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酒ビン、履歴書が最後の友…「50代の孤独死」が最も多い韓国

登録:2018-03-05 08:52 修正:2018-03-18 16:33
孤立した「50代男性」が最高危険群 
経済的な葛藤が家族の断絶を引き起こし 
周りの助けには自尊心が傷つくという反応 
「50代の支援政策は細やかなアプローチが必要」 
 
日本も驚いた中高年の孤独死 
65歳以上が多数を占める日本と異なり 
韓国は40~50代に孤独死の影 
平均51歳で引退、福祉網は手薄
ソウル市の孤独死確実事例の年齢帯別現況//ハンギョレ新聞社

 世界1位を走る高齢者貧困率、爆発的に増加する老年層一人世帯の傾向。このような点だけを見ると、韓国社会で孤独死は60代以上の老年の問題と見なしがちだ。しかし、統計を通じて確認される孤独死の影は、60代以上よりも40~50代の中年層に色濃く映し出される。韓国よりも先に孤独死問題に直面した日本でも類を見ない韓国だけの特徴的な現象だ。

 ソウル市福祉財団で韓国の孤独死の実態を研究・調査したソン・インジュ研究委員は、「日本の関係者らは、韓国の孤独死が40~50代を中心に出ているのを見て驚いている」と話した。一生の職場という概念が残っている日本の場合、中年の孤独死はあまり出ていない。一方、退職年齢が低く福祉制度が未整備の韓国では、早期退職と同時に「孤独死危険群」になる現実を示す。ソン研究委員は「引退した韓国の男性たちは経済力を失うと同時に、自分の価値を喪失したと考え、社会的に孤立しやすい」と話した。

 韓国雇用情報院が昨年3月に発行した「雇用動向ブリーフ」によると、韓国男性の「主な仕事の退職年齢」は2016年基準で51.6歳だ。これは50代の高い孤独死比率につながる。ソウル市福祉財団が2016年12月に発表した「ソウル市孤独死の実態把握および支援策研究」によると、2013年に発生した孤独死の確実事例162件のうち、50代が58人で年齢帯別比重(35.8%)が最も高かった。続いて40代が34人(21%)、60代が32人(20%)と調査された。孤独死と疑われる事例2181件を加えても、50代は524人で70代よりも6%高かった。孤独死の確実事例162件の絶対多数(84.57%)が男性である点を考慮すると、孤独死は特に「50代男性の危機」に集中している。縁故のない死亡者や基礎生活受給者の葬儀を支援する非営利民間団体「ナヌムとナヌム」(ナヌムは“分かち合い”の意味)が昨年、葬儀の手続きをサポートした288件の中でも、50代の男性が84人と最も多かった。

 これは“孤独死”現象を先に経験した日本の経験とも大きく異なる点だ。日本では引退した65歳以上の老年層を中心に孤立死が現れる。日本の孤立死の発生件数は1999年の207件から2008年には613件と、10年間で約3倍に増えた。同期間に65歳以上の高齢者層の孤立死件数は94件から426件へと4倍以上に増えた。孤独死の増加が老年層に集中しているという意味だ。

東京都特別区の年齢別孤独死数//ハンギョレ新聞社

 韓国の50代の男性たちの孤立化脆弱傾向は、孤独死問題を支援する市民団体でも憂慮している。孤独死遺品整理と葬儀を支援する市民団体の「ナヌムとナヌム」は、「麻浦希望ナヌム」と連携して65歳以上・以下の住民との関係作りキャンペーンを実施した。ところが、選定された50代の男性3人はすべて関係づくりを拒否した。「まだ助けてもらう時ではない」「自分がなぜ(対象なのか)」という理由だった。「ナヌムとナヌム」は「65歳以上は相対的に接触しやすい。しかし、50代の男性は違う。助けられることになればプライドが傷つくという形で反応する。家父長制と組織文化に慣れた結果、お互いに助け合ってコミュニケーションをすることに慣れていないようだ」と話した。

 すべての死は個別的だが、また社会的でもある。孤独死の現場で死の痕跡に向きあう「ハードワークス」(孤独死掃除業者)のキム・ワン代表は「死亡現場に行くとうつ病の処方箋と酒ビンをよく見る」とし、「特に50代以下の死亡者の最期の場所を掃除する時は、求職履歴書がよく出てくる」と話した。キム代表は「昨年の夏は、巨済島(コジェド)に月に2、3回ほど通った。造船業界の不況のためのようだ」と付け加えた。

 ク・ジョンウ成均館大学社会学科教授は「50代は高齢者貧困が始まる関門」だとし、「引退した後、貧困にさらされながらアルコール依存、病気で死亡するシナリオが作られる」と話した。彼は「経済的な葛藤が家族の断絶や孤独者を生み出す」とし、「孤独死もまた自殺と同じく主要に見守るべき社会的な死」と話した。

 ホン・ヨンジュン祥明大学家族福祉学科教授は「50代の場合には非自発的孤立という特性がある。地域で関心を傾けなければならないが、伝統的な福祉の恩恵層ではないと考え、さらに孤立する」と話した。ホン教授はさらに50代のための支援政策にはもっと繊細なアプローチが必要だと指摘した。ホン教授は「官や民間で訪問する場合、プライバシー問題とラベリング(烙印)問題が生じる。『自分はまだ死ぬ時期ではないのに、もうすぐ死ぬような人のように社会から思われている』と考え、暴力と感じることもある」とし、「集団が個人を侵犯すると感じられないよう、細やかなアプローチが必要だ」と話した。

チャン・スギョン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/834588.html韓国語原文入力:2018-03-05 07:16
訳M.C

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