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[特派員コラム]高齢化社会の陰「貧困老人」

登録:2018-02-08 22:12 修正:2018-02-09 08:29
火災で激しい炎が上がる自立支援施設「そしあるハイム」=1日午前0時ごろ、札幌市東区//ハンギョレ新聞社

 先月31日夜11時40分、北海道札幌市東区の生活保護対象者自立支援施設「そしあるハイム」で火災が起き、入所者16人のうち11人が亡くなる事件が起きた。犠牲者のうち1人は48歳、他の犠牲者はすべて60代から80代の高齢者だった。

 火事が起こったそしあるハイムは「なんもさサポート」という会社が運営する施設で、元来は新しい住居や就職先を探す前に人々が臨時に入所する所だった。火災警報装置は設置されていたが、スプリンクラーは設置されていなかった。法的には下宿施設に分類されるので、違法ではなかった。

 事件後の調査過程で、1階に暖房用の灯油タンクが多量に保管されていた事実もあらわれて、市条例違反の可能性も議論されている。札幌市は、そしあるハイムの入所者の相当数が身動きが不自由な高齢者であり、彼らに食事を提供した事実があるので、法的に当局への申告が必要な事実上の「老人ホーム」として運営されていたのではないかを調査している。老人ホームに分類されれば、スプリンクラーの未設置は法律違反だ。

 しかし、日本でそしあるハイムに対する批判世論は強くない。そしあるハイムが築50年以上で火災に対する備えも脆弱な建物に高齢者を受け入れたことは事実だが、この施設が行き場のない高齢者を受け入れる施設であったためだ。一カ月の賃貸料が3万6000円で、一部の食事まで提供していたそしあるハイムが、火災の備えに必要な施設をすべて備えることは経済的に難しい事情もあった。

 そしあるハイムのような施設は、日本全国に1200カ所を超えると推定される。こうした施設は、ほとんどが古くて粗末な建物を使うので、火災のリスクが今なお残る。昨年5月には、日雇い労働者が主に利用していた北九州市のアパートで火災が起き、50~80代の男性6人が亡くなった。

 日本では、貧しい高齢者が住居を探せずに困難に陥っていることが社会問題になっている。家主は頼る所のない高齢者は孤独死する可能性があると見るため、賃貸自体を避けようとする。日本で住居を借りるには、保証人を立てるなり、保証会社と契約を結ばなければならないという点も障害物だ。寄る辺のない高齢者が、保証人を見つけることも難しく、保証会社も契約を避けようとする。保証会社も高齢者が孤独死すれば、相当な費用を家主に払わなければならないためだ。

 貧しい高齢者が暮らせるような安い賃貸住宅はますます減っている。賃貸料が月5万円以下の賃貸住宅が、1983年には1158万戸程度あったが、2013年には817万戸に減ったとNHKは伝えた。安い賃貸住宅は、日本経済の高度成長時期に作られた建物が多いが、家主が最近老朽化した建物を取り壊し、新しい建物を作って賃貸料を上げている。

チョ・ギウォン東京特派員//ハンギョレ新聞社

 古い家が取り壊され、新しい家を見つけられずにいる「退去漂流」があちこちで広がっている。日本の公営住宅は住宅全体の3.8%に過ぎず、先進国としては低い水準であるため、高齢者も入居が難しい。また、人口減少傾向なので、地方自治体も公営住宅を増やすことが難しい。昨年、経済協力開発機構(OECD)は「不公平な高齢化防止」報告書で、韓国の66~75歳の高齢者の相対的貧困率は42.7%、76歳以上の高齢者の貧困率は60.2%で、比較対象の38加盟国の中で圧倒的1位だと明らかにした。住居問題を含む高齢者問題に、韓国はどれだけ備えているだろうか。

チョ・ギウォン東京特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/831469.html韓国語原文入力:2018-02-08 18:20
訳J.S

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