平昌(ピョンチャン)冬季五輪を契機に南北関係が急速に進展する中、朝鮮半島情勢がダイナミックに変わっている。特に、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)労働党委員長が文在寅(ムン・ジェイン)大統領を招請し、第3回南北首脳会談実現の可能性が高まったことで、北朝鮮核問題をめぐる周辺各国の動きも慌ただしくなっている。
金正恩(キム・ジョンウン)委員長が「南北首脳会談」という最も強力なカードを切り出したのは、現在、朝鮮半島情勢をそれだけ重く受け止めていることを裏付ける。昨年激化した米朝間の「言葉の戦争」や軍事的緊張状態が今年も続けば、国際社会の対北朝鮮制裁と圧迫の中、北朝鮮としても耐え忍ぶことが難しい状況だ。南北関係を全面的に解決する最も早い方法である首脳会談を選んだのは、制裁・圧迫から脱するために、北朝鮮が一定の形の“変化”を受け入れるというシグナルを送ったものと見ることができる。
文大統領と金委員長の首脳会談の実現に向けて、カギとなるのは朝米関係だ。今のように、朝米が激しく対立している状況では、南北関係の進展にも明確な限界があるからだ。キム・ヨンチョル仁済大学教授は「前の2回の南北首脳会談も、朝鮮半島で南北米3カ国の構図から派生した3つの両者関係(南北、韓米、朝米)が好循環した時に実現した」と指摘した。安定的な韓米協力のもと、南側が朝米対話を仲裁できる状況にあってこそ、首脳会談を通じて情勢を変えられるということだ。2000年6月15日、第1回南北首脳会談は、1999年5月当時のビル・クリントン元米大統領の特使資格で訪朝したウィリアム・ペリー元国防長官が中心となった「ペリー・プロセス」が進行中だったからこそ実現できた。2007年10月4日の第2回の首脳会談も、同年2月に開かれた6カ国協議で、北朝鮮の核問題を解決するための「行動対行動」の原則を盛り込んだ2・13合意に支えられたものだった。
ドナルド・トランプ政権は、ひとまずは慎重な反応を示している。文大統領と北側の高官級代表団の面会が行われた翌日の10日(現地時間)、ホワイトハウス側は「一致した対応に向けて韓国と緊密に接触している」とだけ明らかにした。国務省側は「(立場を発表するため)作業中」という反応を示しただけだった。トランプ政権も悩んでいる様子だ。
ただし、10日にホワイトハウスから流れた報道によると、米政府の高官は「文大統領が北朝鮮の招待を受け入れた場合、マイク・ペンス副大統領の韓国訪問やここ1週間で送った対北朝鮮メッセージを損なうと思うか」という取材陣の質問に対し、「いや、決してそうは思っていない」と答えた。南北関係の進展が北朝鮮核問題解決に役立つなら、米国にも躊躇する理由はないという意味と思われる。
ここで重要なのは、文大統領が北側の代表団と面会した際に言及した「環境」といえる。レックス・ティラーソン国務長官の訪朝や第3国で米朝高官級会談が行われれば、文大統領の平壌(ピョンヤン)訪問も容易になる。北側が「核・ミサイル試験一時中止」や「ティラーソン長官の訪朝を受け入れる」程度の意思を公開的に明らかにした場合、国務省などを中心としたトランプ政権内部の「対北朝鮮交渉派」が積極的に動ける空間が生じる可能性もある。
日本側は、南北首脳会談の実現の可能性を大いに警戒している雰囲気だ。小野寺五典防衛相は10日「過去日本も韓国も北朝鮮の和解政策に応じたが、結果的には、北朝鮮が核とミサイル開発を続けた」とし、「韓国政府が確実な対応をするものと思う」と述べた。日本は今後、米国と連携して南北の対話ムードをけん制する可能性が高いとみられる。
一方、中国側は、朝鮮半島情勢に肯定的な信号だとして歓迎した。官営の「新華社通信」は11日、論評で「依然としてある人たちは、現状況を皮肉ったり、圧迫の強化を煽っており、軍事演習の再開を図っている」としたうえで、「朝鮮半島で対話と談判の門が開かれるかどうかは、南北双方が引き続き善意を持って対応できるかどうかと、各国の支持や協力、対話の促進にかかっている」と指摘した。さらに、楊潔チ中国外交担当国務委員が9日(現地時間)、ワシントンのホワイトハウスでトランプ大統領と面会し、北朝鮮の核問題と関連して米国と中国の協力強化を求めたと、中国外交部が11日に明らかにした。
ク・ガブ北韓大学院大学教授は「北側はこれまで、非核化をめぐる協議は米朝間の問題だと主張してきたが、現在の状況で南北首脳会談が開かれれば、北朝鮮核問題も議題にならざるを得ない」とし、「朝鮮半島の平和と非核化に対する明確な立場を打ち出してこそ、韓国政府が対米説得と米朝対話の仲裁に乗り出せるという点を、北側は認識すべきだ」と話した。