だ。6回に渡る核実験と頻繁なミサイル試験発射で、昨年、朝鮮半島を戦争危機に追い込んだ北朝鮮の国家戦略的基盤が並進路線だったという点で、この路線の終了宣言は、朝鮮半島情勢に重大な影響を及ぼすものと見られる。さらに、金委員長は、「社会主義経済建設に全力を集中することが党の(新しい)戦略的路線」だと明らかにした。“核”から“経済”へ、国家発展戦略の中心軸を切り替えるという宣言だ。

 金委員長のこのような戦略的転換は、南北および朝米首脳会談を控えて発表されたという点で、世界的な注目の対象となった。特に「もう我々にはいかなる核試験や中長距離・大陸間弾道ロケットの試験発射も必要なく、これに伴い北部の核実験場も自らの使命を終えた」という金委員長の指針によって、党中央委全員会議が決定した、豊渓里(プンゲリ)核実験場の閉鎖と21日から核実験と大陸間弾道ミサイル試験発射中止の措置が注目を集めた。南北および朝米首脳会談を控え、国際社会の一部で金委員長の非核化の意志を疑う視線が依然として存在する中で打ち出された「先制的信頼構築措置」だからである。南北および朝米首脳会談で成功的な結果を出したいという金委員長の意志を示すものと言える。ドナルド・トランプ米大統領は、「朝鮮中央通信」が21日付でこのような内容を報道した直後、「みんなのための進展」であり、「非常に良い知らせ」だとし、「我々(朝米)の首脳会談を楽しみにしている」と歓迎した。大統領府も「朝鮮半島の非核化に向けた意味ある進展」であり、「南北首脳会談と朝米首脳会談の成功に向けた非常に肯定的な環境作りに寄与するもの」だとし、「北朝鮮の決定を歓迎する」と明らかにした。

 ただし、金委員長が並進路線終了の背景として「国家核兵力の完成」や「核の兵器化完結」などを強調したことを根拠に、米国などでは、真摯な非核化の意志の表明というよりは、核保有国としての地位を強固にするための核保有宣言という評価もある。実際、金委員長は「核を放棄する」と明示的に述べなかった。専門家たちの間で、金委員長の今回の決定と処置に対する解釈が大きく異なるのもそのためだ。しかし、北朝鮮の意味のある先制的信頼構築措置というのが大方の評価だ。

 キム・ヨンチョル統一研究院長は22日、金委員長が韓国の特使団の訪朝(3月5日)および中国の習近平国家主席との首脳会談(3月26日)を通じて、「非核化は先代の遺訓であり、非核化の実現に力を尽くすことは変わらない我々の立場」だと再度強調した事実を想起する必要があると指摘した。キム院長は「北朝鮮が非核化の意志を明確にしたからこそ、南北首脳会談と朝米首脳会談に合意でき、朝中首脳会談も開かれた」とし、「結論的に北側の今回の処置は、非核化交渉に向けた事前作りのための先制的信頼構築措置と言える」と話した。北朝鮮の分析に詳しい元高官は「まだ慎重にならざるを得ないが、金委員長が“戻る橋を燃やした処置”と見ることもできる」とし、「今回の決定と処置は、金委員長がこれからは“経済にオールイン(全てをかける)”するという背水の陣」だと分析した。

 イ・ジョンソク元統一部長官は特に、金委員長が豊渓里核実験場を一方的に閉鎖すると宣言した事実に注目した。核保有国のうち、核実験場を閉鎖して核実験をしないと宣言した先例がないだけでなく、豊渓里核実験場の閉鎖カードは、金委員長が朝米首脳会談でトランプ大統領への“贈り物”として提示できる“切り札”と言う点で、南北および朝米首脳会談を成功に導きたい金委員長の意志の強さを裏付けるものだと評価した。別の元老専門家は、「大陸間弾道ミサイルは通常15回以上試験発射して正確性と安全性を確保するのに、北朝鮮がそれを放棄し、今回試験発射の中止を宣言したのは、これを重大な安保への脅威とみなしてきた米国を意識した友好的処置」だとし、「両首脳会談を控えてかなり爽快なスタート」だと評した。しかし、同専門家は「悪魔は細部に宿ることを忘れてはならない」とし、「北の並進路線の終了宣言が核廃棄を前提にしたものなのか、核完成を前提にしたものなのかはまだ定かではないだけに、南北および朝米首脳会談で北朝鮮の核廃棄措置をいかに引き出すかが重要だ」と指摘した。

 2012年の執権以来、北朝鮮経済の「市場化」を地道に進めてきた金委員長が全員会議決定書を通じて、今後「周辺国と国際社会との緊密な連携と対話を積極化していく」と公言したことも注目に値する。「社会主義経済の建設に向けた有利な国際的環境作り」と「朝鮮半島と世界の平和と安定の守護」という2大目標を明確にした点が特にそうだ。今後、南北および朝米首脳会談で、朝鮮半島の非核化と恒久的平和体制の構築、軍事的敵対の解消と北朝鮮の体制安全保障などと関連した南北米の合意がいかなる形であれ実現するものと見られるが、その合意の履行過程は、国連など国際社会の対北朝鮮制裁の緩和や北朝鮮の国際経済体制への接近の拡大と共に進められる可能性が高いからだ。金委員長が今回の決定と処置を通じてほのめかした内心も、南北および朝米首脳会談を通じて国際社会の憂慮を払拭する代わりに、軍事的な敵対を解消して北朝鮮の体制安全の保障を受けると共に、国際経済体制の一員として合流する鍵を得ることが核心だと言える。

イ・ジェフン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/841567.html韓国語原文入力:2018-04-22 17:47
訳H.J

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